私の独断と偏見で選ぶこの逸品

第62回は、ケイ マクドナルドの手編みアランJ/Kです。





ケイ マクドナルドと言えば、大量生産、大量消費、効率と生産性を重視する現代社会のモノ作りにおいて、全くの真逆をいくニットブランドであり、現在では殆ど残っていない家庭機によるニット作りをメインとする世界でも稀有のニットメーカーです。
今回紹介する日本製手編みのセーターは、一人のニッターさんが200日掛けて20着を編んだそうです。そのうちの6着がウチの店のオーダー分ですが、一着編むのに約10日も掛かります。現在、日本のニット産業において、最も非効率で手間暇のかかる手編みのセーターは、究極のニットと言っても過言ではなく、もはや日本製手編みのセーターを商業的に流通させること自体非常に難しいことだと思います。
この手編みのセーターの価格は52,000円です。52,000円という値段だけ聞けば高く感じるかもしれませんが、ニッターさんの手間暇、工賃を考えると、52,000円という価格はとんでもなく安く感じます。正直よく編んでくれると思ってしまいますが…、ニッターさんにとって、お金よりもニットを編むことが人生であり誇りなのかもしれません。などと私は勝手なことを思ったりしますが、10年後に果たして、この手編みのセーターが作れるのかと考えると、たぶん作れないと思います。
この手編みのセーターは、滅び行く工芸品のような存在かもしれません。ただ、飾っておく工芸品と違い、手編みのセーターは着ることを前提に作られた実用品であり、そこにクオリティーや着心地はもとより、洋服としてのセンスや感性が求められます。
最初にこの手編みのセーターに袖を通した瞬間、その何ともいえぬ包み込むような心地良いフィット感は、明らかに自動編み機で編まれたニットとは違う着心地であり、それは熟練のニッターさんが一針一針手編みするこの手編みのセーターのみが持つ特別なモノだと感じました。
そして、その仕上がりは、通常自動編み機で編まれたセーターの方が均一でキレイに仕上がるイメージですが、上質な糸で丁寧に手編みされたこのセーターは、とても味わい深く、何よりその美しい仕上がりは格別です。外国製のハンドニットにはない美しさです。




このケイ マクドナルドの手編みのセーターは、まさに一生モノと言ってもよい価値があると思います。私は洋服屋として、一生モノの服など殆ど無いと思っています。なので、「これは一生モノですよ」と昔の洋服屋が常套句にしていた売り文句が大嫌いだったので、接客において今まで一度も使った事がありませんでしたが、私も初めて「これは一生モノですよ…」と言ってみたいと思います。
このケイ マクドナルドの手編みのセーターが醸し出す洋服としてのクオリティー、普遍性、実用の美は、まさに一生愛用できる逸品だと思います。是非皆様、この手編みのセーターのみが醸し出す『特別なモノ』を感じていただければと思います。

もちろん私の独断と偏見ですが…


2015年10月

Kei MACDONALD/ケイ マクドナルド
Hand mak Aran J/K  \52,000+TAX

ベビーアルパカに限りなく近い23〜27ミクロンの細い繊維のアルパカと生後一年未満の26〜27ミクロンのキッドモヘアを15%ずつ配合したメリノウールブレンドのラムズウールです。トップ染めでソフトな風合いの糸を贅沢に手編みで仕上げた一生モノのニット。オールハンドメイドの本格的アラン柄ニットです。

カラー チャコール、ベージュ  サイズ XS〜L
素材 ウール70% アルパカ15% キッドモヘア15%

日本製




















     
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