理解しがたい突然の首相辞意
国民生活のために政治空白避けよ
理由は「局面の転換」
安倍首相、辞意を伝える――。12日昼、安倍晋三首相が辞意表明との速
報が流れ、「永田町」だけでなく日本列島に衝撃が走った。
10日の所信表明演説で首相は、改革の影に光を当てながら改革の継続に
責任を果たすと訴え、海上自衛隊のインド洋における給油活動を可能にして
いるテロ対策特別措置法の延長についても理解を求めたばかりだった。
それだけに、唐突な「首相辞意」の報に対して、驚きと戸惑いを持って受け
止めた国民も多かったに違いない。
12日午後の衆院本会議では、所信表明演説に対する各党の代表質問が
予定されていた。この臨時国会は、「ねじれ国会」における初の本格論戦の
舞台であり、その幕開けの日に、首相が辞意表明するという事態は、前例が
ない。
公明党の北側一雄幹事長は、「率直に申し上げて、なぜこの時期に辞意表
明なのかということについては、連立のパートナーであるわれわれとしても、
非常に理解しがたいところがある」と指摘した。
安倍首相は首相官邸での緊急記者会見で、辞意表明に至った二つの理由
を挙げた。
一つは、テロ特措法延長問題であり、「テロとの戦いを継続する上で、局面
を転換しなければならない」と説明した。延長に反対姿勢を崩さない民主党と
の協議を行う上でも、「私がいることでマイナスになる」として、新たな総理の
もとでテロとの戦いの継続を目指すべきとの考えを示した。
もう一つは、自らの改革を進める上で国民の支持が得られていないとの懸
念からだ。首相は「改革を進めていくとの決意で続投し、内閣改造を行ったが、
今の状況で国民の支持、信頼の上において力強く政策を前に進めていくこと
は困難な状況にある」との認識を示し、「ここは自らがけじめをつけることによ
って、局面の打開をしなければいけないと判断するに至った」と述べた。
首相本人は明らかにしなかったが、「健康状態はなかなか厳しいものがあっ
た」(与謝野馨官房長官)とも言い、健康不安も辞意表明の一因だったのかも
しれない。
いずれにしても、政府・与党は、この不測の事態による国政への影響を最小
限に食い止める努力が求められよう。なかでも、大事なことは、国民生活の
確保のために、政治の空白をつくらず、新たな内閣を早く発足して、やるべき
課題についてしっかりと取り組む体制をつくることにほかならない。
首相は、後任の自民党総裁を決める党総裁選を早期に実施するよう党執行
部に指示した。
また、今月25日前後に首相演説が予定されている国連総会には、新しい首
相が出席すべきとの考えを示した。
後継首相に重い責務
新しい自民党総裁が後継の首相に選ばれることになるが、次期首相は直ち
に国内外に山積する政治課題に取り組むことになる。
11月1日に期限切れを迎えるテロ特措法延長問題にしても、地方の活性化
や格差解消への取り組みにしても“待ったなし”だ。「政治とカネ」への対応も
国民は注視している。
後継首相は、参院選で示された参院での与野党逆転という民意をしっかりと
受け止め、この国の舵取りに全力を尽くす必要がある。
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