私の独断と偏見で選ぶこの逸品

第57回は、コム,アーチの 日本製手編みのセーター です。





私も26年洋服屋をやらせていただいてますが、こんな素敵な手編みのセーター、しかも日本製の手編みのセーターにお目に掛かった事はありません。「コム.アーチ」は、今シーズンからスタートした「ジョー.マック」が作る日本のメンズニット専門ブランドです。今や日本製のニットですらとても貴重な存在なのに、しかも日本製の手編みのメンズニットとなると、趣味で編んでる人を除いて、ほとんど流通してないと言っても過言ではありません。
この手編みのセーターは、4種類の違ったウールをブレンドし、国内紡績した糸で、表編み、裏編み、引き上げ編みの三つのテクニックを組み合わせて、ネイティブアメリカンが織った生地の柄を編みで再現しています。粗さを残し手編みならではの温かさを感じさせます。ファーストシーズンから、こんな素敵な手編みのセーターに出会えましたが、この手編みのセーターは、ニッターさんが一着編むのに一週間掛かるそうです。あまりの柄の複雑さにニッターさんも編むのに相当苦労したらしく、このレベルのモノを次回からは編むのは、時間的にも価格的にも無理だそうです。最初で最後になりそうですが、是非、手編みならでは温かみのある雰囲気、糸使い、テクニックを感じで頂ければと思います。
デザイナーの高橋氏は、ロンドンのセント. マーチン美術大学でニットを学び、その後、ジョン ガリアーノのアトリエでニットチームに所属し、知識、技術を身につけたそうです。帰国後、輸入代理店で仕事をし、たまたまうちの店の担当者でした。そして、ニットへの熱い思いからニット一本で独立することを決意したそうです。
今年の春、高橋氏から初めての展示会をするので是非見てほしいと連絡がありました。そして、展示会でニットを見た瞬間、取り扱うこと決めるぐらい直感的にこのニットの素晴らしさが伝わってきました。
「日本はもとより世界を視野に広く販売していくためにも、デザインと実用性のバランスを強く意識している。職人による主観的な物作りにならないよう細心の注意を払う」という高橋氏。いくら素晴らしいモノを作ったとしても、そこに時代性とセンスが備わってなければ扱う意味が無いと私も思っています。


私自身の信条として、着れるものは殆ど試着してシルエット、サイズバランス、着心地を確認します。
高橋氏は、初めての展示会で、日本製とイギリス製、そして、それぞれに自動機編みと手編みのニットを揃えました。それぞれに素晴らしく、糸使い、着心地、シルエットからは、氏の言う、デザインと実用性のバランスを強く意識し細心の注意が払われている事を感じました。

高橋氏は、「物作りの国と評価されながらも、低コストの生産地に流れ、誇るべき国内の繊維産業が衰退している現実が悲しかった。だから、もっと日本の良い物を見てほしいと思った。日本はもとより、海外にも日本の物作りの力を見せたい。」と強調しています。とは言え、日本でメンズニット専門ブランドなど無いに等しく、それだけ厳しい分野で、ある意味誰も挑戦しようとは思わない分野だと思います。そんな中、日本の物作りのすばらしさを世界に伝えたいと、ニット一本で勝負する氏のニットへの情熱と心意気を感じました。
我々も微力ながら、常々日本のモノ作りの素晴らしさを少しでも多くの皆様にお伝えすることが我々のような洋服屋の使命だと思っています。高橋氏の作るニットの素晴らしさを少しでも多くの皆様に感じて頂ければと思います。


もちろん私の独断と偏見ですが....

2014年9月

comm. arch./コム.アーチ 
MEMENTO FOR NAVIVE AMERCAN P/O セーター   \45,000
MEMENTO FOR NAVIVE AMERCAN マフラー  \15,000
                                (税抜き価格)

日本製












     
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