上皮真珠  

上皮真珠とは
Serresの上皮真珠(epithelial pearls)とは、乳児の歯槽堤粘膜に生じた塊状の小真珠様腫瘤を示します。
また別名で
Bohn結節(nodule)と呼ばれることがあります。
上皮真珠のなかに嚢胞が形成されることがあり、これらは乳児歯肉嚢胞(gingival cyst)あるいは歯堤嚢胞(dental lamina cyst)と呼ばれています。
なおSerresの上皮真珠と同様の小腫瘤が、硬口蓋の正中縫線に沿って生じたものを、Epsteinの真珠と名づけています 

原因
Serresの上皮真珠は、歯堤の退化不全によって生じます。
すなわち口腔上皮と歯を連結している歯堤は、通常は歯胚の発育過程中に生理的に退縮して、やがて吸収されてしまうものがありますが、口腔上皮の近くに存在する歯堤が退化不全のために吸収されず歯堤を形成する上皮細胞の一部が残存してこの上皮細胞が同心性に集り、角質化して集塊となり、歯肉に結節として現れることがあり、これが本症の成立機序です。
なおEpsteinの真珠は両側の口蓋突起が癒合する時に癒合部の上皮が吸収されずに中胚葉組織のなかに残留して、退行性変化をきたしたものです。
また
Bohn結節は粘膜腺組織の残存が関与しているといわれています。

臨床的特徴
発生頻度

発生頻度は胎生期には100%に、新生児には8085%にみられるといわれていますが、実際には乳児期に異常を訴えて来院するのは23%くらいの低率です。
性差
性差はほとんどありません。
好発部位
好発部位は歯肉、特に上顎前歯部の歯槽頂から唇側にわたるところで、広範囲に集中的に出現する傾向があります。
臼歯部では散発的にみられ、口蓋部にもみられることもあります。

臨床症状
乳児の乳歯萌出前にみられやすいですが、生後間もなく発現して以後数の増加がみられることもあります。
白色ないし黄白色の光沢をもった半球状の硬い、粟粒大から小真珠大の大小の腫瘤としてみられます。
粘膜表面の近くに存在し、歯肉の表面からやや突出しているものが多いです。
2〜3個のものから通常は数多く発生
するものが多く、そのために歯肉の表面が著しく凹凸不整の状態になっているものが多いです。
自覚症状のないのが普通です。


組織学的には上皮細胞の集塊ですが、中心部は角化して扁平上皮が層状をなした嚢胞様の構造を示すことが多いです。
内容物は粘稠性の液状物質で満たされており、そのなかの細胞のほとんどは上皮細胞です。

鑑別診断
特に鑑別を要するものはありません。

治療法
乳歯が萌出するころまでには自然に消失し、また小嚢胞は破れて自然に治癒するため、一般的には特に治療を必要としません。
したがって予後はきわめて良好です。

症例ノート