バカ漫画 其之拾八
「風の隼」
〔大都社・スターコミックス〕
(昭和61年6月30日発行)
黒咲一人

(C)黒咲一人

 バカ漫画 更新が遅れて申し訳ありませんでした。
 この時期大変なんですよ。進学・就職のシーズンで買取が年で一番多いし、確定申告もあるし……
 すみません。バカな言い訳しまして。

 さて、今回採り上げるは黒咲一人先生の『風の隼』
その冒頭、荒廃した台地をボロボロのマントを羽織って一人歩く主人公。
「いやああ〜〜〜っ」そこへ突如、悲鳴が響き、助けを求める女が駆けて来る…………

 はい、ここまで読めばどんな漫画がモデルかは、お分かりになると思います。
 そう、世紀末救世主伝説『北斗の拳(作・武論尊 画・原哲夫)
 最終戦争などで荒廃した世界に、マッチョでバイオレンスな救世主登場!!…てな設定は
『マッドマックス』以来、もはや飽きるほど見てきましたが、この作品もその中の一つ。
『ファミコマンダー竜(安田タツ夫)』ほどぶっ飛んだ内容ではないのが残念ですが(笑)。
       ↑レビューあります 埼京震学舎 新田五郎氏のレビュー


 さて、見返しに解説あります
  西歴(←原文ママ)20XX年、地上は度重なる天変地異によって廃墟と化していた。
  人類は上級人と下級人とに分けられ、上級人は地下都市で快適な生活をおくり、
  下級人は荒廃した地上へと追いやられていた。地下都市と地上を結ぶ唯一のもの、
  それはボクシングの名をかりた地下都市でのデスゲームだけだった。
  荒涼とした大地を踏みしめ現われた男、来栖隼。彼の前に闘いのゴングが鳴り響く!
 地上が廃墟と化した原因が「天変地異」なのが、他の漫画・映画などと違うところですが
作品の中には「1999年12月24日に、とてつもない大地震と大量の隕石の落下があった」(P.148)
…と出てくるだけで、原因も何も不明。ストーリーにも関係なく、まったく話は膨らみません。
1999年といえばノストラダムスですが(そうか?)、でも7の月じゃないしなぁ。何でクリスマスに?

 話を戻します。あらすじです。
  主人公の来栖隼20世紀最強のボクサーである「東洋の牙(来栖鷹彦)の末裔。
世界制服を目論む太刀花一族は、「東洋の牙」のクローンを戦闘員として養成すべく、各地下都市の
デスゲームにクローンを送り込んだ。デスゲームの頂点に君臨する「東洋の牙」のクローンたち
「雷電」「飛燕」「彗星」そして、最強の男「将軍」。人間としての尊厳を穢され続ける彼等に、
名誉ある「」という名の安らぎを。 これが来栖一族の悲願であり、来栖隼の使命なのだ!!

 主人公・来栖隼は、各地の地下都市に赴き、そこに君臨するチャンピオンたちを撃破していきます。
ちなみに、デスゲームも階級制となっておりまして、その内訳は
  ライト級(55kgまで)ミドル級(65kgまで)ヘビー級(65kg以上)の3階級だけです。
主人公はじめ、東洋の牙(来栖鷹彦)クローンたちも同じ階級です。

「雷電」「飛燕」などは、かなりの強敵でしたし、中には「彗星」のように地下から逃げ出して
地上の開墾にあたっている者もおりますが、皆共通するのは「東洋の牙(来栖鷹彦)
クローンだけあって主人公の来栖隼とよく似ていることです。
 そして、最終決戦。彼らクローンの中でも最強の相手です。
無敗のチャンピオン
その名も
「将軍」!

……こ、この
デブが?

↓↓↓
メガネ外して
キリッ!としても
デブなものはデブ

一週間後


れっつ
ごーおんな
だいえっと

          変わり過ぎです!もはや別人(笑)
 3ヶ月で19kgの減量を成功させた、ガッツ・OK牧場・石松もビックリです。
一週間で50kg以上も減ってんじゃないか、この人。さすが、伝説の「東洋の牙」のクローン。
普通の人なら、こんなダイエットしたら死にますので、良い子はマネしないように♪
ちなみにこの人。「チャンプになった日から飽食が過ぎ、こんな体になっちまった」そうだ(笑)。





さてさて、ここまでのバカっぷりは、ほんのつかみに過ぎません。
メインのバカはこちら。主人公・来栖隼必殺技です。

 その名も、S・B(ソニック・ブーム)パンチ
一度ふるえば、喰らった相手は回転しながら数十m吹っ飛んだ挙句に壁にめり込み
更には周辺の人間をも吹っ飛ばし、衝撃波で建物や石壁に亀裂が入るほどです。
ちなみに、ストUガイルが、必殺技・ソニックブームを放つのは、この5年後のことです。
見事、先駆けておりますな。


 しかし、これは来栖隼にとっては当たり前の技。もっと凄い(凄まじい)必殺技があるんです。



その名もプラズマパンチ!!


これがまた、凄まじくトンデモな技でして(笑) いくつか種類がありますので、検証していきましょう。

T. スパウトプラズマパンチ
  複数(多数)の敵を相手にする時に有効なパンチです。
    @主人公の体を謎の光が覆う
    Aパンチを放つと、光の渦が天空に舞い上がる
    B敵は光の渦に引き込まれ、天空に次々と舞い上がる
    Cそして、今度は次々と落下。敵はすべて転落死。屍の山を築く。

   説明だけでは信じて頂けそうもないですので、証拠もお見せしますよ。→こちら

U. 左手でのプラズマパンチ
  人質を取るような卑怯な敵に有効なパンチです。何も考えず、正面からぶちかましましょう。
  敵だけを跡形もなく消滅させ、人質となった者には怪我ひとつ、火傷ひとつも負わせません

V. 蘇生のプラズマパンチ
   恋人だった「飛燕(↑あらすじ参照)を殺され、中性子銃で自殺した太刀花桐(ヒロイン)
  再び生命を与えます。命すら自由自在。あ、ちょっとした副作用がありますがね(後述)

  他にも、敵に幻覚を見せたりもできますプラズマが弾けるためなんだそうだ。原理がよく分からんが)


  ここまでくると、プラズマパンチ。もはや何でもありの必殺技です。
「自然発生した人体プラズマが高速で体外に送り出されたエネルギー」(P.123)
…が、プラズマパンチの原理らしいのですが、問題なのはこの後。衝撃発言です。

「今を去る幾世紀よりの、我が
 来栖一族の男達のプラズマ
        が俺の体を包んでいるのだ!!」
 (P.125)



つまり、プラズマ=「ってことですか?
         これがホントの
エクトプラズマ…なんちって(笑)



Vプラズマによって蘇生されました太刀花桐さん。副作用とはつまり憑依体質になっちゃったこと。
地上のむさ苦しい悪人たちに拉致され、強姦されようとしたその時、彼女の体を謎の光が覆い、
そして素っ裸のまま体から放たれるプラズマ!!。悪人たちは、一人残らず黒コゲに……

そのまま太刀花さんは「東洋の牙」…もとい、プラズマに憑依されたまま、ふらふらとさ迷い歩き
 「無益な殺生をするでないぞ、愚か者。生命をもてあそぶ資格は、お前たちにはない!!」
…と、ケンシロウばりの啖呵をカマし、再び悪人に対してプラズマパンチを放とうとする刹那………

 「バシャーッ!!」 
 落雷の如きプラズマ大暴発!。哀れ太刀花さん、悪人と一緒に黒コゲに(…まさに
「パンチとしてプラズマを放出させるには、S・B(ソニック・ブーム)をまきおこすぐらいの腕の振りが必要」
                                  …なんだそうです(来栖隼・談)。なるほど

……しかし、次の頁をめくると、太刀花桐を抱きかかえたままで手の塞がっている来栖隼
今度は「蹴り」でのプラズマパンチ炸裂!?
さすがは主人公、足の振りも凄い……のか?


そんな何でもありプラズマにも弱点はありまして、
それは、主人公が危機に陥らないと発動しないこと(「帰ってきたウルトラマン」みたいだな)
そして、その正体が地上を彷徨する祖先の怨念のプラズマであるため、
地下ではS・B(ソニック・ブーム)パンチしか使えないことです。




 さて、現実のプラズマといえばこのお方、大槻(火の玉)義彦教授が有名です。
 教授が世界初、電波で火の玉をおつくりになられたのは1990年のこと。
氏のプラズマ仮説が大発展を遂げ、ミステリーサークルから怪奇現象・心霊現象まで、
何でもかんでもプラズマで説明するようになっちゃうのは、その後のことです。


それが、遡ること4年以上前の昭和61年(1986年)段階で、
                               (*何の雑誌に掲載されたか不明のため、もっと前の可能性もあり)


とは人体プラズマであり、ならば何でもできるから

      プラズマ何でもあり

 という結論に達した偉大なる先駆者・黒咲一人先生に栄光あれ!!

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