わずか数秒が生死を分ける
地震速報、10月から本格提供へ
テレビやラジオ通し
地震の揺れを直前に知らせる気象庁の「緊急地震速報」の一般提供が10
月1日から始まる。速報が流されるのは、最大震度が5弱以上の地震が来
ると推定される場合。震源に加え、震度4以上になりそうな地域名が伝えら
れる。
私たちはこの新しい防災情報を、テレビやラジオなどを通じて見聞きするこ
とになる。NHKは、気象庁の速報を受けてすべての放送波を使って全国に
流す。地震が発生すると番組の途中でチャイム音が鳴り、画面には「緊急地
震速報」の文字と「〇〇県で地震 強い揺れに警戒」とともに、強い揺れが予
想される地域を表示する。民放のテレビ・ラジオ各局も、順次、速報を放送す
る見通しだ。
緊急地震速報は、ごくわずかな地震の初期微動を震源に近い地震計がとらえ、
その情報から震源の位置や地震の規模(マグニチュード)を解析。数秒から
数十秒後に襲って来る大きな揺れの到達時間や震度を地域ごとに推定し、
可能な限り素早く知らせる。
既に昨年8月から鉄道や病院、工場など特定の事業者に対して情報提供
が始まっている。7月に起きた新潟県中越沖地震では、震度6強の揺れがあ
った長岡市では3秒前、長野県飯綱町では20秒前に速報が出された。東京
都内では45秒前などに出されたという。
緊急地震速報は、パソコンや専用の受信装置を使うと、テレビから流される
情報よりも詳しく、自分の住む地域の推定震度を表示したり、地震が来るまで
の時間をカウントダウンしてくれる。
速報が流されてから、強い揺れが来るまでの時間は、わずか数秒から数十
秒しかない。しかし、事前に地震の発生を知ることができれば、危険を回避
できる可能性がその分だけ広がる。どんなに短い時間であっても、心構えや
身を守る準備はできる。それだけに速報に接した後の私たちがどのような行
動をとるかがカギとなる。
気象庁は、緊急地震速報に際しての具体的な行動指針をまとめている。そ
れによれば、家庭では、頭を保護し丈夫なテーブルの下などに隠れ、外に飛
び出さないようにする。また、屋外では看板や割れたガラスの落下に備え、
ビルのそばから離れたり、倒壊や転倒の可能性があるブロック塀、自動販売
機などからも離れる。さらに、集客施設では出口に殺到したりせず、鉄道や
バスの中ではつり革や手すりにしっかりつかまるよう促している。強い揺れが
来るまでのわずか数秒間が生死を分けることにもなりかねない。何より慌てず、
最優先で身の安全を確保したい。
防災・減災に役立つと期待される緊急地震速報だが、一方で限界も指摘され
ている。直下地震や震源に近い地域では情報が間に合わないことがある。
また、ごく短時間に集まったデータだけを使った情報であるため、予測震度に
誤差を伴う場合もある。それだけに特性や限界を理解した上で活用する必要
がある。速報を想定した訓練では、その場に立ちすくんでしまう人も見られた
という。本格運用を前に、国民に対する周知徹底がますます重要となろう。
きょう「防災の日」
地震被害の軽減を図るには、日ごろから住宅を点検したり、家具が倒れない
よう固定するなど事前の備えが欠かせない。きょう1日は「防災の日」。地震
に限らず災害時に取るべき行動や連絡方法、防災備品など、わが家の備え
をいま一度確認しておきたい。
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