バカ漫画 其之四 | ![]() |
「おしえて さやか 〜季節は株式〜」 〔日興證券〕 (1985/11/11 2版発行) 作・西河健治 画・古城武司 |
(C)古城武司
バカ漫画 も4回目を数えることになりました。 これもひとえに私の努力の賜物です。今のところ、コーナーできたばっかりで反響もないし。 頑張れ、頑張れ、じ・ぶ・ん!♪ おまえがバカだとかいうな。 さてさて、第4回目はまたまたマイナー作品。 「おしえて さやか〜季節は株式〜」 作画はまたまた古城武司 先生。〔バカ漫画 其之弐〕参照のこと。 本人の名誉のために言っておくと、別にこの先生がバカなのではありません。 バカな原作の作画を引き受けるからこうなるのであって……って、フォローになってないな。 絵は上手いしけど、あまり特徴ないので、宣伝などに利用するのにちょうど良いからでしょう。 発行元は日興證券。 これで、どんな漫画か一発でお分かりになる思います。 そう、投資推進&解説漫画です。 発行元見たらどんな内容の漫画か、すぐ分かってしまうってのも底の浅い話です。 ただし! 今回の漫画に関しては、特に笑いを誘うような箇所はございません。 これ、真面目な投資推進&解説漫画でして、株式投資について、 投資のやり方から、その応用から、データから、詳しくきっちり説明してあります。 ちゃんと投資のリスクについても言及しております。 投資をしてみたい初心者のための入門書となりうる漫画だと思います。 しかし! この作品は、バカ漫画 以外の何モノでもないのです。 とりあえず、あらすじをば。やはりストーリーとしては面白くもなんともないんですが。
タイトルが「おしえて さやか」なのに、ストーリーにさやか が出てこないのは何故? てゆーか、そもそもさやかって、だれ? 実はさやか とは、今日子が投資に行く日興證券の受付の 証券レディ(←この言い方も古いね)・関根さやか嬢(24歳・美人) のことでした。 わざわざ年齢まで設定されているのに、この人ストーリーにまったく絡んでこない。 専ら株式投資についての解説と説明するだけ。 信雄が「さやか を洋一の嫁に…」と考えるシーンもあるが、まあそれはそれでバカってことで。 さて、この平凡極まりない漫画が、どうしてバカ漫画 たりうるのか? ヒントをさしあげましょう。 この本が発行されたのは、1985年 です。ここで分かる人も多いと思いますが… 分からない人のために解説。 1985年9月には「プラザ合意」が為されます。つまりこの年は、 バブル景気の始まりの年だったんですよ。 1985年から1990年くらいにかけての好景気。いや超景気。いや狂景気 土地も賃金も売上も、何もかもが「狂」ったように右肩上がりの世の中。 もちろん株も上がりまくっていたのは言うまでもありません。 何もかもが浮かれまくっていました。何がバカかって言えば、
基本的にこの手の漫画で、感情移入するなんてことは、ほとんどないのですが、 この本だけは物凄〜く感情移入しましたよ。 だって、こののんきな家族の行く末見えちゃってるから。 5年後に、この家族が迎えるであろう惨状が、そして崩壊が なんか、気分はプチ予言者♪ 日本が沈没することが分かってしまった田所博士のような 死兆星を見たというレイを前にするラオウのような 清太と節子がどうなるか知っていて『火垂るの墓』を観る観客のような ……………いかん、暗い話ばかりだ。 無茶なスケジュールをノリで引き受ける炎燃を見て、〆切り前の地獄を想像するアシスタントのような ……………ちょっと違うかな。 「いや、山野家が崩壊するとは限らない」 とおっしゃる方もおられるかもしれませんが、 崩壊するであろう根拠となりうる箇所は大量にございます。 P.53〜54 今日子 「お母さん、株はバクチじゃないそうよ。 確かに値下がりはあるけど、 それは短期間のことで、過去の実績では10年間で96%の銘柄が値上がりしてるって」 「しかもその値上がりは、土地や債券に投資した場合の約2倍なのでーす」 「株は物価よりも上昇率が高いのであーる」 つまり @株は長期的に見れば上がり続け、値下がりも短期的なもの。 A値上がりの幅は土地や債券より大きく、物価よりも上昇率が高い。 そんな幻想抱いている奴が、果たしてバブル景気に煽られないで済むものか。 バブル崩壊の直前で、利益を残したまま、投資をストップできるものなのか。 わたしゃ、ぜったい無理だと思うな。 「いや、家族全員で力を合わせたら何とかなるはず」 そう思われる方もおられましょうが、やはりこれも難しいかと。 今日子に説明されたのがきっかけで、家族全員が株のメリットを知り、投資を始めることに。 母の邦子さんは眼を輝かせ、突如、信雄のむなぐらをつかみ 邦子 「お父さんっ!やりましょう。私たちも株式投資をしましょう。ねっ、お父さん。」 信雄 「お、おまえどうした。目つきが変・・・・・・・」 文字通り、 だが信雄の方も、後に中国ファンドから200万円おろして投資を始め、損失を出すことになる。 弟の洋一は洋一で、「ボーナス全部突っ込んで」投資するようになる。 こんな奴らがバブルのイケイケ(←古っ!)の中、立ち止まろうなんて そりゃあ、無理!! 更に極めつけなのは、この家族がそれぞれに抱いている
・・・・・痛い。リアルに痛すぎるよこれ。 未来が分からないというのが、これほど 現在(2004年段階)で、こんな高利の利殖あったら、真っ先に詐欺を疑うべきでしょうな。 家族五人の夢が、無残に、そして木っ端微塵に打ち砕かれる運命と分れば そりゃあ、感情移入もするわ!! 五人が五人、全員が株式投資しておりましたから、それもボーナスや預貯金おろしてまで。 五年後には、株式投資だけでもかなりの損害が出ることが推測されます。 もしマンションや一戸建てなんぞ買ってしまったら、超高額な住宅ローンに苦しめられることに…… 下手すりゃ、破産?。 最悪の場合、自殺?、一家心中? ・株式投資の話を持ち込んだ今日子さん、責められるんだろうな。離婚かもよ。 ・都合の良い話しか持ち込まなかった船田清さんも、槍玉に挙げられそう。 ・まして、日興證券 の関根さやか さんなんか…以下略。 可哀想なのは、実際にこの本のストーリーそのままに踊らされて、 散々投資した挙句に多額の負債を抱えてしまった人が山ほどいる事実・現実。 ………実際うちの親父(司法書士)の事務所には、こういう方々が毎日のように……… ある意味この本も、そんな人たちを生み出すのに一役買っていたかもしれません。 そう考えると、今回はバカ と言うより、非常に痛い本の紹介でございました。
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