地方自治体 高すぎる現業職員の給与
住民理解が得られる見直しを
最大で民間の2倍
地方自治体の清掃職員や学校給食員、バス事業運転手など7種の現業
職員(技能労務職員など)の給与が、民間に比べ最大で2倍を超えるなど、
すべての職種で大幅に上回っている。この調査結果を受けて総務省は7月
上旬、見直しを含めた総点検を求める通知を自治体に出した。
国家公務員と比べても、やはり1割程度高い。地方公務員でも一般行政
職が、国家公務員とほぼ同程度にとどまっているだけに、この違いは際立
つ。給与体系にとどまらず、現業職員のあり方全体について、住民の理解
が得られる形での見直しが急がれる。
調査は47都道府県と15政令市について行われ、対象は、清掃職員(ごみ、
し尿の収集・運搬・処理)、学校給食員、用務員、自動車運転手、守衛、電話
交換手、バス事業運転手の7職種約5万人。これらの職員の2006年4月時
点での給与を、民間の類似職種のフルタイム労働者と比較した。
それによると、平均給与月額では民間全国平均の1.4〜1.87倍。これに
ボーナスを含めた年収ベースでは、1.63〜2.14倍と差はさらに開く。15
政令市については、市内の民間類似職種との比較もあるが、それでも年収
ベースでは1.51〜2.2倍。いずれの比較でも、差が最も大きいのは電話
交換手で、最小はバス事業運転手だった。
自治体によって違いはあるが、同地域の民間との差が1割未満だったのは、
横浜市のバス事業運転手(1.04倍)など4自治体の4職種にすぎない。長く
続いた経済不況などによって民間賃金が抑制されてきたことも背景にあるが、
それにしても差が大きすぎるのではとの指摘は多い。
見直しが求められる問題点の一つは給与決定の仕組みだろう。約300万人
の地方公務員のうち、法的に技能労務職員と呼ばれる地方公務員は全国で
約19万人(バス事業運転手は公営企業職員で含まれない)いる。一般に地方
公務員の給与は、自治体ごとに設置される人事委員会などが地域の民間企業
や国家公務員の給与動向に配慮して勧告を行い、条例改正によって決定される。
しかし公営企業を含む現業職員は、地方自治法に定めるそうした手続きの枠
外にある。給与は自治体当局との労使交渉によって独自に決められる。その際
に考慮されるのは、どうしても一般行政職との「均衡」になりがちだ。採用も含め
不透明な部分も多い。また、首長選の「実働部隊」として現業職員を引きつける
ために給与を高く設定している、との指摘も以前から根強くある。
もう一つの検討すべき問題点は、果たしてこうした業務を公務員の職務として
維持し続ける必要があるのかということだ。実際、現業職員の総数は業務の民
間委託などにより30年前に比べて半減している。大阪市などいくつかの自治体
では、職務が限定されている現業職員を再教育し、試験を経て一般行政職に変
更する取り組みを開始している。より機動的な職員配置を可能にする狙いがある。
厳しさ増す“視線”
自治体の行財政運営に対する住民の視線は、厳しさを増している。わが地域で
公的な部門がやるべき業務はどこまでなのか、民間でできることはないのか――
その問い掛けを、これまでのいきがかりを排して、各地で住民の立場から発してみ
るべきではないか。
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