安田優子 一般質問
○平井知事(答弁)
○中永教育長(答弁)
安田議員のご質問にお答え申し上げます。
もはや時代の趨勢ともいえる少人数学級についての考え方はどうかというお訊ねでございます。
議員がお話しになりましたように、少人数学級は県の独自の施策ということで、小学校では平成14年度から、中学校では平成15年度から取り組んでいるところであります。
小学校1年生に入る時に、「小1プロブレム」という問題があります。それへの対応とか、中学校1年になった時に小学校から中学校1年に向かっていく段階での「中1ギャップ」というものがありますけれども、こういうことに対応していく意味合いもあり、効果があると思っています。
議員ご指摘のように、効果があると我々も考えておりますので、これは学力の定着にも非常に効果がありますし、それからお話しにありました生徒指導の面でも、あるいは子供達の生活習慣の定着の面でも、あるいは不登校への対応の面でも効果があるというように考えております。
例えば少人数にしますと、先ほどの知事の答弁にもありましたけれども、我々のほうからすれば発言回数が増えて、先生と生徒の色々なコミュニケーションが非常に多くなっていくということ。それを元にして、学習に集中して、みんなの意見を出しやすくなっていくということですとか、それからさっきありましたような、学校に早く馴染めるとか色々な効果があるというように思っております。
お話しにありました保護者へのアンケートなど等も、それを裏付けているというように考えています。
私も時代の趨勢というように議員と同じように考えております。もうそろそろ国は、この40人の定員を見直すべき時期に当然来ているんではないかというふうに思っています。
こういうふうなことから県としても、財政的に非常に厳しい状況でありますけれども、ぜひ県の教育委員会としても市町村の協力をいただきながら、今の少人数学級の形を維持して実施していきたいと考えています。
また併せて、さっきも申しましたように国の責務でもあると、私は思っています。県としても今までも少人化の実現についての要望を、国のほうにしていますけれども、引き続いてやりたいと思っていますし、私も全国の教育長会議などで、この少人数化について発言をしていきたいと思っています。
以上です。
○安田議員(追求質問)
○平井知事(答弁)
議員のほうから少人数学級について、かねて持論として持っておられたと。条例改正にあたって発言することとした次第であるというお話しがありました。
そして知識の力をこれから伸ばしていくことを考えなければならない。確かに昨日のノーベル賞の受賞受諾の演説を聞いていましても、益川博士は非常にユーモラスな方でありますから、英語がしゃべれなくてもノーベル賞がとれるんだということを皆さんに示したような気がします。知性というのは独創性、長いことあれもこれも辛抱して理論を作り出してのことだと思います。そうした人類の素晴らしいものが、きらりと光るものを私達に見せてくれたような気がしました。
こうした知性を磨いていく、そして学力を高めていく、さらには人間性を高めていく、こうした教育を私達は支えなければならないのであるのだと思います。
その意味で議員のほうからもご指摘がございましたけれども、どういうふうに地域としてそれに取り組んでいくのか。これから方向転換をしていかなければならないのだと、私は思うんです。
今回学力テストの議論が沸いて参りました。これについては先の議会で、稲田議員から随分理論的なご質問もありました。
その色々なやり取りの中で、私どもが強調致しましたのは、ぜひともこの議論というものを一つの起爆剤として、次のステージに繋げたいということを、重ねて主張して参ったわけであります。
そのためにもアメリカの例だとか外国の例もあるわけですが、地域と教育の関係性というものの結び付けを、もう一度作る必要があるんではないかと思うんです。
昔の話で言えば、もっと学校の先生と地域の人たちの距離は近かったような気もいたします。今はややもすると、モンスターペアレントという言葉が流行ったりして、その関係性というのは難しくなってきているのかもしれません。
ただ、そういうことだけではなくて、色々なボランティアだとか、あるいは保護者として家庭での学習に協力するとか、もちろんのことですけれども、学校での生活指導に、子供達の生活指導に親が責任を持って当たるとか、こういった協調的な関係というものを地域で作っていかなければならないのではないか。学校の応援団をきちんと組織しなければならないのではないかと思うわけであります。
この点につきまして、確か平成16年12月だったと思いますが、私が変わる前に安田議員が代表質問に立たれて、淀江産業高校の質問を随分されたと、記憶しています。
その時に印象にありましたのは、安田議員から淀江産高は周りに応援団がいるんだと、そういう地域の応援団というものをこれからの教育の中に生かしていかなければならない。
そういうことは新しい白鳳高校の中で担保されるのか。随分質されたのがたいへん印象に残っております。
そういう関係性を新しいステージに持っていくことができれば、私達の鳥取県だからこそ教育立県ができるのだという、そういうことが実現するのではないかと思っています。その意味で一つは少人数学級というこれまで守ってきたものがあります。
今は財源は確かに失われつつありますけれども、しかしこれは、地域の汗で頑張ってみようというのが一つでありますし、あともう一つは地域との関係の中で教育を応援するシステムを作っていく。これに大雑把には1億円と申しましたけれども、あれは一つの枠という意味で申し上げたわけであります。
従来からも高校であれば一つの学校に裁量予算がございまして、この中に地域と連携をしたりしてやっていくような事業の工夫の予算があります。これも既存のものがありますし、それから例えば勉強がんばろーキャンペーンと教育長が申しましたけれども、そうした色々なキャンペーンとか、従来から教育委員会が取り組んでいるようなものもございます。
こうした既存のものも一部交換をしながら一つの枠として、例えば1億円くらいとか、風呂敷を私どものほうで用意する必要があるのではないかと考えてそうやって申し上げたところでございます。
具体的な内容はぜひ安田議員のようなこうした教育について、ご造詣の深い色々な方々のご意見をいただいたり、市長さんのご意見をいただいたりして、中身をこれから作っていくべきだと思います。そして解り易い形で県民の皆様に提示をする。
例えば1億円くらい使ってやりませんか?という提示をすることで、じゃあうちの学校区ではこういうことをやろうと、こういう声が色々と上がってきて鳥取県の教育が、もっと本当の意味で活気付いてきて、子供達が幸せな未来を築ける、こういう姿を実現できればと思っております。
そういう意味で今のところ1億円に対する風呂敷を用意してみようかというのが現段階でございまして、教育委員会がこの件では執行権がありますので、教育委員会のご意見をしっかり受け止めさせていただいて、取りまとめに向かいたいと考えております。
※(安田議員 少人数学級の存続ということですか?)
少人数学級については先ほど申し上げましたけれども、色々と財政状況が厳しいところではありますが、最後の最後まで実現の方向性でいきたいと私は考えています。
○安田議員(追求質問)
県のそういうやり方というものを、教育を大切にしていただく、この厳しい財政状況の中で減らすんではなくて、増やしていっていただけるということで、確認をさせていただいたわけでございますが、本当に教育長、ようございましたね(笑)。たいへん私も嬉しく思っております。
そうしますと、もう1点、確認をさせていただきたいと思います。
今の増額のお話しと、そして少人数学級の存続の話は、9月9日でしたでしょうか、定例記者会見で知事は、この少人数学級の存続については学テを開示する市町村と、しない市町村で区別をするんだと。差をつけて予算配分をするということをおっしゃいました。
そのことが色々な反応を生んで、今日に至っているわけですが、私は知事は発言を引っ込められたかなあと思っていたんですが、先般の浜田議員の質問に対する翌日の新聞を見ますと、あれ?というふうに疑念を抱きました。そこについて、この場におきまして学力テストの開示の問題とは関係があるのかないのか、そこをもう一点、確認をさせていただきたいと思います。
○平井知事(答弁)
新聞の詳細なところの書き振りは、すみませんが私も把握はしていないんですけれども、もう一度申し上げますと、要は情報を共有しながら、地域で応援団のような、教育を盛り立てていくような、そういうモデル的な取り組みを中心として、色々と支援のメニューを考えてみたいということであります。
30人学級と、それから学力テストの公表問題、開示問題を直接結び付けて言っているわけではなくて、敢えて教育の情報を共有するということと、その共有という言葉を使いながらお話しを申し上げたと思います。
○安田議員(追求質問)
知事の口から本会議場で学力テストの開示問題と、少人数学級の存続はリンクさせないと、いうふうにご答弁いただいたということでよろしいでしょうか。
私もそういうことであれば、今夜から枕を高くして安心して寝ることができます。たいへん喜んで今のご答弁を聞かせていただきましたことを、申させていただきたいと思います。
しかしながら知事、鳥取県の財政がこの先、好転していくのかどうなのか、たいへん疑問でございます。この県職員の給与カットが何年続くのかということも、甚だ心許ないところでございます。
そういう中で、県が県として親心を出して続けている、あるいは市町村が頑張っているこの制度というものを、ずっと40人から30人にということでやっていくことが、果たしてどうなのか。
国に働きかけていくことはもちろんでございますが、身の丈に合ったそういう方向というものも考えてもいいんじゃないかということを、私は以前から思っておりました。それは財政難の故です。
先ほど知事から披露をしていただきましたが、お許しをいただきまして、私の拙い体験を、皆様にもご披露させていただきたいと思います。
さっき知事からもお話しをいただきましたが、若い頃に小学校で教員をやっていたことがございます。
一年生を、担任をしたことがあります。その時に一人の子供が、入学式の後、毎日大きいおもらしを続けるわけでございます。
そうすると担任は、その子の世話でもうずっとかかりきりにならなきゃいけない。その間、他の子供は全部こっちに置いておかなければいけないわけですね。そういう経験を持っております。
それで一人で少人数がいいのか、あるいは30人が35人、36人になっても、もう一人誰か補助者がいてくれればその方が教員としては助かる点もありはしないだろうかなあということを思っておったわけです。
それで私は、たいへん子供達に悪い教師でございまして、急に母親が亡くなったものですから、子供達の担任の途中で、急遽こちらに帰って来て罪なことをしておりますので、そういう罪ほろぼしの意味もありますし、また歳とともに、中永教育長も多分同じ思いもあるやと思いますが、子供達の世話をするというより、そばに近寄りたいという思いが年々深まってくるわけでございまして、私のような者でもそういう担任を補助するような役回りができるならば、そういう生活もいいかなあということを夢見るわけでございます。
周りの何人かに聞いてみましたら、皆さんが教員を経験した方々も退職した方も、ボランティアならいいですよと、お手伝いできますよ、喜んでという方がたいへん多いわけでございまして、私もこれは一考の余地があるように思っているところでございます。
先ほど来、知事は地域の力ということをおっしゃいましたが、やはり地域の力も必要ですし、国に見直しを求めていく、国の姿も必要です。
県も、厳しい県財政であっても子供達のために支援をしていく、そういうことも必要でございます。地域もできるところをお手伝いしていく。そういうみんながそれぞれの役割において、子供達のために頑張っていく。
そういう方向性を、貧しい鳥取県であっても、そこの形で乗り越えられはしないだろうかということを、私なりにこの間ずっと考えてきたわけでございますが、大きなハードルが1点あるわけです。それは私が懸念するのは、多分現場の先生達が、そのことをとても嫌がられるんじゃなかろうかなあという思いが致します。
中永教育長、私はボランティアとして教室の中に入っていくことができるでしょうか? これは仮定の話でございますが、教育長のご感想をお聞かせ願いたいと思います。
○中永教育長(答弁)
安田議員のほうから、子供達のために自分の力を最大限に生かしていきたいという、心強いご支援をいただきまして、非常にありがたいと思っています。
先ほどもありましたように学校は、学校の教職員だけでは教育活動ができないという時代になっていると思っています。本当に家庭の方の力とか、地域の方が学校をしっかり支えてくださらないと、学校の色々な難しい問題が解決できないと思っています。
その中でさっきありましたように、ボランティアのような形で色んな方が様々な形で学校に入ってきてくださって、学校の子供達や、それから教職員を支えてくださるというのは、これからの一つのあり方だと思っています。
学校支援本部などでも、今お声かけていますけれども、これからはこういった中でぜひ安田先生にもお仕事のご都合のつく段階において、ご都合をつけながら、他のボランティアの皆さんのお力もお借りして、そのようなことに取り組んでいくのも、鳥取県の教育のためにはとっても大事なことではないかなあと考えているところであります。以上です。
○安田議員(追求質問)
私はとても教員としては、今、そういう力はないということは自覚をしております。
今、国の責務、県の責務、そして市町村、家庭、地域というふうに話しましたが、やはり教室というのは教師が、教員がそこの主役ではなかろうかと思っておりまして、ボランティアとしての支え、補助という形での考えしかありません。
その方向性で考えているわけでございますが、やはり聖域としての教室という意識、あるいは聖域としての学校という意識が、とても強いんではなかろうかということをこの間の学テの問題で痛感を致しております。
そこのハードルというのが今、私が述べました問題と、底辺では、底のほうでは一脈通じるものがあって、これが大変根深く、高いものがあるんではなかろうかなあという感想を持っておりますので、教育長にご感想を聞いたわけでございます。
私は今教育長がおっしゃったような方向でも進まない限り、先生方にも一歩前に進んでいただくことが地域の力にも応えることになりはしないかなあと思うところがあります。
昨夜でしたでしょうか、たまたまテレビを見ておりましたら、東京杉並区の中学校が採り上げられておりました。大変荒れる学校だったそうですが、先生方が大変頑張られて、自分の教科でもない教科にまで子供達の指導に乗り出され、そして高校生にも参加してもらって、補習とか指導に励まれた。
その結果、今回のテストの結果は杉並区でトップになったという、そういう報道を見ました。ぜひ私はそういう方向に向かう道筋の一つとして、その周辺の環境整備のささやかなお手伝いにしかならないでしょうけれども、そういうやり方もあるんだということを知事にもお話しをして、今この4億5千万円という金額も維持していくことも大事ですけれども、違うやり方を広く県民の皆様方にもお話し、ご相談し、教育委員会とも相談しながら、あるいは市町村とも相談しながら、少人数学級は続けるんだけれども、そういう力になるような方向性を考えていく。そのことによって鳥取が他の県と違って、身の丈に合った、しかも県民が総参加で子供達を育てていくんだという、新たなる方式が生み出されるよう願っておりますが、知事のご所見がございましたらお聞かせをいただきたいと思います。
今日は大変嬉しいご答弁を頂戴致しましたので、本当にありがとうございました。どうぞ今後とも、教育に意を尽くした県政を遂行していただきますことを願って質問を終わりたいと思います。
○平井知事(答弁)
安田議員からから過分なお言葉をいただきましたが、やはり教育にかける情熱というものが人を育て、地域を逞しくしていくものであるということをこれからの旨として、県政の基本に据えていきたいと思います。
また将来ビジョンの中でも人を育てること、これをこれからの新しいテーマにしなければならないと考えたところであります。今、議員のほうからお話しがございましたような色んなアイディアが本当はあるんだと思うんです。
私は教育というものこそ地域的なものだと思います。国のほうで学習指導要領があって、それで中央集権的に一括できるものでは決してない。最終的には現場のそれぞれの教室の中で教えていくこと。それを個々の子供達がどう受け止めて、それに家庭や地域がどういうふうに関わっていくか。これで教育の本当の成果が出てくるわけであります。
私は議員がご提案なさったような、教員のOB、OGの方が実際の教育の現場に出て行かれて、お手伝いなさるというのは素晴らしいアイディアだと思いますし、現にそれは外国でも例がたくさんありますし、日本の場合でも本当は総額裁量制の文部科学省の予算の中でそういうOB、OGの教員の方が教えられる場合も、国費の手当ての制度もないわけではありませんので、私自身は推奨するといいますか、当然ながらやるべきだと思います。
確かにただ現場の中で、色々と難しい部分もあるのかもしれません。そういうところをほどいていかないと本当の意味の子供達の成長には繋がっていかないだろうと思います。
私が敢えて風呂敷を拡げまして言っておりますのは、これから色んなアイディアが上げられるようになってきて、地域の中から教育に対する提言が生まれてくることが一番期待しているところでありまして、議員のご提案のような様々なアイディアなり、本当の意味での提案がなければいけないと思います。
そういうようなご提案の中でいずれ30人学級の姿であるとか、あるいは地域における学級編成、カリキュラムの姿が変わってきて、鳥取県は素晴らしい教育をやっているというようになっていく。その頃には4億数千万かかるものもかからなくなってくるような、システムに変わっているかもしれません。
段々と教育が進化するように、この議論が深まっていけばありがたいと思います。