バカ漫画 其之弐拾七 | |
「鋼鯨〔ザ・タンカー〕」 〔主婦と生活社・Gigaコミックス〕 (平成3年6月1日発行) 青柳祐介 |
バカ漫画特集は、四回に渡って「死者に鞭打つ」シリーズ。 お亡くなりになられた作家さんの特集です。ファンの方には最初に謝っておきましょう。ごめんなさい。 まず登場されますのは、青柳祐介先生(1944〜2001)。 『土佐の一本釣り』『鬼やん』『川歌』などを描かれた、高知県出身の人気作家です。 故人の描く、その男らしい生き様と、無骨だが味のある絵柄には、根強いファンも多いので、 こんなところで採り上げるのは非常に心苦しいのですが…… でも、この作品、やっぱりヘンなんですよ。
海の男の漫画なんだか野球漫画なんだか、よく分からん作品です。 しかも、この甲板野球。作中の表現を借りれば 「我々の甲板野球はこのインドの沖でやると決まっている。ここは海の墓場と呼ばれるぐらい 強風が吹き荒れるところだ。巨大タンカー・時光丸が大きくきしむほどだ。 風速20〜30はザラ。時に40メートル、それ以上にもだ」(P.76) 何と凄まじい野球だろう!! ちなみに、風の強さの目安はこちらとこちら ☆風速20〜30m(暴風) ……立っていられない。屋外での行動は危険。樹木が根こそぎ倒れはじめる。 それが、甲板野球の最低条件なのだ!! もっと凄いことには、 ☆風速40m、それ以上(猛烈な風) ……屋根が飛ばされたり、木造住宅の全壊が始まる。列車も倒れる。 そんな環境でも続けられるのだ。繰り返す。何と凄まじい野球だろう!! 時光丸の幅は、せいぜい50m強。そんな中で屈強な海の男たちによって行われる甲板野球 正に、男の中の男のスポーツ!! 多分、一試合につき何人か、死者が出ているに違いない。 そんな過酷極まりない状況で野球をするのだ。通常のボールではお話にならない。 「硬式ボールは飛びすぎる。軟式ボール、ソフトボールは甲板に跳ねすぎる」(P.76) よって、「鉄球の芯に強力のりで牛革をかぶせた特殊ボール」で行われるのだ。 ボールの重量に加えて、風速20m以上の風に遮られ、ボールはキャッチャーまで届かない。 甲板部の猛者たちの肩は、相次ぐ甲板野球での無茶が崇り、もはやズタズタに潰れているのだ。 球のスピードでは誰にも負けないと豪語する領市でも無理だった。ただ一人を除いては……… それが機関部投手の、こりゃまた海の男らしくない…てゆーか怪しさ極めつけの人物
つまり、彼らの島が火山の爆発の猛威に曝されているので、この船で助けてたいということらしいです。 どうして踊らにゃならんのだとは思いますが、まぁ彼らは誇り高き…以下略。 彼ら誇り高(略)の決死の思いに海の男たちの魂が応える。 火山弾や津波にも負けず、彼ら部族の子供、年寄り、女たちを次々と救出し、 時光丸に収容していく海の男たち。危機一髪で彼らの部族は救われた。 その夜、彼らは感謝の標(しるし)を体で表現するのだった ↓↓↓↓↓ ・ ・ ・ ・ ・ って、やっぱり踊るんかい!!(笑) そして、問題は当初の話へ。ペルシャ湾に行くべきか否か。 「アメリカ、ペルシャ湾を海上封鎖。停止しなければ武力行使。サウジへ米軍派遣。 空挺部隊4千、空母・インディペンデンス、アイゼンハワー、サラトガ」 「イラク、機雷敷設。外国人人質、化学兵器使用準備」(P.188) 船員たちも喧々囂々、侃々諤々 「しかしフセインはたいした奴やのう」 「なんだぁと?」 「考えてみろ。アメリカ・ソ連にいいなりの今の世界情勢で、 全世界相手にくるならやるぞ、なんて構える国が!男が!いるかよ」 ↑あぁ、このセリフを今のフセインに聞かせてやりたいものだ(笑) 「何を言っているんだ。フセインは侵略者だぞ」 「そんな事はアメリカもソ連もずっとやってきたことだ。いまさら正義ぶるこたぁない いつもいつも大国の思い通りに世界は動かんぞとフセインは民族の誇りをかけて立ち上がったんだ」 ↑これも聞かせてやりたいな(笑)。 現実には、クウェート侵攻は別に民族の誇りとかあまり関係ないのだが。 「小理屈ぬかすな!世界は平和を目指しているんだ。あいつは悪党だ」 「今の平和は、大国がうまい汁を吸うため、いいように動かしてる平和だ」 議論は白熱して止まず。しかし、船長はそのままペルシャ湾に行くことを宣言する。 船長 「本船は当初の予定通りペルシャ湾バーレーンを目指す」(P.190) 当然のことながら、船員からは非難轟々。またも議論は白熱し、止まる気配も見えない。 ……と、ここでいきなり領市が割って入り 「船長、甲板野球をやりましょう!」 ……って、なんでやねん!!(爆) 「バカ!何が野球だ。今、俺達の生き死にがかかっている時だぞ」 ↑ごく、まっとうな反論。 しかし領市くん怯まず 「だからこそ野球です」 ……もはや、反論にすらなっちゃいねぇ(笑) 何故か船長、この提案を受け入れ、甲板野球を始めることに。 守備につく甲板部の面々。しかし、肝心の言いだしっぺ、ピッチャーの領市の姿がない。 ・ ・ ・ ・ ・ いぶかしむ甲板部と、野次る機関部。そこへ領市くん、颯爽と登場!! ↓↓↓こちら(爆!) な、なんてシュールな(笑)
庶民の生活はパニックです。冬、北の人達は灯油がなければどうなるでしょう」 「僕らが命がけで運ぶ石油は、特定の人間を!会社を! 儲けさせるためのものであってなるものですか」 「僕は、僕らの命がけで運ぶ石油は、日本の庶民の命の明かりだと思っています」 「それが僕らタンカーの、鋼の男の誇りだあ――っ!!」 おお、良いことを言うなぁ。あんな格好でなければ、もっと説得力あったと思うが。 もはや、海の男にも鋼の男にも見えやしないぞ(笑) |
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