私の独断と偏見で選ぶこの逸品

第77回は、カネルのフレンチマリンボーダー“BONAPARTE”です。



LA VERITABLE MARINIERE(真のフレンチマリンボーダーシャツ)とは…?
マリンボーダーの聖地フランスで脈々と受け継がれる真のマリンボーダーとはいったい何であろうか?様々な文献を紐解いていくとある有力な説が浮かび上がる。マリンボーダーを彩るボーダーの本数には「意味」と「制約」が存在するというものだ。
今も崇拝者の多いフランスの英雄ナポレオン・ボナパルト。近代戦術の基礎を作り上げた英雄が残した戦勝記録、その数36勝。古より船乗りのユニフォームとして愛されてきたマリンボーダーを1858年、フランス海軍が公式に下級兵の制服として採用した際、フランスの英雄ナポレオンの戦勝記録に敬意を表し、ボディには21本、袖に15本のボーダーを配置し、その合計が連勝記録と同数の36本になるものが最も正式なマリンボーダーであると規定したと言われている。
ただしこの規定の実現は厄介で生産者泣かせな一面があった。洋服にはサイズが存在する。女性用のXSサイズ、屈強な男性が着用するXLサイズ。着丈で例えるなら20p以上の違いが出てくる。例えばボディの21本のボーダーを全てサイズに綺麗に入れ込むには、全てのボーダー幅を調整しなければならず、多大なロスと労力を伴う作業は実現可能なものではなかった。実際に21本のボーダーを持つ真のボーダーシャツは限られた条件下でしか再現されることは無く、ビンテージ市場においてもほとんど目にする事がない幻の一品となったのである。
1923年、フレンチマリンボーダー発祥の地と言われるブルターニュで産声を上げたカネル・アンデュストリエルでは、今回、その編み機の特性を生かし、ボーダーピッチを微調整し全てのサイズにおいて上記の「真のマリニエール」を再現することを試みました。量産不可能と言われた真のマリンボーダーを提案いたします。ナポレオンの死後、およそ2世紀の時を経て、彼の偉業に捧げる真のマリンボーダーシャツ、LA MARINIEREの誕生です。

KANEEL INDUSTRIEL
フレンチマリンボーダー“BONAPARTE”  \16,800
+TAX

フランス製



BONAPARTEに使われるヴィンテージジャージと呼ばれる生地は、ヘビーウェイトと呼ばれるバスクシャツに比べ2割以上多いコットンを用い、カネル社のお家芸とも言える横編み機を用い、しっかりと編み込まれています。極限まで度目を詰め、タイトに編み込まれた編地は、重厚でありながらも横編み機独特の柔らかさを兼ね備えています。洗うほどに目がしまり、ドライタッチに変化していく様は、エイジングの楽しさにも溢れています。ヘビーウェイトな生地ながらも、このドライな質感のお蔭で清涼感に溢れ、シーズンを問わず着用できます。
また、肩部分は2重に縫製されており、補強や伸び止め等の機能的な側面と共に、同社の製品を特徴づけるアイコンとも呼べるデザイン上のアクセントになっています。元来船乗り達のワークウエアであった同社の製品は、耐久性と生産効率を重視するプロダクトです。
ほぼ真四角に編まれた身頃のパーツは上端の両端を折り返し、前身と後身を重ね合わせリンキングされています。四角に編むことで効率が上がり、重ね合わせて縫製されることで、伸び止めと補強を兼ねた二重仕立てのショルダーラインが構築され屈強な物となります。それは、創業者のピエールが考案した普遍的なディテールです。
もう一つの大きな特徴の縫製を用いない、減らし目による脇下の三角マチは、
丸編み機を用いたカットソーでは再現することが出来ない、横編み機を用いる同社ならではのディテールで、2本縫製によるごろつきを極限まで抑えます。このヴィンテージモデルから受け継がれるディテールは、過酷な条件下でも少しでも体にかかる負担やストレスを軽減するために考案された、同社の製品がワークウエアDNAを多く引き継いでいるとを再認識させられるディテールです。
同じくビンテージモデルから受け継がれるディテールが裾と袖口の端始末です。通常、丸編み機による一般的なカットソーは、折り返した端を二本針等でミシンによる縫製で物理的に縫い止付けて仕上げます。これに対して当モデルの端始末は編みの工程で行われるため、ミシンによる工程を行わず完結します。まるで二本針でステッチをかけられているように見える仕様ですが、全て生地に直接編み込まれており、ミシンでの縫製作業は一切ありません。
そのため着用時の縫い目が当たる不快感を軽減させる始末と同時に、縫っていない為ほつれることがなく、耐久性においても優れています。ステッチを模した飾り編みは装飾的要素に加え、裾の反り返りを防ぐ実用的な目的を果たしています。
このように随所に横編み機でしか成しえない仕様を持つ“BONAPARTE”はカネル社の特徴を多く持つ大表的なモデルとなっています。
















     
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