平成20年11月議会 一般質問 

安田優子 一般質問

 大変暗いニュースが続く中で、今朝の新聞を開けましたら、山陰海岸が日本ジオパークに認定されたという嬉しいニュースが出ておりました。平井知事の願いが一つかなったわけでありまして、心からお祝いを申し上げたいと思います。引き続きまして今後は世界登録に向けた取り組みを、頑張っていただきたいと存じます。
 質問に入らせていただきます。


少人数学級の存続発展について

         

 今日は私は、少人数学級の存続発展ということで、知事と教育長に質問をさせていただきます。
 アメリカのサブプライムローン破綻に端を発した金融危機の波は、またたく間に全世界に波及し、本県においても、県民一人一人の足下にまで、リストラ、倒産、雇用への不安が押し寄せてくるという事態を迎えております。
 県庁で働く皆さんについても、今議会において、給与に関する条例改正案が上程されております。民間の痛みを共有し、厳しい県財政運営に寄与していただくことに敬意を表しますとともに、この給与カットで生み出されるという年間3億2千万円という貴重な財源の使途について、私は深く思いを至さざるを得ないのであります。
 この度の経済危機は、百年に一度とさえ言われるものであります。緊急、かつ適正な対応によって、県民の生活を守っていかねばなりませんが、一方で私たちは、今口を開けたばかりの闇夜を前にして、暫くの間は、暗い夜道に耐えていく覚悟も、また必要ではないかと思うところであります。
 そして、闇夜の向こうに迎える社会を担う子供達を、この地域からたくましく賢く育てていくことに、大きな夢と希望を見いだしたいと思います。
 そのメッセージを広く県民の皆さんと共有し、教育を県政の柱に据えるときと考え、急ぎ質問に立った次第であります。
 厳しい県財政ではありますが、県職の皆さんの給与カット分を原資として、少人数学級の存続を求めるものであります。
 読書活動の推進と並び、本県教育の大きな特色をなす少人数学級は、平成14年から3年間にわたる県職員給与のカットによって生み出した、約100億円の基金によって一万人の雇用創出を目指した、いわゆる鳥取県版ニューディール政策の一環としてスタートしたものであります。延べ491人の雇用創出を成し就げ、基金のうち少人数学級のために捻出された21億2千5百万円を平成19年度で使い切り、その財源故に存続が危惧されております。
 本来の目的もさることながら、時代錯誤も甚だしい国の学級定数40名と比べ、小学校1、2年生で30名、中学校1年生で33名のゆったりした学級運営は、大変好評であります。
 加配教員給与の2分の1を負担する市町村からも、存続を求める声が上がっております。
昨年、県教委が行ったアンケートによると、小学校教員のほぼ100パーセントが、学習・生活指導の両面で効果を認め、中学校教員の約97パーセントが同様の効果を言っております。
 保護者も、小学校で98パーセント、中学校では100パーセントが肯定しており、価値観の多様化した現在の社会で、これ程支持される事業も珍しいと思うのであります。
また、鳥取県程ではないにしても、秋田県をはじめ多くの県が少人数化を導入しておりますし、フィンランド等の教育先進国においては、もっと少人数でしかも教員の複数化が実施されていると聞いております。
 もはや時代の趨勢ともいえるこの少人数学級について、教育長のお考えをお聞かせください。
 本来は、国の責任において成すべきことを、県と市町村が親心で肩代わりをしている事業であるともいえ、今後とも国に対して学級定数の見直しを、強く訴えていかねばならないことは言うまでもありません。知事には、この制度を導入している各県の知事とも協力して、運動していただくことをお願いしたいと思います。
 一方で、その親心、努力の程を広く県民にもご理解いただき、教育立県鳥取県のシンボルともいえるこの少人数学級の存続と、さらなる発展に向けた取り組みを始めようではありませんか。知事には是非ともその先頭に立っていただきたいと思います。
 知事のご所見を求めます。
 私も及ばずながらその隊列に参加させていただきたいと、かねてより考えておりますことを申し添え、壇上からの質問と致します。

○平井知事(答弁)

         

 安田議員の一般質問にお答えを申し上げます。
 まず冒頭、前田宏議員のお名前を出しながら、日本ジオパークの選定の報告をいただきました。私も昨日、たいへん喜ばしく受けとめさせていただいたところであります。それはまずは、スタート台に立つことができたということでございますし、それから仮にも日本ジオパークに選定されるにあたっては審査基準がございまして、それが世界ジオパークの審査基準を準用しておりますので、一定の評価をいただけたのではないかと思います。ただこれから世界ジオパークに向けて、ようやくスタート台に立ったというのが現実だと思いますので、気を引き締めてやって参りたいと思います。
 そして縷々、安田議員のほうから、教育についてのご自身のお考えをご披瀝になられ、また私のほうには少人数学級の存続発展に向けての考え方、それから全国の知事らが連携しての運動などのお訊ねをいただいたところであります。
 確かに県議がおっしゃるように、現在、時代は一つのトンネルに向かっていると考えなければならないかもしれません。しかしそのトンネルを抜けていくための力はどこから生まれるかといえば、それは未来を担う子供達の世代の力によるところが大変に大きいと思います。私達ができることは、その意味での逞しく、そしてしなやかに、社会性を持った子供達を教育の力で伸ばしていくことではないかと、というのが安田議員のおっしゃりたかったことではないかと思います。その通りだと思います。
 思い起こしてみますと、安田議員のお父様も教育者でございまして、県の教育委員でご要職を務めていただきました。その後、境港の市長としても実績を残されたわけでありますが、やはり人を育てるという家系の中で安田議員も育まれ、さらにご自身も関東のほうで教鞭を執られて、熱血先生をされていたわけであります。
 私もそういうような思いを感じることがあります。
 自分自身の生い立ちといいますか、小学校時代など考えてみますと、決して真っ直ぐな子ではなかったのだろうと思います。ちょっとやんちゃで、いたずらなところが多かったと思います。厳しい時はしっかりと叱られましたし、それから最初に入学した時に、担任の先生が一人一人児童の間を回りながら、「○○さんよろしくね」と言って握手して回っていたことがありました。そうして初めて学校というところに溶け込めたような気がするんです。そういうものを一つ一つ導いていくのが、そうした指導力のある先生方の存在が大きいところでありますし、その力とこうして地域も教育を支えるという営みに取り掛かる必要があるのではないかと思います。
 このご指摘の少人数学級は、様々な効果があると指摘をされていますし、アンケート調査でも出てきております。そのアンケートの中でも印象深いのは、やはり遅れた子供達、ちょっと置いてけぼりを食いそうな子供達をフォローしてあげる、要はどこが達成度が足りないのかを見て、それをサポートしてあげやすくするのが少人数学級のいいところであるということがあります。
 また、特に小学校低学年から段々と子供は成長していく過程で色々なことをやるわけでありますが、生活態度を身に付けることも大切でありますが、その意味でも学級が小さいということは効果があるといわれています。
 いま議員のご指摘もございましたので、ぜひ、文部科学省の態度は非常に頑ななところがございますけれども、私ども地方の現場から少人数学級の効用を説く運動を起こす必要があると思います。
 ましてや県の例ももございますし、その他にもこうした少人数学級に取り組んでいるところもございます。こうした県などと色々話し合ってみて、国のほうでの制度として、教育立国を考えるために、少人数学級というテーマを掲げるべきではないかということを、私なりに努力をして参りたいと思います。
 そして県内の少人数学級の存続発展についてでございますが、安田議員のお言葉を噛み締めながら、これからの予算編成に当たって参りたいと思います。
 正直、現段階ではきちんとした財源措置が明確にある訳ではありません。ですから悩みながらやっていくことになると思いますが、そういう中で熱血教師だった安田議員の顔を思い浮かべて、できるだけ実現するという決意で頑張って参りたいと思いますし、願わくば国の支援なども拡充して、こうした少人数化の取り組みをさらに充実させていくことが必要ではないかと思います。

○中永教育長(答弁)

 安田議員のご質問にお答え申し上げます。
 もはや時代の趨勢ともいえる少人数学級についての考え方はどうかというお訊ねでございます。
 議員がお話しになりましたように、少人数学級は県の独自の施策ということで、小学校では平成14年度から、中学校では平成15年度から取り組んでいるところであります。
 小学校1年生に入る時に、「小1プロブレム」という問題があります。それへの対応とか、中学校1年になった時に小学校から中学校1年に向かっていく段階での「中1ギャップ」というものがありますけれども、こういうことに対応していく意味合いもあり、効果があると思っています。
 議員ご指摘のように、効果があると我々も考えておりますので、これは学力の定着にも非常に効果がありますし、それからお話しにありました生徒指導の面でも、あるいは子供達の生活習慣の定着の面でも、あるいは不登校への対応の面でも効果があるというように考えております。
 例えば少人数にしますと、先ほどの知事の答弁にもありましたけれども、我々のほうからすれば発言回数が増えて、先生と生徒の色々なコミュニケーションが非常に多くなっていくということ。それを元にして、学習に集中して、みんなの意見を出しやすくなっていくということですとか、それからさっきありましたような、学校に早く馴染めるとか色々な効果があるというように思っております。
 お話しにありました保護者へのアンケートなど等も、それを裏付けているというように考えています。
 私も時代の趨勢というように議員と同じように考えております。もうそろそろ国は、この40人の定員を見直すべき時期に当然来ているんではないかというふうに思っています。
こういうふうなことから県としても、財政的に非常に厳しい状況でありますけれども、ぜひ県の教育委員会としても市町村の協力をいただきながら、今の少人数学級の形を維持して実施していきたいと考えています。
 また併せて、さっきも申しましたように国の責務でもあると、私は思っています。県としても今までも少人化の実現についての要望を、国のほうにしていますけれども、引き続いてやりたいと思っていますし、私も全国の教育長会議などで、この少人数化について発言をしていきたいと思っています。
 以上です。

○安田議員(追求質問)

 私は平井知事の答弁を聞いたりや、会合での挨拶等を聞くたびに、賢いということは素晴らしいなあというふうに、いつも聞いております。エールを返させていただきたいと思います。
 私は実は、昨年からずっと、この少人数学級の存続についての要望と、私自身の思いを持っておりましたが、いみじくも、「散々泣く」というふうに知事が言っておられました通りの、厳しい今年度の県財政を見まして、ずっと遠慮をして今日に至って参りました。
 このたびの条例改正案が、この議会に上程されたので、私もここは言わせていただく時かなあというふうに思いまして、質問に立たせていただいた次第でございます。
 冒頭に社会情勢のこと等も申し上げましたが、知事と同じように私もトンネルを抜ける力を、子供達に託したいという思いもございますが、いま私達がこの厳しい時代の中で、次の時代を構想する必要もまたございます。どのような社会を作っていくのか、世界を作っていくのか。日本は、鳥取県はどうするのかといった時に、私はやはり学問の力、知識の力、そういうものを大切にしなければいけないんじゃないかということも思うわけでございます。
 昨晩はノーベル賞の受賞式ということで、たいへん賑やかでございましたが、そういう世界もまたオリンピックと同様に大切な社会の宝物ではなかろうかと思い、今回の学力テストの結果もそういう知の財産として、鳥取県のために使っていかなければいけないのではなかろうかなあと、いうふうに基本的に思っております。
 早速、質問に入らせていただきたいと思いますが、私の質問に対しては一般論でお答えをいただいて、既にこの本会議の中で山田議員には、存続しますよというご発言がございました。さらには浜田議員に対しましては、1億円の教育支援費というご発言等もございました。私は何故にここまで我慢してきたんだろうかと、不思議な気持ちがしております。
 厳しい県財政の中で、両方を支援するとなると、4億5千万円というたいへんな金額を要するわけでございますが、教育は大切である、県の責務として支援としていくということで、このお金を来年度出していただけるのかどうなのか、まずもって知事にお尋ねをさせていただきたいと思います。

○平井知事(答弁)

 議員のほうから少人数学級について、かねて持論として持っておられたと。条例改正にあたって発言することとした次第であるというお話しがありました。
 そして知識の力をこれから伸ばしていくことを考えなければならない。確かに昨日のノーベル賞の受賞受諾の演説を聞いていましても、益川博士は非常にユーモラスな方でありますから、英語がしゃべれなくてもノーベル賞がとれるんだということを皆さんに示したような気がします。知性というのは独創性、長いことあれもこれも辛抱して理論を作り出してのことだと思います。そうした人類の素晴らしいものが、きらりと光るものを私達に見せてくれたような気がしました。
 こうした知性を磨いていく、そして学力を高めていく、さらには人間性を高めていく、こうした教育を私達は支えなければならないのであるのだと思います。
 その意味で議員のほうからもご指摘がございましたけれども、どういうふうに地域としてそれに取り組んでいくのか。これから方向転換をしていかなければならないのだと、私は思うんです。
 今回学力テストの議論が沸いて参りました。これについては先の議会で、稲田議員から随分理論的なご質問もありました。
 その色々なやり取りの中で、私どもが強調致しましたのは、ぜひともこの議論というものを一つの起爆剤として、次のステージに繋げたいということを、重ねて主張して参ったわけであります。
 そのためにもアメリカの例だとか外国の例もあるわけですが、地域と教育の関係性というものの結び付けを、もう一度作る必要があるんではないかと思うんです。
 昔の話で言えば、もっと学校の先生と地域の人たちの距離は近かったような気もいたします。今はややもすると、モンスターペアレントという言葉が流行ったりして、その関係性というのは難しくなってきているのかもしれません。
 ただ、そういうことだけではなくて、色々なボランティアだとか、あるいは保護者として家庭での学習に協力するとか、もちろんのことですけれども、学校での生活指導に、子供達の生活指導に親が責任を持って当たるとか、こういった協調的な関係というものを地域で作っていかなければならないのではないか。学校の応援団をきちんと組織しなければならないのではないかと思うわけであります。
 この点につきまして、確か平成16年12月だったと思いますが、私が変わる前に安田議員が代表質問に立たれて、淀江産業高校の質問を随分されたと、記憶しています。
その時に印象にありましたのは、安田議員から淀江産高は周りに応援団がいるんだと、そういう地域の応援団というものをこれからの教育の中に生かしていかなければならない。
 そういうことは新しい白鳳高校の中で担保されるのか。随分質されたのがたいへん印象に残っております。
 そういう関係性を新しいステージに持っていくことができれば、私達の鳥取県だからこそ教育立県ができるのだという、そういうことが実現するのではないかと思っています。その意味で一つは少人数学級というこれまで守ってきたものがあります。
 今は財源は確かに失われつつありますけれども、しかしこれは、地域の汗で頑張ってみようというのが一つでありますし、あともう一つは地域との関係の中で教育を応援するシステムを作っていく。これに大雑把には1億円と申しましたけれども、あれは一つの枠という意味で申し上げたわけであります。
 従来からも高校であれば一つの学校に裁量予算がございまして、この中に地域と連携をしたりしてやっていくような事業の工夫の予算があります。これも既存のものがありますし、それから例えば勉強がんばろーキャンペーンと教育長が申しましたけれども、そうした色々なキャンペーンとか、従来から教育委員会が取り組んでいるようなものもございます。
 こうした既存のものも一部交換をしながら一つの枠として、例えば1億円くらいとか、風呂敷を私どものほうで用意する必要があるのではないかと考えてそうやって申し上げたところでございます。
 具体的な内容はぜひ安田議員のようなこうした教育について、ご造詣の深い色々な方々のご意見をいただいたり、市長さんのご意見をいただいたりして、中身をこれから作っていくべきだと思います。そして解り易い形で県民の皆様に提示をする。
 例えば1億円くらい使ってやりませんか?という提示をすることで、じゃあうちの学校区ではこういうことをやろうと、こういう声が色々と上がってきて鳥取県の教育が、もっと本当の意味で活気付いてきて、子供達が幸せな未来を築ける、こういう姿を実現できればと思っております。
 そういう意味で今のところ1億円に対する風呂敷を用意してみようかというのが現段階でございまして、教育委員会がこの件では執行権がありますので、教育委員会のご意見をしっかり受け止めさせていただいて、取りまとめに向かいたいと考えております。
※(安田議員 少人数学級の存続ということですか?)
 少人数学級については先ほど申し上げましたけれども、色々と財政状況が厳しいところではありますが、最後の最後まで実現の方向性でいきたいと私は考えています。

安田議員(追求質問)

県のそういうやり方というものを、教育を大切にしていただく、この厳しい財政状況の中で減らすんではなくて、増やしていっていただけるということで、確認をさせていただいたわけでございますが、本当に教育長、ようございましたね(笑)。たいへん私も嬉しく思っております。
 そうしますと、もう1点、確認をさせていただきたいと思います。
 今の増額のお話しと、そして少人数学級の存続の話は、9月9日でしたでしょうか、定例記者会見で知事は、この少人数学級の存続については学テを開示する市町村と、しない市町村で区別をするんだと。差をつけて予算配分をするということをおっしゃいました。
 そのことが色々な反応を生んで、今日に至っているわけですが、私は知事は発言を引っ込められたかなあと思っていたんですが、先般の浜田議員の質問に対する翌日の新聞を見ますと、あれ?というふうに疑念を抱きました。そこについて、この場におきまして学力テストの開示の問題とは関係があるのかないのか、そこをもう一点、確認をさせていただきたいと思います。

○平井知事(答弁)

新聞の詳細なところの書き振りは、すみませんが私も把握はしていないんですけれども、もう一度申し上げますと、要は情報を共有しながら、地域で応援団のような、教育を盛り立てていくような、そういうモデル的な取り組みを中心として、色々と支援のメニューを考えてみたいということであります。
 30人学級と、それから学力テストの公表問題、開示問題を直接結び付けて言っているわけではなくて、敢えて教育の情報を共有するということと、その共有という言葉を使いながらお話しを申し上げたと思います。

○安田議員(追求質問)

知事の口から本会議場で学力テストの開示問題と、少人数学級の存続はリンクさせないと、いうふうにご答弁いただいたということでよろしいでしょうか。
 私もそういうことであれば、今夜から枕を高くして安心して寝ることができます。たいへん喜んで今のご答弁を聞かせていただきましたことを、申させていただきたいと思います。
 しかしながら知事、鳥取県の財政がこの先、好転していくのかどうなのか、たいへん疑問でございます。この県職員の給与カットが何年続くのかということも、甚だ心許ないところでございます。
 そういう中で、県が県として親心を出して続けている、あるいは市町村が頑張っているこの制度というものを、ずっと40人から30人にということでやっていくことが、果たしてどうなのか。
 国に働きかけていくことはもちろんでございますが、身の丈に合ったそういう方向というものも考えてもいいんじゃないかということを、私は以前から思っておりました。それは財政難の故です。
 先ほど知事から披露をしていただきましたが、お許しをいただきまして、私の拙い体験を、皆様にもご披露させていただきたいと思います。
 さっき知事からもお話しをいただきましたが、若い頃に小学校で教員をやっていたことがございます。
 一年生を、担任をしたことがあります。その時に一人の子供が、入学式の後、毎日大きいおもらしを続けるわけでございます。
 そうすると担任は、その子の世話でもうずっとかかりきりにならなきゃいけない。その間、他の子供は全部こっちに置いておかなければいけないわけですね。そういう経験を持っております。
 それで一人で少人数がいいのか、あるいは30人が35人、36人になっても、もう一人誰か補助者がいてくれればその方が教員としては助かる点もありはしないだろうかなあということを思っておったわけです。
 それで私は、たいへん子供達に悪い教師でございまして、急に母親が亡くなったものですから、子供達の担任の途中で、急遽こちらに帰って来て罪なことをしておりますので、そういう罪ほろぼしの意味もありますし、また歳とともに、中永教育長も多分同じ思いもあるやと思いますが、子供達の世話をするというより、そばに近寄りたいという思いが年々深まってくるわけでございまして、私のような者でもそういう担任を補助するような役回りができるならば、そういう生活もいいかなあということを夢見るわけでございます。
 周りの何人かに聞いてみましたら、皆さんが教員を経験した方々も退職した方も、ボランティアならいいですよと、お手伝いできますよ、喜んでという方がたいへん多いわけでございまして、私もこれは一考の余地があるように思っているところでございます。
 先ほど来、知事は地域の力ということをおっしゃいましたが、やはり地域の力も必要ですし、国に見直しを求めていく、国の姿も必要です。
 県も、厳しい県財政であっても子供達のために支援をしていく、そういうことも必要でございます。地域もできるところをお手伝いしていく。そういうみんながそれぞれの役割において、子供達のために頑張っていく。
 そういう方向性を、貧しい鳥取県であっても、そこの形で乗り越えられはしないだろうかということを、私なりにこの間ずっと考えてきたわけでございますが、大きなハードルが1点あるわけです。それは私が懸念するのは、多分現場の先生達が、そのことをとても嫌がられるんじゃなかろうかなあという思いが致します。
 中永教育長、私はボランティアとして教室の中に入っていくことができるでしょうか? これは仮定の話でございますが、教育長のご感想をお聞かせ願いたいと思います。

○中永教育長(答弁)

安田議員のほうから、子供達のために自分の力を最大限に生かしていきたいという、心強いご支援をいただきまして、非常にありがたいと思っています。
 先ほどもありましたように学校は、学校の教職員だけでは教育活動ができないという時代になっていると思っています。本当に家庭の方の力とか、地域の方が学校をしっかり支えてくださらないと、学校の色々な難しい問題が解決できないと思っています。
 その中でさっきありましたように、ボランティアのような形で色んな方が様々な形で学校に入ってきてくださって、学校の子供達や、それから教職員を支えてくださるというのは、これからの一つのあり方だと思っています。
 学校支援本部などでも、今お声かけていますけれども、これからはこういった中でぜひ安田先生にもお仕事のご都合のつく段階において、ご都合をつけながら、他のボランティアの皆さんのお力もお借りして、そのようなことに取り組んでいくのも、鳥取県の教育のためにはとっても大事なことではないかなあと考えているところであります。以上です。

○安田議員(追求質問)

            

 私はとても教員としては、今、そういう力はないということは自覚をしております。
 今、国の責務、県の責務、そして市町村、家庭、地域というふうに話しましたが、やはり教室というのは教師が、教員がそこの主役ではなかろうかと思っておりまして、ボランティアとしての支え、補助という形での考えしかありません。
 その方向性で考えているわけでございますが、やはり聖域としての教室という意識、あるいは聖域としての学校という意識が、とても強いんではなかろうかということをこの間の学テの問題で痛感を致しております。
 そこのハードルというのが今、私が述べました問題と、底辺では、底のほうでは一脈通じるものがあって、これが大変根深く、高いものがあるんではなかろうかなあという感想を持っておりますので、教育長にご感想を聞いたわけでございます。
 私は今教育長がおっしゃったような方向でも進まない限り、先生方にも一歩前に進んでいただくことが地域の力にも応えることになりはしないかなあと思うところがあります。
 昨夜でしたでしょうか、たまたまテレビを見ておりましたら、東京杉並区の中学校が採り上げられておりました。大変荒れる学校だったそうですが、先生方が大変頑張られて、自分の教科でもない教科にまで子供達の指導に乗り出され、そして高校生にも参加してもらって、補習とか指導に励まれた。
 その結果、今回のテストの結果は杉並区でトップになったという、そういう報道を見ました。ぜひ私はそういう方向に向かう道筋の一つとして、その周辺の環境整備のささやかなお手伝いにしかならないでしょうけれども、そういうやり方もあるんだということを知事にもお話しをして、今この4億5千万円という金額も維持していくことも大事ですけれども、違うやり方を広く県民の皆様方にもお話し、ご相談し、教育委員会とも相談しながら、あるいは市町村とも相談しながら、少人数学級は続けるんだけれども、そういう力になるような方向性を考えていく。そのことによって鳥取が他の県と違って、身の丈に合った、しかも県民が総参加で子供達を育てていくんだという、新たなる方式が生み出されるよう願っておりますが、知事のご所見がございましたらお聞かせをいただきたいと思います。
 今日は大変嬉しいご答弁を頂戴致しましたので、本当にありがとうございました。どうぞ今後とも、教育に意を尽くした県政を遂行していただきますことを願って質問を終わりたいと思います。

○平井知事(答弁)

安田議員からから過分なお言葉をいただきましたが、やはり教育にかける情熱というものが人を育て、地域を逞しくしていくものであるということをこれからの旨として、県政の基本に据えていきたいと思います。
 また将来ビジョンの中でも人を育てること、これをこれからの新しいテーマにしなければならないと考えたところであります。今、議員のほうからお話しがございましたような色んなアイディアが本当はあるんだと思うんです。
 私は教育というものこそ地域的なものだと思います。国のほうで学習指導要領があって、それで中央集権的に一括できるものでは決してない。最終的には現場のそれぞれの教室の中で教えていくこと。それを個々の子供達がどう受け止めて、それに家庭や地域がどういうふうに関わっていくか。これで教育の本当の成果が出てくるわけであります。
 私は議員がご提案なさったような、教員のOB、OGの方が実際の教育の現場に出て行かれて、お手伝いなさるというのは素晴らしいアイディアだと思いますし、現にそれは外国でも例がたくさんありますし、日本の場合でも本当は総額裁量制の文部科学省の予算の中でそういうOB、OGの教員の方が教えられる場合も、国費の手当ての制度もないわけではありませんので、私自身は推奨するといいますか、当然ながらやるべきだと思います。
 確かにただ現場の中で、色々と難しい部分もあるのかもしれません。そういうところをほどいていかないと本当の意味の子供達の成長には繋がっていかないだろうと思います。
 私が敢えて風呂敷を拡げまして言っておりますのは、これから色んなアイディアが上げられるようになってきて、地域の中から教育に対する提言が生まれてくることが一番期待しているところでありまして、議員のご提案のような様々なアイディアなり、本当の意味での提案がなければいけないと思います。
 そういうようなご提案の中でいずれ30人学級の姿であるとか、あるいは地域における学級編成、カリキュラムの姿が変わってきて、鳥取県は素晴らしい教育をやっているというようになっていく。その頃には4億数千万かかるものもかからなくなってくるような、システムに変わっているかもしれません。
 段々と教育が進化するように、この議論が深まっていけばありがたいと思います。

 

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