対決よりも討議する国会に
国の基本で対立を演じるべきか
衆参ねじれで不透明感
衆議院で与党は議席の3分の2以上を占めるものの、参議院では野党が
過半数――。参院選の結果を受けて、国会がこれまでにない緊張に包まれ
ているなかで、安倍首相が突然、辞任を表明した。「ねじれ国会」の不透明
感は増すばかりだ。
周知のように、参議院は衆議院の「カーボンコピー」ではなく、他の先進国
の上院に比較して強い権限と独自性を誇っている。代表的なものは、2005
年の郵政民営化法案の否決や1994年の政治改革法案の否決である。
前者では小泉首相(当時)が直ちに衆院を解散し総選挙を断行、郵政改革
派が圧勝して、反対した自民党参院議員もその意思に従うことになった。
後者では、両院協議会が決裂し当時の細川首相と河野自民党総裁とのトップ
会談で合意が成立、野党だった自民党に極めて有利な法案となって成立した。
前者は自民党の郵政民営化反対派が、後者は連立与党の社会党などの一部
が“造反”したもので、ともに党内での異論だった。
今回、海上自衛隊の給水・給油支援をめぐって衆参両院で異なった意思が示
される可能性が高まっているが、これまでとは様相が異なる。野党第一党の
民主党が、衆院選をにらんで政権奪取をめざしているからだ。
民主党の戦術は大きく変わった。小泉首相当時の民主党は、政権担当能
力を国民にアピールすることに懸命だった。外交、安保でも「日米基軸」を重
視する姿勢を示し、「小泉改革路線に乗り遅れるな」とばかり改革競争を演じ
ていた。しかし、現在の小沢・民主党は与党との対決を全面に打ち出している。
憲法論議のなかで自民、公明、民主で合意したかに見えた国民投票法案に
は反対に転じるなど、与党と全面対決する姿勢を強調している。
劇場型政治では、スポーツ同様、激突が好まれる。マスコミもそれを「二大
政党の対立」と書き立て、「対立軸を明確に」と迫る。与野党の対決は政治に
緊張感をもたらすが、国家の基本にかかわる問題まで対立を演じるべきなの
だろうか。
「テロとの戦い」を支える海自の給油活動継続は、わが国の国際公約であり、
その活動は関係各国から高い評価を受けている。
これに対して、小沢代表は、「アフガニスタンでの戦争は米国が勝手に始め
たもの」「日本の平和と直接関係ない所へ部隊を派遣し米国などと共同の作
戦をすることはできない」などと主張している。しかし、01年10月のテロ特措
法の成立に際して民主党は、自衛隊の派遣には反対ではなく、「国会の事前
承認などの条件が満たされれば賛成できるところまでいっていた」(菅代表代
行)はずだ。
テロとの戦いは続く
テロは国際社会への脅威であり、米国だけの戦いではない。アフガニスタン
には多国籍軍が展開しており、海上自衛隊のインド洋での支援活動は米国
艦船だけでなく、パキスタンやフランス、ドイツ、イギリスなどに及んでいる。
国連も各種の安保理決議でテロに対する国際社会の取り組みを求めている。
インド洋での支援活動は日本の平和にも密接に関係しているのである。
今も続くテロとの戦い。いたずらに与党と激突するのではなく、民主党には、
日本の国際公約、国際貢献という見地での対応を期待したい。
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