農山漁村体験 長期宿泊で“生きる力"学ぶ

子ども、地方が元気になる事業に
小学生全員が対象

 来年度から、小学生が農家などに1週間ほど泊まり込み、田植えなどの
体験活動を行う事業が動きだす。都市部に暮らす子どもたちにとって、緑豊
かな自然に触れ合い、田舎の生活に身を置くことは、普段の学校生活では
できない貴重な体験になる。公明党は、早くから小中学生が農山漁村へ体
験留学する重要性を訴えてきた。今後、すべての子どもたちが自然の中で
生きた体験を積むことができるように全力を尽くしたい。

 この事業は「子ども農山漁村交流プロジェクト」と呼ばれる。総務、文部科
学、農水の3省が連携して進めているもので、自然の中での体験活動とい
う教育面での効果はもちろん、受け入れ側の農山漁村の活性化にもつな
がる。

 初年度の2008年度は、都道府県ごとに10校程度のモデル校を設けて
スタートし、目標として12年度までの5年間で、全国約2万3000の小学校
すべてで実施していく方針だ。対象児童数は120万人を予定し、都市部の
子どもが地方に滞在するだけでなく、山村の子どもが漁村を訪れたりする
ケースも想定されている。実現すれば、小学校在学中に全児童が長期の宿
泊を体験することになる。

 一方、農山漁村には、08年度に、1学年(100人程度)の児童が宿泊でき
るような全国40のモデル地域を選定し、最終的に全国500余りの受け入れ
地域へと広げていく。

 宿泊地の選定や期間をどうするかは各小学校に任されるが、1週間に及ぶ
長期の宿泊は初めてという小学校がほとんどだ。特に来年度のモデル校は
入念な準備が必要になろう。親にしてみれば、1週間も子どもを手放すのは
心配だ。病気になったときの態勢や宿泊施設の防災面での安全性も気に掛
かる。子どもを持つ先生にとって、1週間も家を留守にする負担は大きい。
実施に当たっては、そういった不安を解消するこまやかな配慮が求められる。

 国民の間に定着する息の長い事業として成功させるためにも、保護者や先生、
受け入れ側の農家などの方々の理解と協力を得る努力が欠かせない。

 費用面での課題も残る。文科省などは、来年度のモデル事業について、バス
代や宿泊料などの参加費を補助する措置を08年度予算の概算要求に盛り込
んだ。今後、全国の小学校に拡大していく上でも、保護者や市町村の負担が
できるだけ少なくなるように制度設計すべきだろう。

自然自体が教育資源

 すでに試行錯誤の末に、農山漁村体験を軌道に乗せている例もある。東京都
武蔵野市は、「セカンドスクール」の名で10年以上にわたり長期の宿泊体験を
実施してきた。一回り大きくなって帰ってきたわが子の姿に驚く保護者も多い
という。

 公明党は2002年9月に長野県飯山市で行われたセカンドスクールを視察
したが、「自然との触れ合いや実体験を通して子どもたちは“生きる力”も学ん
でいると実感」(浜四津敏子代表代行)したという評価が相次いだ。

 一方、受け入れ側のメリットも、経済効果など地域の活性化だけではない。
豊かな自然環境や伝統文化そのものが教育資源になると再認識し、そうした
自然や生活を守り続けていく努力をするように変わったとの指摘もある。

 子どもたちも元気になり、農村も元気になる。そんな体験学習を全国に着実
に広げていきたい。

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