国連決議のもとで支援
テロ特措法の延長
山口那津男 党外交安全保障調査会長、参院議員に聞く
インタビューに答える山口那津男参院議員
インド洋でテロ阻止
海自が各国艦船に給油
10日召集の臨時国会で、延長問題が焦点となるテロ対策特別措置法
(テロ特措法=11月1日に期限切れ)について、同法の理念と目的、具体
的な活動内容と評価などについて、公明党外交安全保障調査会長の山口
那津男参院議員に聞いた。
――テロ特措法は何のための法律ですか?
山口外交安保調査会長 2001年9月11日の米国同時多発テロを受け、
国連安全保障理事会(安保理)が加盟国に要請したテロ対策を、日本として
主体的に実施するための法律です。この法律に従って、日本はアフガニス
タンで実施されている対テロ作戦のうち、インド洋で展開中の海上阻止活動
に対する支援として、海上自衛隊が外国艦船に対し洋上給油を行っています。
国連安保理は米国同時多発テロの翌日、決議1368を全会一致で採択し
ました。決議は、9・11テロを国際平和の「脅威」と認定し、加盟国にテロ行
為の防止と抑止のための一層の努力を求めています。
――アフガニスタンでの対テロ作戦を国連は認めていますか?
山口 決議1368には「国連憲章に従って、個別的または集団的自衛権の
固有の権利を認識」するとあり、アフガニスタンに部隊を派遣しているカナダ、
フランス、オーストラリア、ニュージーランド、ポーランドは、この決議を明示的
に引用して国連安保理に自衛権の行使を報告しています。このことからもアフ
ガニスタンでの武力行使が国連決議を踏まえたものであることが分かります。
アナン国連事務総長(当時)もアフガンへの武力行使について、これ以上の
決議は不要との立場を示し、安保理理事国からも異論は出ませんでした。
また、この武力行使の背景には、アフガニスタンがテロの“隠れ家”になっ
ていた事実があり、それは1999年の安保理決議でも明らかです。
――外国軍隊の武力行使への協力は憲法第9条に反しませんか?
山口 憲法第9条は自衛隊の海外での武力行使を禁じています。外国軍隊
の武力行使と一体化する活動もできません。テロ特措法は武力行使を禁じ、
非戦闘地域での活動しか認めていません。
アフガニスタン本土では治安維持やテロ掃討作戦が行われ、インド洋上で
はテロリスト、武器、麻薬の流出入を阻止するための海上阻止活動が行われ
ています。日本は海上阻止活動を行う外国艦船への洋上給油だけを実施し
ています。
自衛艦はすでに11カ国の艦船に給油をしており、米国追従との声は的外
れです。
効果上げる常時監視
日本に継続要請相次ぐ
――効果は上がっているのですか?
山口 不審船舶への無線照会や乗船検査によって、01年9月以降、大麻
など約12トンや、ライフル、ロケット弾なども押収されました。また、無線照会
の回数も04年の約4万1000回が、06年は約9000回にまで減少するなど
、海上阻止活動の抑止力が効いています。「テロリストにインド洋を自由にさ
せない」との強いメッセージを出し続けることの重要性があります。
自衛隊に対する評価も高く、特にパキスタン艦船への給油は日本だけが実
施しているため、ムシャラフ同国大統領は感謝の意を示しています。英国のミ
リバンド外相は「(海上自衛隊の支援する多国籍軍が)アフガン国内、および
周辺での反テロ作戦の極めて重要な一翼を担っている」(読売新聞への寄稿
8月23日付)と評価し、ドイツのメルケル首相、豪州のダウナー外相からも
給油活動の継続要請を受けています。
交換公文に明記
補給燃料の転用できず
――洋上給油で米軍に補給した燃料が「イラク戦争に使われている」との
意見があるが?
山口 米海軍第5艦隊のホームページのイラク作戦に関する個所に、自衛隊
の給油活動が載っていたことが問題の発端ですが、イラク作戦に日本提供の
燃料が使われているという内容ではなく、イラク作戦以外の活動で米国に協力
している有志国の活動の一つとして紹介されただけです。給油活動に関する
交換公文の中で米国は、給油活動がテロ特措法の活動であり、日本政府の
同意なしには転用できない旨を明記しています。
――軍事的支援より民生協力が大事では?
山口 現地での民生協力を進めるためには治安確保が必要ですが、まだ厳
しい状況です。日本はすでに総額約12億ドルを超えるODA(政府開発援助)
などを実施していますが、当面は、民生分野の復興支援と、洋上給油活動を
車の両輪で進める必要があります。
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