バカ漫画 其之弐拾九 | |
「庭師一代」 〔講談社・モーニングC〕 (昭和61年9月18日発行) たがわ靖之 |
バカ漫画第29弾は、またもや死者に鞭打つシリーズ。絶対にまともな死に方しませんな>私。 今回採り上げますのはたがわ靖之先生。横山プロ(当時、田川きよし)を経て劇画の道へ入る。 代表作は、『鉄火の巻平』『包丁無宿』など、主に食文化(特に日本料理)関連作品で有名です。 中でも『夜の料理人(芳文社)』は、究極のバカ料理漫画として燦然とした輝きを放っております。 (↑レビュー ゾイド穴、BLACK徒然草) そんな作者が、世にも珍しい日本庭園をテーマにした漫画を描きました。非常に興味あります。 …で、読みました。結論から先に述べさせて頂くと、これ料理漫画と大差なし(笑) とにかく、最初から最後まで勝負勝負、庭勝負!! 持ち込まれる難題難題、無理難題!! 主人公・東快道 の手による奇想天外な庭造りに、あっと驚く依頼者、対戦相手。 そこに理解ある者の庭薀蓄(ウンチク)が飛び出し、納得する依頼者観客、悔しがる対戦相手。 かくして、庭勝負はことごとく勝ちを奪い、無理難題もバッサリ解決。 それがこのバカ庭師漫画『庭師一代』 なのですっ!! やっぱ、『鉄火の巻平』や『包丁無宿』と大して違わないよなぁ…。 主人公・東快道は、老舗造園業社・庭一造園の居候の駆け出し庭師。 しかし、彼の祖父・東陽道は、あの大財閥・山倉公の邸宅をはじめ、数々の名庭を残し、 イギリスの造園研究家・ハーバード・ロン博士をして造園の神様とまで言わしめた(P.69)、庭師名人。 腕は良いが、短気で後先考えない直情傾向ある熱血漢です。親方の娘とデキてます。 ストーリーとは関係ないのですが、第二話の途中(開始40頁くらい)まで主人公の姓が作品の中に出てきません。 庭一造園の親方も雇われ任夫も、彼を「快道」と呼んでましたが、最初は姓だか名前だか分かりませんでした(笑) 第1話 「不全の庭」 では、業界最大手・叶シ山ガーデンとの庭勝負。 めぼしい名木・名石を叶シ山ガーデンに抑えられた快道くん、「不全の庭」 で一発大逆転!! 庭一造園の親方の薀蓄が炸裂! 「不全の庭…それを初めて表現したのが本阿弥光悦作の京都・本法寺の庭だといわれている。 (中略) 満開の花はもちろん美しい……が、その前途は知れている。 花なら半開の美、陶器においては破形の美……精より粗、完全なものよりその一歩手前の不全 ……不備なものを愛でる……完全を予想させ期待させる感情……これが不全の美です!」(P.28) うなづく依頼人「うんっ!」 してやったり快道くん「勝った!」 まぁ、こんな話の連続です。 ちなみに、この薀蓄が本当に正しいのかどうかググッてみましたところ…… 京都・本法寺の庭を手がけたのは本阿弥光悦で間違いないようです。が、彼の手がけた庭は「巴の庭」と呼ばれています。 じゃあ、不全の庭ってのは何じゃらほい?? 調べましたが、不全の庭という語句そのものが存在しませんがな(笑)。 第2話 「秘伝・隠れ見」 では、コンピューター設計の五味川ガーデン相手に勝利。 第3話 「名人への道」 では、他の業者が尻込みする老舗呉服屋・伊勢丸の裏庭を手がける。 樹齢300年以上「時の将軍綱吉公より直々に賜った名誉ある御賜木」を切り倒す大胆不敵さ。 親方たちに「快道!! な、なんちゅうことをしでかしおった――っ!!」 と絶叫せしめるも、 先代の伝統の殻を破ろうとしていた若旦那の鶴の一声で結果オーライ。 親方も、それまでの剣幕はどこへやら「快道、名人への道を歩き始めたな……」とご都合主義。 しかし、第4話にして話は急転。タイトルもそのものズバリ「破門」!! あくどい商売で大金を得た極悪人(詐欺師?)・花吹により、十境の庭の依頼受けた快道くん。 十境の庭を造れると張り切るも、あまりに身勝手で理不尽で造園に無知な花吹の要求に激怒!!。 (↑一つの庭に十の趣きある見所を造るんだそうです) 依頼されたとはいえ自らの造った不本意な庭を眺めながら、祖父・東陽道の言葉が甦る。 (「けっして御用庭師にはなるでないぞ。 客のためでなく、自分の庭を作るんだ。」)
所帯でも持たせて、ゆくゆく庭一造園は快道にまかせるか……」とか思っていたの全部パー。 庭一造園を辞め、放浪生活に。凄腕の流れ庭師としての人生が始まったのだった。 …って、やっぱり同じだよなぁ。 『包丁無宿』の暮流助じゃないかこれ(笑) 第5話 「手作りの精神」 では、千利休の子孫(自称)・千杉風を相手に「変幻の庭」で勝利。 第6話 「無言の教え」 では、山水河原者の流れを汲む植木彦四郎の無言の薫陶を受け成長。 そして、第7話 「情けの裏ワザ」 において、その技術は一つの極みを迎えます。 花吹さん(第4話参照)と相似形、ステレオタイプの嫌な金持ちの庭を造ることになった快道くん。 豪邸の二階で半年間寝たきりになっている先代の爺さんを憐れみ、彼のために庭を造ることを決意。 「わしの海軍時代はこれくらいの病気は海に飛び込めば治ったもんじゃった」(P.178) 「あのソロモン海海戦のおり、愛機零戦21型に乗ったわしは、 右上方から撃って来る敵戦闘機をば……」(P.179) 自慢話を延々と繰り返され、家族は耳タコ。 「わしが若い頃は、零戦に乗って敵機をあっと言わしたもんじゃった」(P.184) 「この体さえ動けば、いま一度……あのソロモンの海を飛びたいものよ……」(P.185) 普通に考えたら、半分ボケてるんじゃないかと思ってもおかしくありませんが、快道くん本気です。 そして、完成した庭。快道くん鏡を手に寝たきりの爺さんに庭を見せる。 快道 「この庭は、息子さん夫婦のために造ったんじゃない。
☆蛇足 最終第8話 「庭の真髄」で、当代の庭師名人・黒田邦月の元で修行に明け暮れる快道くん。 庭の真髄・「庭の基本は掃除に始まり掃除に終わる」を悟り、見事に課題クリア。 庭一造園の娘・加世(←第4話から駆け落ちまでしてるのに、最終話まで名前不明)と祝言をあげる。 めでたしめでたし 地味ですが綺麗に纏めて話を閉めるのは、さすがはベテラン漫画家といったところ(偉そうだな>自分)。 |
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