飲酒運転の根絶 罰則強化し「予防」に力点
酒類の提供・同乗者も処罰へ
重大事故の原因に
「飲むなら乗るな。乗るなら飲むな」。飲酒運転の根絶への鉄則を、運転
する当事者はもちろん、酒類や車両の提供者、同乗者などの飲酒運転を
助長する行為に対して罰則を強化する改正道路交通法があす19日から
施行される。同法施行に続き21日(金)〜30日(日)の「秋の全国交通安
全運動」でも「飲酒運転の根絶」キャンペーンが枢要な柱に据えられた。
「何人も、酒気等を帯びて車両等を運転してはならない」(「道路交通法」第
65条)との趣旨に即した、一層の社会的対応が望まれる。
飲酒運転による死亡事故は、2001年の道路交通法改正(02年6月施行)
および同年の刑法改正による「危険運転致死傷罪」新設により、減少傾向を
呈していた。しかし、2004年、2005年は小幅に推移。昨年(2006年)上期
は対前年同期比増(プラス13件、同3.7%)に転じ、8月には福岡県で幼児
3人が死亡する惨事が発生した。この事件を機に、取り締まり強化や飲酒運
転根絶に向けた社会的機運の高まりから、今年(2007年)上期の飲酒運転
死亡事故(原付以上)は222件(昨年比142件減)となった。しかし昨年度の
飲酒運転による交通事故件数1万1625件(原付以上)のうち死亡事故率を
見ると、飲酒した場合は飲酒しなかった場合の8.7倍に達する。飲酒運転が
重大事故に直結する現実は変わらない。
公明党は昨年(2006年)9月に発表した党重点政策において、これら飲酒
運転の犯罪抑止力の強化を掲げたのをはじめ、全国の地方議会で党を挙げ
て飲酒運転の根絶を推進。国会でも太田昭宏代表が10月3日の衆院本会
議で、一層の罰則強化、ほう助した者への摘発強化など具体的な飲酒運転
の防止対策を提案、政府の取り組みを促してきた。
今回の法改正はこうしたニーズに即したもので、(1)運転者本人に対する
罰則の強化(2)飲酒運転を助長した者の罰則の明示――に大別される。
(1)では、酒酔い運転が「5年以下の懲役又は100万円以下の罰金」、
酒気帯び運転は「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」、飲酒検知拒
否罪では「3月以下の懲役又は50万円以下の罰金」となる。また悪質な救
護義務違反(ひき逃げ)に対しては「10年以下の懲役又は100万円以下の
罰金」へと、重科される。
(2)では、飲酒運転の恐れがあるのに車両を提供した者「5年以下の懲役
又は100万円以下の罰金」や酒類を提供したり勧めた者「3年以下の懲役又
は50万円以下の罰金」、飲酒運転の車に同乗した者「3年以下の懲役又は
50万円以下の罰金」の処罰が明示された。6月施行の改正刑法で新設され
た自動車運転過失致死傷罪との併合罪で、酒酔い運転による死傷事故の最
高刑は懲役10年6カ月、酒気帯び運転は懲役10年となった。
医療的対応も急務
改正法施行を契機として、運転者本人だけでなく、家族、友人、職場、社会
全体で、飲酒運転「ノー」の機運を高めなければならない。公務員のみならず、
民間会社においても職場規程の見直しが不可欠となろう。地方経済の疲弊
に伴う地方公共交通網の衰退も課題の一つだ。アルコール依存症や問題飲
酒行動への医療的対応も急務である。飲酒運転防止装置の開発・導入、一
部導入されている職業運転手の職場へのアルコール検知の義務化など、付
随する課題も多い。重大事故への社会的な「予防」態勢の強化を望みたい。
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