「かぐや」 夢とロマン乗せて月へ

日本 平和と協力の宇宙新時代担え
月の起源解明に挑む

 新たな月探査時代の幕開けである。大いなる成果を期待したい。

 夢とロマンを乗せて、日本の月周回衛星「かぐや」が順調な飛行を続けて
いる。約2週間後には月周回軌道に達して2基の子衛星を分離、1年間にわ
たり14種類の観測機器を駆使して月全体をくまなく観測する。

 最大のミッションは、月の起源と進化の解明だ。

 月誕生にまつわる仮説は、地球とともに誕生したとする「双子説」や、巨大
な天体が地球にぶつかってできたとする「衝突説」などさまざまあるが、どれ
も想像の域を出ていない。米国のアポロ計画で持ち帰った月の石の分析に
よって、地球と同じ約45億年前に誕生したことが分かっていても、「竹取の
翁」の時代同様、今もその存在と輝きは神秘と謎に包まれているといってよい。

 「かぐや」の謎解きへの挑戦は、そのまま地球の過去を知ることにつながり、
太陽系の歴史の解明にも手掛かりを与えてくれる。その科学的・文化的意義
は計り知れない。「アポロ計画以来の最大の月探査」として、世界が注目す
るゆえんだ。何としても成功させ、宇宙開発における日本の存在感を示したい。

 人類の月探査活動は、冷戦時代の1950年代から始まった。59年にはソ連
(当時)のルナ3号が初めて月の裏側の撮影に成功し、69年には米国のアポ
ロ11号で人類初の月面着陸に成功。その後もアポロは、計6回にわたり有人
月探査を続けた。

 だが、国威発揚の側面が色濃く出ていたこともあってか、米ソの月探査競争
は次第に下火となり、月への関心も薄れていった。

 それがここに来て一転、月は再び宇宙開発の主役に躍り出そうとしている。
背景には、90年代以降、月の起源についての新説が浮上し、月世界へのロ
マンと知的関心がかき立てられたことがあるが、もう一つ見逃せないのは、
「月は不毛の地」という“常識”が覆されたことだ。

 最新の調査や研究によると、月には鉄やチタン、アルミ、シリコンなどのほか、
核融合燃料など未来のエネルギー原料として期待されるヘリウム3、さらには
大量の水の存在も指摘されている。こうした“新発見”が、月への新たな夢とロ
マンをかき立てている。

 事実、今秋から来年(2008年)にかけて、「かぐや」に続き、中国の「嫦娥1
号」、インドの「チャンドラヤーン1号」などが次々に打ち上げられる。欧州もス
マート1号の後続機の開発に余念がなく、ロシアも新たな開発計画を発表した。

 宇宙開発の雄、米国も黙っていない。来年(2008年)から無人探査機による
月面調査に乗り出し、2018年をメドに有人宇宙船で人類を月に派遣、そのまま
長期滞在可能な月面基地の建設に挑むという壮大な計画を持っている。

許されぬ宇宙軍拡

 こうした激烈なまでの月探査ラッシュ、宇宙開発競争の中にあって、各国に求
められるのは宇宙を単に国威発揚の場としないことだ。“陣取り合戦”さながらに
宇宙軍拡に走るような愚は断じて排さねばならない。現実的にも、近未来の有
人月探査を視野に入れれば、国際協力は欠かせないはずだ。

 「かぐや」が、そして日本が、そうした「平和と協力の宇宙開発新時代」を担うト
ップランナーにして、その中核となることを祈りたい。


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