個人情報保護 行政は不信招かぬ体制に

ハード、ソフト両面のチェックを
危機感の欠如では?

 個人情報保護法に関する2006年度の施行状況調査によると、民間事業
者の漏えい事案は減る一方、国の行政機関の漏えいが大幅に増加している。
地方自治体も含めて行政機関は、個人情報を法令によって蓄積している。
不信感を招いては行政運営に重大な支障を来すことにもなりかねない。改
めて、コンピューター・システムなどハード面とともに、取り扱いに関するル
ールの徹底や職員への監査、教育の充実などソフト面の両面で、体制を
チェックすることが求められている。

 内閣府と総務省が行った2006年度の調査によると、民間事業者の個人
情報の漏えいは前年度1556件から893件に大幅に減った。このうち97%
に顧客情報が含まれており、氏名、住所などのほかに電話番号、口座番号、
メールアドレス、クレジットカード番号などが流出した。

 一方、国の行政機関では前年度320件から530件に、独立行政法人な
どでは855件から1277件へと大幅に漏えい事案が増加。全国的な調査
はないものの、地方自治体においても、住民の個人情報漏えいのニュース
が時折、報道されるようになった。

 民間事業者にとって顧客情報の漏えいは、そのまま企業への不信感となり、
業績に大きな影響を与える。そのため情報セキュリティーへの関心は急激に
高まっている。それに引き換え、この調査結果を見る限り、行政機関の取り組
みが危機感に欠けているのでは、と思わざるを得ない。

 国の行政機関による漏えい事案のうち、誤った相手に書類を送付したり、フ
ァクスやメールを送信した例が64%、誤って交付した事例が12%、紛失した
り破棄した例も18%ある。インターネット上への流出は10件、盗難も9件あった。
省庁別では、社会保険庁が246件(46%)、ハローワークなどを所管する厚生
労働省が177件(33%)を占めた。

 また、独立行政法人では誤送付・誤送信が63%で、紛失が13%。ネット上
への流出が20件、盗難が27件だった。特に、日本郵政公社がこのうちの77
%、977件を占める。郵政公社に対しては、法令順守の体制が不十分だとして
総務省から改善を求められている。

 新たな取り組みも見られる。コンピューターシステム自体のセキュリティー向
上に関して言えば、アクセスできる職員を制限し、パスワードを設定するなどの
取り組みが一般化している。また、個々のパソコンにデータを記憶させず、サー
バーでの一括管理に移行する自治体も現れている。

 もっとも、4分の1の自治体では、個人情報を含むデータの持ち出し規定や個
人パソコンの持ち込み禁止規定がいまだに整備されていない。さらに職員研修
もセキュリティーについては約6割、個人情報保護については約4割でしか実施
されていないとの民間の調査結果もある。

不断の見直し必要

 セキュリティーの最後のカギを握るのは職員のモラルと、それを支えるルール
の徹底、教育の充実というソフト面での取り組みであることは、論を待たない。

 国の行政機関は法律によって、また地方自治体は法律の趣旨を反映したそれ
ぞれの個人情報保護条例によって、自らの保護体制を規定している。取り扱い
について不備はないか、不断の見直しを強く望みたい。

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