福田内閣発足 緊張感もち難局に当たれ
まず不信感払しょくに全力を
「政治とカネ」今国会で
自民党の福田康夫総裁を首相とする自民、公明の新連立内閣が26日、
正式に発足した。安倍晋三前首相の突然の辞任による国会開会中の新内
閣発足である。山積する課題の解決に遅れは許されない。まして今、国民の
政治に対する視線は厳しさを増している。
それだけに、閣僚はもちろん、すべての国会議員が、緊張感をもってこの
難局に当たらなければならない。
衆院では自民、公明の与党が多数を保っているが、参院では民主党など
野党が過半数を占めている。この“ねじれ”状態を引き起こした先の参院選で、
国民が政権に対して厳しい態度を示した理由は、まさに「不信感」だった。
社会保険庁のずさんな業務運営による年金記録問題が、政府機関に対す
る不信感を芽生えさせたところに、相次いで閣僚による政治資金の不正処
理が発覚。国民は参院選で、不信感を政権に対する怒りにかえて厳しい投
票行動に出た。こうした国民の不信感がこの難局の背景にあることを、特に
与党議員は真摯に受け止めなければならないだろう。
新内閣発足に先立つ25日午前、公明党は自民党との間で連立政権の継
続を確認、政権合意を取り交わした。この中で、まず取り組まなければならな
い課題としたのは「政治とカネ」の透明化を進め、国民の信頼を取り戻すこと
だった。合意では「政治資金については、1円以上の全ての支出に領収書添
付を義務付ける」ことを明確にした。公開のあり方については「国民の理解が
得られるよう」に与野党間で議論、協議していくことになる。いずれにしても
「今国会で成案を得る」ことが重要であろう。
与党の合意はできた。民主党も基本は同意できるのではないか。政治家
をめぐって、いつまでもまとわりついている「政治とカネ」の、もやもやとした
“霧”を晴らす絶好のチャンスにしていかなくてはならない。
組閣後初の記者会見で、福田首相は冒頭「政治不信の解消なくして私ども
がいくら良い政策を説いても、国民は信用しない」と述べた。まさにそうだ。
まずは、政治不信の解消に全力を傾注し、その実をあげることが、福田新政
権の最初の課題と言えよう。
新内閣には公明党から冬柴鉄三氏が国土交通相に再任されたのをはじめ、
閣僚17人中13人が再任。新任の高村正彦外相、石破茂防衛相も経験者で
あり、「政治の空白」が許されない状況に対応した「落ち着いた、実直な、仕事
をする内閣」(公明党の太田昭宏代表)となった。
太田代表は組閣後、閣僚人事について質問した記者団に対し、「参院選の
民意を受け、より生活に密着して、弱者、格差に真正面から取り組む仕事をす
るかどうかが問われている」と厳しく指摘した。国民の信頼を回復するのは、
決してたやすい道ではないが、今こそ「国民のため」との政治家の覚悟が問
われているのだとも言えよう。
民主も問われている
それは、参院で過半数を占める野党、とりわけ参院第1党の民主党に問わ
れていることでもある。国民の財産と生命に責任を持つ政党として、この政治
状況の中でどのような判断をするのか、国民は「果たして民主党に政権を委
ねることができるのか」との厳しい視線を注いでいることを忘れてほしくない。
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