私の独断と偏見で選ぶこの逸品


第36回は、スロウガン メイド・イン・ジャパンのセーターです。



冬が大好きな私は、12月が近づくと、毎シーズン、セーターを着るのをとても楽しみにしています。しかしながら近年は、少し前のフリースブームや、最近では機能性肌着の流行りもあって、セーター自体、着る人が以前に比べて、かなり少なくなったと思います。最近の冬は、それほど寒くはないし、インナーに機能性肌着でも着とけば、充分暖かいかもしれません。それはそれで便利なものだと思います。
ただ、毛糸の持つ独特の温もりや、贅沢な気分は、毛糸でなければ味わえないものです。同じ暖かさでも、フリースや高機能下着とは、全く質の違う人間味のある温もりを感じます。私はその温もりや、ちょっとした贅沢な気分、そして、季節感を味わえるセーターが大好きです。
私は、毎シーズン、スロウガンの独特の糸使いや、人の手のかかった、柔らかく温もりのある雰囲気のセーターを、とても楽しみにしています。
今シーズンも、ローゲージとハイゲージの糸を一枚のニットで表現したり、とても上質な糸で、スロウガンらしいスクールカーデを作ったり、色々な糸の組み合わせで、ボーダー柄を表現してみたりと、上質で温もりのあるセーターを、スロウガンらしいモード感で表現しています。
そんなスロウガンのセーターは、ブランド創設時から、山形の小さなニット工場で作られています。実は、日本製のセーターは、今やとても貴重な存在かもしれません。日本のこだわったメーカーでも、セーターだけは中国製という所も多く、なかなか国内でセーターを作ること自体が難しくなっているのが現状です。
それは多くのメーカーや工場が、生産コスト削減と利益を求めて、中国に工場や設備を移し、ほとんどのアパレルメーカーが、ニットを中国で生産するようになったため、国内の多くの小さなニット工場が、廃業や倒産に追い込まれ、日本国内のニット工場が激減しました。それは、ニットに限らず、縫製工場、染色工場、織屋なども例外ではありません。今や、日本で扱われる衣料品の国内自給率は、わずか5%未満です。9割近くが中国製だということを考えれば、それも当然のことかもしれません。
余談ですが、日本に観光で来る中国人富裕層の人たちは、日本製の服しか決して買わないそうです。先日、あるメーカーさんとの話で、都内にある百貨店で、中国人観光客が、4万円で売られている中国製の服を見て、店員に「何で4万円もするのに、この服は日本製じゃないんだ!!」と怒ったという話を聞きました。ある意味、多くの日本人が、気にせず中国製を買うのに、日本に来る中国人観光客は、日本製しか買わないというのも皮肉な話です。今や、日本に来る中国人観光客の方が、日本製の素晴らしさに気付いているのかもしれません。

しかし、日本人とて日本のファッション産業に携わる者として、長年日本の繊維ファッション産業を支えてきた技術や伝統、文化が廃れてゆくことに強い危機感を感じます。
最近では、中国での生産コストの上昇や、納期遅れなどにより、中国で作るメリットが少なくなってきており、中規模なメーカーを中心に、日本回帰の流れが出てきているそうですが、ここまで国内の工場が減少してしまっていると、かつてのような生産能力は残っておらず、作りたくても作れなくなっているのが現状です。このようなメーカーが増えれば、割を食うのは、こだわりを持って物作りをしている小さなメーカーや工場かもしれません。
ただ、このようなメーカーは、また中国やその他の国で作るメリットが大きくなれば、また人件費の安い所に移るでしょうし、このようなメーカーが、今声だかに、メイド・イン・ジャパンの復活を唱えているのには、ちょっと疑問が残りますが・・・理由はどうあれ、今や最悪の状況にある国内繊維産業、アパレル業界は、今こそ日本のものづくり復活への良い機会ではないでしょうか。失われかけた産業を復活させることは、大変厳しい道程かもしれませんが、衣料品自給率が1%未満のアメリカのように、自分で着る服を自分の国で作れなくなってからでは遅いのです。
そんな中、私たちのような小さな店が出来ることと言えば、スロウガンを始め、高い志を持って日本でものづくりをする小さなメーカーさんたちの服の素晴らしさを少しでも皆様にお伝えすることで、今後、日本のものづくり復活に微力ながら貢献できればと、最近、更に強く思う次第です。

もちろん私の独断と偏見ですが・・・

スロウガン  メイドインジャパンのセーター  \18,900〜

2010年11月





     
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