平成21年11月議会 一般質問 

安田優子 一般質問


本県におけるドクターヘリの導入について

         

 
1月定例会にあたり、「本県におけるドクターヘリの導入について」、平井知事に質問致します。
 「空飛ぶ救命救急室」と呼ばれるドクターヘリを日本で初めて導入したのは、岡山県倉敷市の川崎医科大学附属病院でした。1980年代、多発する交通事故による死者を減らす方法を学ぶ為、ドイツの救急ヘリコプターの活動を視察。「搬送から治療へ、病院から現場へ、地上から空中へ」というドクターヘリの利点を目の当たりにし、岡山県北部から病院までの搬送中に亡くなる患者が減り、他の救急患者の救命にも貢献できると、実用化に向けた実験、研究を開始。
 最初は、1981年に一日だけ、1987年に一ヶ月、1992年から翌年にかけ、半年間の運航実験をする中で、有効性が蓄積されていき、1999年10月から2000年3月までの国の試行事業を経て、そのまま4月から本格運航を始めたということであります。
 以来、今日まで関係機関との様々な調整を経て障害をクリアし、地域の人達の信頼を得て活躍しております。
 また、先般テレビでも紹介され、多くの人々に感銘を与えた日本医科大学千葉北総病院救命救急センター長の益子邦洋教授も、ドクターヘリの普及に大きな貢献をされております。
 益子先生は、もともと東京、千駄木にある日本医科大学附属病院で救命救急の担当医をしていた1985年に、アメリカ ミネソタ州のセンタトメリー病院に留学、ドクターヘリを知ったといいます。
 その后、ロンドンやパリの救命救急医療の進歩に衝撃を受けた先生は、自らの医療現場においても、適切な初期治療をしていれば亡くならずにすんだ患者がいることを経験し、関東地区の救急医の協力を得て調査した結果、外傷で亡くなった人の8人に1人が該当することが判明。
 次いで、2000年から2001年にかけて、全国の救急医からレポートを集め、分析したところ、外傷で亡くなった人のうち、30%が適切な初期治療をしていれば亡くならずにすんだ患者だったという結果が出ました。さらに、亡くなった人の30%は、病院への搬送時間が30分以上かかっていたことも判明。
 救急の処置判断の大切さと、搬送時間の短縮の必要性、加えて、医師の専門性の確保が課題となり、体制を整えた上で、我が国では4番目となるドクターヘリの導入しを果たしたということです。
 一方、国は、こうした医療関係者からの機運の高まりのなかで、1999年、内閣府内閣審議室に「ドクターヘリ調査検討委員会」を設置するとともに、同年6月から、東海大学附属病院と、川崎医大附属病院の2ヵ所で試行事業を開始しました。
 2つの病院、183名を対象とした試行調査の結果、ドクターヘリを使用すれば、死亡者は半減、障害が残らずに社会復帰できた者は2倍以上と報告されました。
 さらにその后、2006年の交通事故による患者におけるドクターヘリの治療効果と経済効果に関する調査によれば、入院日数、入院費用とも、ほぼ半減との結果をみております。
 こうしてドクターヘリの優位性と効果が実証される一方で、導入の障壁となっていたのは、ヘリコプターの導入費、並びにその管理運営費が高額であるという点でありました。
 2007年6月、国は、こうした点にも配慮して、「救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法」を制定したのであります。
 法は、その目的を、国民が健康で、安心して暮らせるような社会を実現するには、良質かつ適切な救急医療体制を確保しなければならないとし、救急医療用ヘリコプターの全国的確保の必要と、その為の、特別措置を講じることとしています。
 即ち、国は、都道府県がドクターヘリを導入する病院に対して補助する費用1億7千万円の2分の1を都道府県に補助するというものであります。
 法施行以降、各都道府県で導入に向けた計画が進んでおり、隣県島根県においても、溝口知事が先の9月議会で、2011年度の導入を表明しておられます。
 ちなみに島根県では、医療関係者等からなる導入活用検討会(座長は県の病院局長)が設置されており、その意見も踏まえての判断であり、ヘリコプターは運航会社とのリース契約、調査費や格納庫、給油施設等の施設整備費8億円は、来年度国から配分される「地域医療再生臨時特例交付金」50億円を財源とするということであります。
現在、16道府県、18医療機関に配備、運用されているドクターヘリは、今后一段と増えることが予想される流れのなかで、本県においても、その計画案が示されております。
 ○ 兵庫県・京都府と共同して、関西広域連合の事業として
 ○ 兵庫県豊岡市の公立豊岡病院組合立豊岡病院・救命救急センター
  (救急医8名)を拠点とする。
というもので、豊岡から遠い本県西部圏域に対しては、県の独自計画で、
 ○  鳥取空港に常駐する県の消防防災ヘリで、米子市の鳥取大学医学部附属病院救命   救急センターの医師を迎えに行き、同乗の上、現場に向かう。
 というものでありますが、私はここで、ドクターヘリの定義について共通認識をしておきたいと思います。
 「救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法」は、第2条において、その定義を

1.救急医療に必要な機器を整備し、及び医薬品を搭載していること。
2.救急医療に係る高度の医療を提供している病院の施設として、その敷地内その他  の当該病院の医師が直ちに搭乗することのできる場所に配備されていること。
としています。
 また、日本航空医療学会は、次のように定義をしています。

1.重症救急疾患に対応できる医療機器を装備し、医薬品を搭載した救急専用ヘリの  使用
2.救命救急センター等高度医療が提供できる医療機関の施設内または、その近くに  配備されていること。
3.出動要請がある場合は、当該病院の救急診療に精通した医師および看護師等が原  則として3〜5分以内に離陸し、患者発生現場に出動できる体制にあること。
4.現場および搬送中に適切な処置、治療をおこない、その患者に適した高度医療機  関に搬送できること。     であります。
つまり、ドクターヘリとは、救急装備をした専用ヘリを常時病院に待機させて、消防等から出動要請を受けると、直ちに専門の救急医と看護師が乗って現場に行き、その場で救急医療を行うシステムであり、救急医療施設の一部であります。その結果、病院に搬送する必要のないケースもある位で、あくまでも、患者の搬送は、二義的任務であり、本来の任務は、一刻も早く医師が患者のもとに飛んでいき、所要の治療や処置をすることであります。
それ故、現場までの所要時間については、早ければ早い程、患者の死亡率や、後遺症の残る率も低くなる訳で、時速200qのヘリコプターの稼動は、距離にして50〜70q、時間では15〜20分までが限界といわれております。

設置計画では、100q圏内を想定していても実際には、遠い所からは出動要請自体がかからない、また近い所からの要請が多くて、遠隔地からの要請は断らざるを得ないというのが実態のようでありますが、こうしたドクターヘリの定義原則や実態について、知事はどのように受け止められますでしょうか。そして、中部・西部への対策は現計画で万全であるとお考えでしょうか、お聞かせ下さい。

また、本県の救急医療は、医療を担う病院、搬送に努力する消防とこれを維持している市町村、また海難救助を担う海上保安部もあって今日の体制が成り立っております。そうした現場の努力を踏まえ、課題解決の為のドクターヘリ導入計画であったのか、計画策定までのプロセスも併せて、平井知事の答弁を求めるものであります。

 現計画とは別に、基本的・将来的構想としては、私は、本県がこれ迄構築してきた緊急医療体制、さらに、今后、推進設備が求められるこの体制のなかでのドクターヘリ導入を考えるならば、鳥大医学部附属病院救命救急センターと県立中央病院救命救急センターの2ヵ所に配備することが妥当であり、県民の安心安全の為、必要であると考えますが、知事はどのようにお考えかお尋ねします。


○平井知事(答弁)

         

 

安田議員のご質問にお答えを申し上げます。

 ドクターヘリについて三点、お尋ねをいただきました。まず、第一点目としてはドクターヘリの定義や実態についてどのように受けとめているのか。また、中部、西部へ対策は万全なのかというお尋ねでございます。
 ドクターヘリについての定義は今まさに議員が仰った通りであろうかと思います。ひとつは法律上の定義でありまして、これは国の支援措置にも絡むものであります。コアとなるのは、結局コンセプトとしては病院の中にヘリコプターを置いておきまして、すぐに飛んで出かけていくと。そちらの方で救急救命処置も行い、搬送中もケアを行うことができるシステムを整えて短時間でやろうという事であります。これに付随して今、法律上の定義でありますとか医療関係者の定義のご指摘があったわけであります。
私どもが今目指しておりますドクターヘリなどの関係でございますが、これまでご相談を議会に申し上げてきましたのは、ふたつのものを併用する形で県内の医療需要に応えられないだろうか、特に救える命を救えるようにできないだろうか、という観点であります。ひとつはそういう定義に沿ったドクターヘリでございまして、これは兵庫県の豊岡を基地としましてそこにお医者さんがいると。大体10名弱のチームを組んでいこうと。ここから飛びまして治療に当たり病院に搬送する、そういう形態を考えるのがひとつであります。
 ただ、この計画について、これまでもずっと話し合いを重ねてきたわけでありますけども、やはり、ひとつは中部西部、特に西部でありますが中心といたしまして、時間との関係が我々としても不足を感じるところがございます。
 そういう観点で、もうひとつヘリコプターを併用してはどうだろうか。我々は防災ヘリを持っているわけであります。今でも年間数回、医師が乗って防災ヘリを飛ばす事もございます。こういう形態をさらに一歩前進をさせてやってはどうかというのが、もうひとつ併用型を考えようという事であります。これは、私も直接聞いたこともありますが、お医者さん達のお話を伺いました。ドクターヘリは理想形としてひとつあるのですけれども、防災ヘリも結構使えるということも率直に仰ってました。
 それは機体の中は広いんですね。ですから患者を搬送して移動するのに使いやすい、ヘリコプターの中でも患者と付き合いやすい様であります。ドクターヘリ自体はとても小さいもでありますから結構窮屈さもあって、もしかすると防災ヘリの方が使いやすいという事があると話がありました。ただ防災ヘリには搭載されている器具が限られてますので、ドクターヘリ並みの器具を搭載をし、そしてそこに医師の方にも搭乗していただく形で併用することはできないだろうか。こういう可能性を探りながら我々が現在議員の皆様にご相談申し上げているのは、医師搭乗型の防災ヘリコプターと、いわゆるドクターヘリを併用する形で県内の医師、医療需要に応えてはどうかということであります。定義との関係からいきますと、医師搭乗型ヘリコプターの方は定義上ドクターヘリとはならないと思います。
 何が核心かということでありますけども、ひとつは現場に早く着いて救命処置を早く始めるという事、さらに、今議員の方からはその場で終わってしまうというお話しもございましたけども、通常予想しておりますのは重篤なケースでありますので、そこでは手当てで終わらずにさらに病院の方へ搬送するのを想定されるのが通常だと思います。これもちゃんとした機器、例えば患者を看視装置ですとか吸引器ですとか、そうした様々な機器を積んで、一定のケアをしながら大きな病院へ運び込むという形態を考えていまして、コアのところはヘリコプターとして機能し得るのではないかと思います。
 非常に近いところであれば、これは救急車が有効でございまして、特に中山間地域での活用が多いわけであります。そういうことで県外でも100kmを想定した運用をしている和歌山県などの例もないわけではございません。これで十分かどうか、中西部などで特に大丈夫なのかというお話しでありますが、確かに西部はプロパードクターヘリの豊岡からだと距離的には遠いところがあります。飛んでいくケースも想定され得るわけですが、もっと近いところから飛び出して鳥取大学附属病院で医師と看護士に乗っていただいて行くのが現実的でこれを併用しようと考えています。
 当然ながらこれが完成形ではないと思いますが。当面考え得る、短期的・中期的に費用対効果的にも最善の案ではないかと今は思っています。
 ドクターヘリも直接導入することは可能でありますが、例えば今導入し得るヘリポートを備えた病院が何処にあるかと言いますと東部の県立中央と厚生病院、この2病院だけであります。
 そこに医療スタッフがいるのかという事ですが、先ほど川崎医大の話がありましたが、ステレオタイプとしては10名ほどの医療スタッフが救急専門としていないといけないわけですが、例えば中央病院ではおひとりで全部やっていただいています。
 ですから今々はちょっと無理だと思います。ですから長期的な将来を考えてこのままで良いかという考えは当然あると思います。しかし、現在の我々のキャパシティや整備の状況のことを考えますと、現実的に早くに対応するためにはこれは選択肢としては考えられるのではないかとの思いであります。
 次に、本県の救急医療は医療を担う病院でありますとか消防や海上保安庁などとも連携しながら体制ができていく、そういう現場との関係も含めてどういうプロセスでドクターヘリの導入計画を進めてきたのかという事であります。
 これについての詳細は岡崎福祉保健部次長からお答えいただきたいと思いますが、私の記憶しているところでは、この議場でも何度か議論したと思いますが、特に平成19年に横山県議が代表質問されたときに、ドクターヘリの問題提起をされていました。その他にもヘリコプターの活用とか議論はございました。
 それから、議員の方から紹介がありました新しい法律ができまして、1億7千万円の事業費に対して8千5百万円を国が助成をすると。確かこれは公明党さんが原案を出されまして国会で制定されまして、導入されたという経緯がありました。ですから全国でドクターヘリに対して関心が高まってきたわけであります。
 本県としてもその導入を考えなければならないとの思いでした。やはり救える命があるのなら助けたいという事でありますので、それで検討させていただく俎上でですね、隣県の兵庫県が京都とか場合によっては鳥取にも是非入ってもらって、高額になりますので一緒に運用してはどうかというアイデアの相談がありました。それで協議に入っていったという事であります。
 導入した県の中には大阪府の様な府県がございますが、そこでは年の出動回数が60件余りであります。これはおそらく大変なことであると思います。当県でもまともに導入をして単県で持ったとしまして100件いくかどうかであります。コストパフォーマンスの事を考えますと200件とか300件とかそういう出動件数が想定される中で導入するというのがあるかもしれません。そういう全国的な相場感がありまして、どこもこれで悩んでいるわけであります。
 兵庫県の北部だとか、京都府の北部も同じように人口集積が高いわけではありませんので、そこだけでドクターヘリが必要かというと、それぞれ難しいと。ですから身を寄せ合ってやっていこうかという事から始まったわけですが、本県の場合はそれでも西部の方はやると3県の連合体では考えようとしておりますけども、我々の良心としては、むしろそこは、別の手当ても併用しながらやるのが良いのではないかと考えたところであります。
 次に三点目と致しまして、今後、推進整備が求められる体制の中でドクターヘリを導入を考えるのであれば、鳥取大学医学部附属病院の救命救急センター、また県立中央病院の救急救命センターの2ヶ所に配備することが妥当ではないか、というお話がございました。これはひとつのアイデアとして我々も当然考えたところであります。ただ、行き当たりましたのは、1ヶ所当たり県負担で8千5百万、合計1億7千万、さらに、初期投資としてヘリコプター基地を造らないといけませんし、中央病院であればさらに10名ぐらいの救命救急スタッフを用意をしなければならない、それは非常にハードルの高い状況だと思います。ですから今回、こうしたアイデアを持ち出してきたわけであります。
 ただ将来ずっと、例えば30年、50年先、もっともっとドクターヘリの運用が一般化してきてですね、今はその程度の回数かもしれませんが、コストパフォーマンスを考えて通常の医療形態になってくる時代がくるかもしれません。また、我々としてはできれば中央病院の救命救急センターも拡充していく事は必要ではないかと思ってますし、そうした思いも含めていけば、いずれは今提案しているものとは別の新しい形態も出てくる可能性は否定するわけではありません。将来的なあり方などは今後、関係機関で協議をしながら考えをまとめていくべきではないかと思っています。


補足答弁(岡崎隆司・福祉保健部次長)

 補足答弁を申し上げます。救急医療体制を構築するためには、患者をいち早く搬送することと併せて、一刻も早く適切な治療が施されるようにすることが極めて重要であるという事は、先ほど議員も仰るとおりであります。そのために、これらは医療関係者のみならず、搬送、救助を担う消防関係者等の共通の認識でありまして協力が必要であります。このために救急車の高規格化を始め救急救命士の配置等がこれまで順次整備されまして、早期の救命措置が図られたところです。
 先ほど議員がお配りの資料の中で、本県は30分となっております。全国平均が32分ですので相当早い搬送時間となっております。こうした現場関係者の御尽力によりまして、本県内におきましては、他県に見られる様な、いわゆるたらい回し等ではなく、現在のところ比較的、円滑に救命救急体制が維持できている状況であると認識しております。これに加えまして、県民の安心感を増すためにも、この救急体制を拡充して重層的なセーブネットを強化するということは、我々と現場関係者とが一緒に解決していかなければならない課題であることは、皆様方と共通の認識であります。その為にドクターヘリの導入を計画したという事であります。
 このドクターヘリの導入につきましては、ヘリコプターの特別措置法がありますが、これによりまして保健医療計画への記載が位置付けられております。
 本県におきましてもこの鳥取県保健医療計画の策定に際しまして、平成18年度以降、平成18年10月から20年1月までの間に医療関係者等との検討会を開催しまして、この20年3月に、鳥取県保健医療計画の中にこの様に位置付けております。「救急医療体制を強化するため共同運行を含むドクターヘリの導入を検討する。」という事について記述したところであります。
 また、去る11月に策定しました地域医療再生計画においても、ヘリコプターを活用した救急体制を盛り込むことについて医療関係者等の意見をお聞きしました。この計画の中におきましても、救急医療体制を充実するためにヘリコプターを活用すること、という事で記述しております。
 今まで、この様に活用を検討しておりましたが、実際にドクターヘリを導入するにあたりましては、消防等の現場関係者等の協力が必要であることから、去る10月22日に関係者が一堂に会しました調整会議を開催しまして説明いたしました。この調整会議では、話が急であったこともありまして、中には厳しいご意見もいただきましたが、先日確認させていただきましたら、導入された場合には協力いたしますという返事もいただいています。
 またこの導入にあたりましては、県議会の常任委員会等にもご説明させていただきまして、ご意見を賜っているところであります。今後とも本県の救急医療体制を充実させるために現場関係者も適時に意見交換をして十分な調整を図っていきたいと思っております。以上です。



○安田議員(追求質問)




 

 最初に、今のご説明を踏まえまして、中部と西部に向けた防災ヘリを活用した追加の県の計画についてお伺いをしたいと思います。
 先ほど知事も繰り返し言われたのですが、ヘリは救える命があるのに救えないでいる現状に対する手当てであると。今現在、救急車がたいへん頑張ってくれておりまして、昨年の西部の救急車は7分09秒で現場に届いています。中部は8分36秒で現場に到着しております。そして、そこで救急救命士が応急処置をしてくれております。
 これがドクターヘリで現場に到着をして、救急救命士も良いのですが、さらに医師が手当てをすることによって、今は西部の場合、手当てをした患者さんの内、1割が回復の効果を見ているという事だそうですが、1割ではなく2割でも3割でも救える命があるのなら救おうというのが、私はドクターヘリの導入計画の基であろうと認識をしております。今の体制以上の体制が出来るのか。
 鳥取空港の防災ヘリが米子港へ行って、医大の先生を乗せて現場へ行くのだそうです。そうしますと、お手元の地図を見ていただければお分かりと思いますが、鳥取から医大まで行くのに24分、それに初動に7分掛かるそうです。そこで30分、それで米子港で医者を載せまして、例えば日南病院まで行くとしますと、それに9分10分が掛かるわけであります。日南病院はヘリポートが設置してあります。しかしながら、米子の救命救急センターにはヘリポートすらも設置してないのであります。
 それで私はひとつご指摘をしておきたいのですが、本県、美保基地には第8管区海上保安部、福井から島根までを管轄する美保航空隊が存在しています。海猿で有名な救急士を8名擁し、50名の職員に駐屯してもらっております。
 先日も日吉津で海難事故がございましたが、こういう方々を救助して何処に搬送するのかというと、ヘリポートがない病院には搬送できないということでございました。島根県の出雲にある中央病院とか県の病院に対してはヘリポートが出来上がっているのでそちらの方を使うと。
 これで良いのでしょうか皆さん。折角、海上保安部を本県に駐屯させてくださっている。しかるに、ごく近くにある病院にヘリコプターをとめるヘリポートすらもない、この現状の中での西部の体制への手当てという事でありますが、私はこの十分ではない体制、そしてヘリポートもない体制、これに対して西部や中部の市町村は一所懸命に金を出して消防も維持してくれております。私はびっくりしたのですが、59億円の西部広域の21年度予算の内、半分が消防の費用です。国や県は殆どお金を出していません。市町村が出しています。そして頑張ってくれている。市町村のご意見が聞いてあるのか、ご了解がいただけているのか、お尋ねをしたいと思います。


○平井知事(答弁)

 重ねてのドクターヘリについてのお尋ねをいただきました。まず、今以上の体制ができるのかという事でありますが、それをネットワークとして考えたいと、豊岡だけではなく鳥取起点のものも作りまして、アクセスを良くしたい、またその装備を上げることで救命率を高めたいというのが考え方であります。そして、議員の方から更にご指摘がございましたのは、鳥取大学の救命救急センターにはヘリポートがないという事であります。
 現状は米子港という事で、そんなに遠いところではございませんが、車で5分ほどでございますけども、鳥大の中にないと。我々も医療再生計画を作っているところでありますけども、同じ問題意識をもっていまして、先方とも協議を実はいたしております。ですから我々としても応援をしたい。
 ただ先方に色々な事情があるそうです。それはスペースの問題があるようでございまして、あのあたりは第1種住居地域だとか、特に湊山公園は風致地区となっているそうです。ご存知なのかもしれませんが、そういうことで色々な規制が掛かってまして、そう簡単ではないと。あと敷地自体が山と迫ったところにありますので、今々ここが手当てできますという状況では医大の方もないようであります。
 我々としてはメニュー上へリポート建設もやろうじゃないかと、やるんだったら応援しますというメニューを示しながら今相談はしています。ただ現実にはそこまで協議が整っていないというのが現状であります。もちろんそれができましたら更にアクセスも向上すると思いますし、今仰った海上保安庁のお話も、解決が進むだろうと思います。
 お医者さん達も、皆様もご想像していただければと思いますが、救える命は救いたいからこそ医者になっているわけでありますので、皆思いは同じであります。あとはいろんな隘路をどうやって解いていくか、これだと思いますので、うまく噛み合わせていけるように全力を挙げていきたいと思っております。
 それから中西部の消防と市町村の話がきちんとできてるかどうか、これについては福祉保健部の岡崎次長の方からお話しをさせていただきたいと思います。


補足答弁(岡崎隆司・福祉保健部次長)

 中西部の市町村、消防とのお話の件ですが、先ほども答弁申し上げましたけど、市町村に対しましては実際のところ皆と集まって話した事は現在のところありません。なぜならば、それは消防の方の救急救命体制は消防の所管でありましたので、現在ドクターヘリの運行可能性を踏まえまして、10月にやっと調整ができたというところでありますので、10月にまずは、消防関係、海上保安庁関係にお話しをさせていただいたという次第であります。
 以上であります。


安田議員(追求質問)

 なぜ中西部の市町村かと言うと、やはり東部との格差と言う点で、現実どうしても手当てが薄れるという事ですから、これは了解を得られないと黙っては無理だろうと思っております。そこに対する手当てが今日までなされてないという事は、遺憾に思うところです。
 それから、医大のヘリポートの事ですが、今々が本当は一番良い機会だったわけですね。救急救命センターが今、移転新築をなされようとしていまして、私がドクターヘリの事を聞いて、9月議会だったでしょうか、環境生活部長だか、林部長だかに早く行って話をしてと言ったのですが、もうその時は設計上無理であると、もう間に合わないという話を聞きました。
 それでこれから先の事なのですが、私はこのドクターヘリの導入は、本県の救急医療をどうアップしていくのかという面で捉えておりますので、やはり中央病院の専門医のお医者さんが1人しかいらっしゃらない。これは医大から行っていただくのが一番近道なわけです。それからセンターの方も八木先生が問題提起をしてお辞めになって今新しい体制で再生を図ろうとされている。15名の定員の内、10名しかいらっしゃらないで今後この増員を頑張られないといけないわけです。そして将来的には、今の病棟から移転新築される計画があると伺っております。
 こういう諸々の時期ですので、私は、医大に対して県民は命綱であるという思いを持っていますし、中央病院とのふたつに高度センターあるわけですけれども、やはり医大が本県の中枢であろうと、そしてそこに、ある程度、今まで以上に手を突っ込んで、米子市さんとも協力してですね、何らかの手を打ってヘリポートは確保していただきたい、是非確保してきただきたい。然るにですね、このヘリポートの事は、50億円の基金にも絡むのですが、地域医療再生計画には載っていないわけですが、これは知事、追加とか変更とかは大丈夫なのでしょうか。そのことを1点確認をしておきたいと思います。
 それから、西部の事をお話ししたのですが、東部についても私は万全であると思ってはおりません。これまでは中部まで100kmという圏内と言われておりましたが、70kmで線を引くならば、青谷のあたりが限界になります。それで対象の地域が非常に狭くなるという事と、豊岡からお医者さんがヘリに乗って現場に来られるのだけれども、その患者さんを豊岡の病院に運ぶと、陸路にしてもJRにしても、便が悪いので家族が後々困るわけですね。それで鳥取市内の病院に患者は搬送するのだと、こういう計画であると伺いました。
 そうすると救急医療の細切れが起こるんですね。現場に到着してから手術の後までの一貫したデータというものが、鳥取県の中に蓄積されていかない。それは私は非常に問題ではないかと思っています。
 この事について三点お願いします。


○平井知事(答弁)

 まず、市町村との調整の事でありますけども、中西部の市町村長とよく共通理解を得たいと思います。私は、これは今以上によくする話ですし、県の方で持ち出しをしてでもという気持ちでございますので、理解を得ながら進めてまいりたいと思います。
 それから、二点目のヘリポートの確保でありますけれども、先ほど申しましたように、おそらく私は安田議員と全く同じ気持ちでありまして、ここにヘリポートが必要だろうと考えておりますが、先方の方も色々と止むを得ない事情がありまして、まだ協議がまとまっていないと。
 この点について、医療再生計画に取り込めるかという事でありますが、私達は実は、座敷を用意してあります。ですから、いつでも入れるようになってございます。ただこれは、もちろん国との協議が今後具体的に出てくると思いますし、採択は今からでありますし、採択された上でさらに計画を具体化していく段階で、この部分はヘリポート、この部分は鳥取大学附属病院の救急センターの改装ですとかですね、そういう風に色分けしていくと、今後なっていくと思います。ですから、今段階でヘリポートを造るお金がないという状態ではないとご理解していただいて結構でございます。
 それから、豊岡ではなくて、鳥取市内の病院に東部の人たちを運ぶという事でございますけども、これについては、他のドクターヘリも同じ様なことでありまして、要は、乗る人もお医者さんで、受取る方も実際それぞれの病院も専門のお医者さんであります。救命救急の考え方もちゃんとご理解をしている方々であります。
 ドクターヘリの運用として全国的に行われていますのは、まずそこに行って、救命救急の資格を持った人が現場でもまず初期治療を行うわけでありますが、その後は、濃密なケアを行うことができる病院に引き継ぐと。その引き継ぐべき病院は、飛んだところの病院では必ずしもないと、全国的にそういうやり方をいたしております。
 結局ですね、後々の家族の問題もありますし、その後の治療としてどういう治療形態が適切かというところもありますので、降ろす病院についてはですね、それはそれで別途考えて降ろすというのがやり方でございます。そういう意味で患者の皆様とかご家族の皆様にとっても、負担のない形で東部の病院を活用しようということを、我々は豊岡の皆さんとか関係者と今協議をしているところであります。
 実は、私達が心配したのですが、逆に豊岡の医療スタッフの皆さんも患者本位で考えるのが本来だと、だからむしろこれは東部の病院に降ろすべきだという風に先方も考えておられます。それが医者の世界の良心と言いますかモラルのお話なんだろうと思います。
 これは豊岡側にとっては、むしろ医療費を取れなくなりますので、単にヘリコプターを飛ばすだけで、後々の診療報酬が入りませんから、彼等としては損な話ではありますけども、しかし、救うべき命を救うという観点でやってますので、それはそうしてもらったら結構だと、むしろそうすべきだと、いうところで今協議を進めているところであります。


○安田議員(追求質問)

 私は、この機会に是非とも聞いておきたいと思いますが、かねがね、このドクターヘリの3県共同運行を認めると、関西広域連合への加入というものに繋がっていくのだ、という懸念が語られ続けてまいりました。そういう風に私達は、企画部なり健康政策課から説明を受けております。然るに知事は、この加入問題とドクターヘリは別個の問題であると。ドクターヘリの計画は4月にスタートしても連合への加入は別であるという事もまた、この議場で語られております。そこの真意の程をお聞かせ願いたいことが一点と。
 それから、一応、経費として1千万から1千5百万と説明されておりますが、連合としての運営となりますと、さらに総務費とか事業費とかが加算されてまいりますが、このあたりを含めて、どの程度がもしものときには必要になるのか、お聞かせください。

平井知事(答弁)

 広域連合との関係についてお尋ねをいただきました。これは、3県で協議をし始めたときには広域連合の構想がまだきちんと始まっていません。そのときから、連携の話はさせていただいていました。その後、関西の中での広域連合構想というのが急浮上してきてるわけであります。
 広域連合自体は、事務を共通化しまして皆でやった方が効率的なことがありますから、それを連携していくもの。それを束ねてやっていく組織として想定をされているわけであります。この広域連合というものは自治体でありますので、最終的には議会で議決をしていただき、それではじめて新しい自治体に管理していくとなるわけでありますが、その際はすべての仕事で連携するわけではございませんで、加入をする仕事を選択をして入っていく事ができる仕組みになっているわけであります。
 その際に、この広域連合の事務の中で、ドクターヘリは有力な連携事務の材料になる話でございます。これは関西全体で考えていただければ、他の地域もそうなんですけれども、広域連合の方でもドクターヘリも連携事務として連合の中で取り扱われる事務として想定されているわけであります。これが現実であります。
 ですから、いずれ広域連合の事務として構成してお話しをしていくべき筋合いになってくるのだろうと思います。ただこれは、論理必然に広域連合とドクターヘリとの連携が一致をして動くわけではありません。
 現実問題、おそらく先般も議会の皆様で兵庫県知事とかと対話をする機会があったり、皆様も今調査をされたりしておられると思いますけども、それぞれの県で考え方が色々ございまして、一律広域連合をスタートさせます、というコンセンサスを得られている状況ではありません。
 ただ逆に救える命は救いたいという思いがありますから、このドクターヘリの問題は、ともかくスタートはするべきときにはするだろうと、片方では医療関係者を中心に、これはこれで別個走っていく可能性は十分に有るというのは私の認識であります。
 したがいまして、広域連合とドクターヘリとは、別々の課題として考えられるわけであります。ただ、いずれ広域連合の方が成熟した議論となっていく段階で、ドクターヘリについてどうしようかという議論は当然出てくるという風にご理解をいただくべきかなと正直に思います。今はまだ、それぞれが動いている段階ですので、現状を正直に申し上げれば、そういうご理解だろうかと思います。


○安田議員(追求質問)

 知事、確認しますが、4月からドクターヘリの3県共同運行をスタートさせておいて連合には加入をしないと、止めたと、いうケースもあり得るという事でしょうか。一点確認をします。
 私は色々とドクターヘリそのものについて勉強をさせていただく中で、鳥取県への導入というのは、やはり今の段階では果たして適切であろうかという事をどうしても疑問に思ってしまいます。食糧と同じで、やはり苦労をしてでも自前の救急医療体制を積み重ね努力をしていくことの方が大切なのではなかろうかと思うに至っております。こういう意見がある事も承知をしておいていただきたい。
 関西連合の問題につきましては、山根先生を委員長とする特別委員会が設置されておりますので、こちらに委ねなければいけませんけど、ドクターヘリそのものについても、まだ鳥取県内では民間の機運というものも高まっていない。医大はどうでしょうか。私は、現実はちょっと疑問を抱いておりまして、色々な形で働きかけを、これから協議をしていっていただきたいと切に願っています。
 島根県では、ドクターヘリネットワークの國松孝次理事長を呼んで民間の団体が講演会を催されたと聞いております。鳥取県でもそういう事を催したりして、もう少し機運を盛り上げて、医療の世界の流れの中で鳥取県が取り残されないような体制を、私は執っていただきたい。私はこのドクターヘリは医療革命ではないかと思っております。
 以上です。


○平井知事(答弁)

 まず、一点目としまして、広域連合とドクターヘリの連携事業の関係について改めてお尋ねがありました。法律論で申し上げれば、ドクターヘリに加入するかどうかという事は最初にくるかもしれません。例えば4月の段階でまずその判断があるのかもしれません。これと、その後に追いかけてくるかもしれない広域連合の加入というのは法的には切れてます。ですから別々の判断をする事は法的には可能であります。
 ただその際に、今までも想定した議論はございますので、関係地域の間では、広域連合の中にカウントしたいという気持ちが各県々の中にございますけど、そこで議会の方で議決をいただいて、広域連合には、例えばヘリコプターについては入らないと選択することは法的には当然可能でありますので、そういう意味でそこは切れているという事であります。
 それから、二点目の方でありますけど、現実問題として、もっと医療について考える機運の中からこのドクターヘリ問題を議論すべきではないかというのは仰るとおりだと思います。今までは色々なセクターが入り込んでましたし正直ふわふわした状態が続いてました。それから県内でも、実は鳥取大学附属病院とは結構濃密な議論をこれまでやりとりしてます。まだ外で我々が、こういうスキームで考えましょうとはっきり言えない状況が続いてましたので、今こういうパッケージの様な提案はどうですかという議論はしやすくなったと思いますから、ドクターヘリの効用と言いますか、遠い将来を含めて医療体制のあり方ですとか、先ほどご議論いただいたヘリポートの問題でありますとか、そういう議論をする場を今後当初予算に向けて県民の間でも持っていただける様、考えていく必要があるだろうと思っています。いずれにせよ、救える命は救いたいというのは万人が共通に持っているところであると思いますし、我々もそのつもりで関係機関と協議をしたりしてなるべく良い案を作ろうとやってきたので、今後ともご指導賜わりたいと思います。

 

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