伯耆国山岳美術館は具象・抽象を問わず、「山岳・自然をテーマとした作品」と「地元作家・地元出身作家」の作品を収蔵しております。
館内には山、自然、故郷をテーマとした画家の意欲的な創造活動から生まれた作品、およそ20点を常時展示しています。

伯耆国山岳美術館◇収蔵作家
山 里 寿 男 八 橋 誠 滋 田 中 良 一 中 村 芳 雄
入 江 達 也 吉 岡 淳 一 中 部 博 之 藤 田 英 樹
山 里 寿 男
山 里 寿 男
一枚一枚の絵、一筆一筆にその山岳の空気の流れを感じる。山岳は標高が高くなればなるほど、色彩は黒と白に集結してくる。山岳絵画を描くそれは究極の色彩「黒と白」を追求することである。「伯耆大山・縦走路」は円錐形に代表される優しい表情の大山とは異なる北壁、南壁は野生も越すことが出来ないほどの雄姿。北壁、南壁は野生も越すことができないほどの厳しさ。縦走路はこの壁の先鋭部であり、頂上に立った者だけに見ることのできる風景である。
[山里寿男 略歴]
昭和後期・平成時代の洋画家。昭和6年10月4日生まれ。東京出身。東京芸大卒。日本国内をはじめ、ヨーロッパアルプス、ネパールヒマラヤなどの山岳とそこにすむ人々、風物をえがく。作品に「巡礼の人」「チョモランマの見える丘」などがある。

八 橋 誠 滋
八 橋 誠 滋
形無き心象を日常の具象物により展開する画群。画景はリズムにのり、お互いに反響し合い、私たちの知らない音楽を奏でているようである。色彩の美、造形の美、そこに感情が絡み合い見事に調和している。「季節風」真冬の季節風、シベリア寒気団の風の舞であろう。
[八橋誠滋 略歴]
大正12年生まれ。溝口町(現伯耆町)出身。鳥取師範学校卒業、小学校教諭を務めながら「自由美術協会」に出品、1964年には「主体美術協会」結成に参加し、心の葛籐人生をみつめた独自の作品を発表。

田 中 良 一
田 中 良 一
潜んでいた画家。三十代半ばから約四十年間、作品は発表されることはなかった。郷里の山々が骨太く重厚な筆致で描かれている。画景の山は地球の芯まで根を伸ばしているようである。山は山であるが人々の生活との調和があって美しく、山の価値があると思う。
[田中良一 略歴]
昭和5年西伯郡大山町生まれ。鳥取大学卒業、鳥取市・米子市の小学校に勤務。昭和28年在学中より県展・市展に出品。昭和34年「自由美術」へ初入選、以降連続出品。昭和40年「主体美術」へ出品、2回展まで。平成3年教職を退職後、米子市美術館長に就任。毎年米子市展へ出品する。

中 村 芳 雄
中 村 芳 雄
今の現実と崩壊を予測する未来。それを立体的に構成する、そこに苦悩する作者の姿を見ることができる。崩壊する未来、それは今の私たちへの警鐘でもあり、人間の持つ優しさに大いに期待している作者の願いでもあるのだろう。第39回安井賞入選の知らせから一ヵ月後、黄泉への旅立ちはあまりにも惨く無念であります。
[中村芳雄 略歴]
昭和25年生まれ。宮崎県都城市出身。昭和45年東光展に初出展し入選、以後連続入選。 昭和56年主体美術協会展へ初出展し以後連続入選。平成3年主体美術佳作作家(招待作家)。平成6年主体美術協会会員に推挙される。翌年主体美術協会の推薦にて安井賞展に出展し入選。平成8年くも膜下出血のため他界。米子美術協会により中村芳雄遺作展開催。平成9年伯耆国山岳美術館にて回顧展開催。翌年都城市立美術館にて中村芳雄遺作展を開催。

入 江 達 也
入 江 達 也
宇宙的な大きさを感じる作品群。――20世紀は21世紀に新しい芽を育むことができるのだろうか。球体の全体は地球、かじられたところは20世紀の文化、その中から新しい芽を出さなければならない。――そんな思いの作品「復活」である。限りない挑戦に期待を寄せている。
[入江達也 略歴]
昭和27年生まれ。平野敬吉(富山)氏に木彫彩色を師事。東京造形大学で佐藤忠良氏に彫刻を学ぶ。来日したモザイク作家・クロードライール氏(ベルギー)の壮大な壁画、モザイク制作補助に携わり、作品を通して自分を解放する姿勢を学ぶ。ライール氏の推薦でジュリエット・バッスー基金により、ヨーロッパで見聞を広げる機会を得、後の作家活動に大きな影響を受ける。
平成5年に県内に戻り、有機農業に携わりながら、環境に目を向けた作家活動を続けている。
ダンテスコ・ビエンナーレ国際彫刻展(イタリア)で作品「復活」でメダル賞受賞。各国の彫刻・モザイクなどのシンポジウムに参加。鳥取県西伯郡南部町在住。

吉 岡 淳 一
吉 岡 淳 一
伯耆大山は「だいせんさん」でなければならない。これが山への思いであり創造の原点であるという。幼い日、浜から「だいせんさん」を拝む父母の姿、海岸にでるといつも海の向こうにどっしりとした「伯耆大山」の姿があり、それは浜人の祈りであった。そんな山への祈りをライフワークとして描き続けてほしい。
[吉岡淳一 略歴]
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中 部 博 之
中 部 博 之
山はいつも気高く美しく優しく迎えてくれる。山の装いは刻々と変わる。姿を見せたくない時には雲を引き寄せ、暑い時には風を起こし、年に一度は晴れがましく錦を纏う、そして眠る時には雪を呼ぶ。こんな山への思いが絵筆を走らせるのだろう。「槍ヶ岳」単調な色彩に見えるが、計算された色調の変化が作品を立体的にしている。
[中部博之 略歴]
山岳画家。昭和2年4月3日生まれ。日本国内、ヨーロッパ、ヒマラヤなどの山岳を中心にえがく。作品に「北尾根」「モンブラン」などがある。

藤 田 英 樹
山 里 寿 男
木地をあえて否定する。木地を加工することによりそこに生まれる木の表情の中に、現代社会で生活する人間の持つ「危さ」にも似た生々しさを感じるのだという。木地を活かすことにとらわれがちになるが、加工が木の可能性を広げている。「沈黙の形2」木質を超えた重量感。表現とは、かくも自由なものであったのかとつくづく思う。
[藤田英樹 略歴]
彫刻家。昭和42年生まれ。鳥取県在住。国民文化祭彫刻展文部科学大臣奨励賞受賞、05年富嶽ビエンナーレ展佳作賞。作品に「雲の庭シリーズ」「沈黙の形シリーズ」などがある。