平成22年2月議会 一般質問 

安田優子 一般質問

()()絣、浜綿(伯州綿)について



 私は、「弓浜絣産地維持緊急対策事業」が始まった、平成19年9月議会において、「弓浜絣の伝承普及について」質問し、郷土の伝統的工芸品としての弓浜絣と、その原材料としての浜綿(正式には伯州綿)の歴史的魅力を語らせていただくとともに、その普及を訴えました。
 以来、2年半が経過しましたが、この間に時代の大きな変化がありました。世界同時不況や地球規模での環境悪化は、産業構造の転換のみならず、人々の日常生活のあり方や価値観をも変えつつあります。
 今や、オーガニックコットンがブームとなる時代となりました。洋綿よりも和綿、和綿の中でも、長い歴史と品質の確かさで市場における伯州綿への評価は大変高いものがあります。
 こうした状況の中で、この間の弓浜絣や浜綿をめぐる変化の様子を知事や皆さんにお伝えし、新たなステージへの対応を求めて参りたいと存じます。宜しくお願い致します。 

 最初に、「弓浜絣産地維持緊急対策事業」の展開についてであります。
 この事業は、高齢化が進む弓浜絣協同組合が主体となって、県と境港市、米子市の支援を受け、後継者の育成を図ろうとするもので、多くの志願者の中から選ばれた3人の若い研修生が、主任講師の嶋田悦子さんの指導を受けて、綿の栽培から、製品の販売に至る迄の全工程を学ぶというものであります。
 今日は、研修生のお一人です、稲賀さゆりさんが作られた着物を借りて参りました(笑い)。研修の成果を是非皆さんに見ていただきたい。モデルは少々悪うございますが、この着物をしっかりと見てあげてください。
 この研修も残すところ、あと半年となり、研修生の皆さんは、4月25日から開催される大阪での展示会や、5月の米子高島屋での手仕事展参加に向けて頑張っておられます。
 19年9月1日の開講式で、研修生に向かい感慨深く期待を語られた村上理事長も、この間にお亡くなりになられました。まさに、危機一髪、後のない事業実施ではなかったかと、改めて思いますと同時に、3人の研修生が、嶋田悦子さんというこの道の第一人者から、手ほどきをうけたこの3年間の研修を基に、今後、それぞれの個性を生かして弓浜絣の伝承と普及に取り組んで欲しいと願うものです。
 しかしながら、研修終了後の一人立ちに向けて、準備を始めなければならない段階を迎えて「果たして仕事として成り立つだろうか」という大きな不安を抱いておられます。
 この度の新年度予算では、引き続き第2期生の募集が計画されておりますが、厳しい経済状況を受けて弓浜絣の売れ行きにも陰りが出ていると聞きます。研修生の自立に対し、何らかの支援が必要ではないかと思うところであります。
 弓浜絣後継者育成事業に対するこの間の総括と今後の展望、就中、販路の確保について知事の所見を求めます。
 

 綿についても、この間、大きな変化がありました。
 前回の私の質問、提案を契機に、花回廊の綿の花が咲くようになりました。
 一昨年の秋、NHKの朝7時のニュースのトップで、「鳥取県の花回廊に綿の花が咲きました」と紹介され、びっくりして飛んで行ったことでした。
 トップマネージャーの矢澤さんは、「以前から伯州綿に興味を持っていて、やってみたかったのだ」とおっしゃって下さり、綿の栽培と、ご専門である種の研究に加えて、伯耆町や南部町の小学校での栽培を指導しておられます。
 子ども達が、自分で育てた綿を使って、絣を織っている様子もテレビで紹介されておりました。
 また、私は、綿の生産に障害者作業所の皆さんにも参入していただくことを訴えましたが、現在、2つの作業所が栽培や加工に携わっておられます。来年度からは、さらに1作業所も参加される予定と聞いております。
 県も新年度から、農福連携の事業を推進するようですが、こうした取り組みを進めて、障害者の皆さんに、ものを作る喜びと収益のアップを図っていただければと、期待するものです。
 

 最後に、私が最も喜びとすることは、ことある度に「市の花は、背高泡立草か」と揶揄されてきた境港市の荒廃地、遊休農地に綿の花が咲くようになったことであります。
 市の農業公社の取り組みで一昨年から始まったもので、昨年は、国の緊急雇用対策事業を活用、5名の臨時職員を採用して、1haの畑で栽培。天候不順で収穫は、種付660kgに終わりましたが、繊維が短く難しいといわれてきた糸化を引き受けてくれる紡績会社があって、収穫された綿は、現在、その作業中であります。
 糸化の後、製品化、販路化の道筋も、ほぼつているという段階でありますが、今後はさらなる量産化、耕作面積の拡大が大きな課題となってきました。
 同時に、市場に名高い伯州綿というブランドを、オーガニックコットン流行の追い風に乗り、今日的に如何に守り発展させていくのかという大きな問題にも直面しております。
 市の取り組みは、未だ緒についたばかりであり、かつ、国の緊急雇用制度による3年間の基金事業であるという点で、非常に限られた時間の中で、早急に産地化を図る必要に迫られております。
 伯州綿の量産化とブランド化について知事の所見を求め、壇上からの質問と致します。


○平井知事(答弁)    

 安田議員の一般質問にお答えを申し上げます。
 安田議員の方から、弓浜絣につきまして、非常に情感のこもったご質問をいただきました。今日は、議場に鮮やかな稲賀さんのお作りになった反物によります着物を着てこられました。悪い答えをするわけにはならないという圧倒的な存在感で、ハンディキャップを負う様な感じがいたしますけども、是非とも私共も、この弓浜絣を応援させていただきたいと考えております。

 第一問目といたしまして、弓浜絣産地維持緊急対策事業の研修終了まであと半年となっております。果たしてこれからどうなるのか、という不安もあるのではないか。研修生の自立に向けた支援が必要ではないか。今後の展望、総括、それから販路確保など所見や如何と、こういうお尋ねでございます。
 今日もお召しになっておられますけども、弓浜絣というのは、日本がずっと紡いできた長い歴史の糸の様な、そういう風情のある織物だと思います。素朴な中にも、生活を一所懸命育て上げてきた、地域の情熱というものが息衝いている様な気が致しますし、同じようなこういう着物を身に着けながら、色々なドラマが地域の中で生まれてきたこと、それを思い起こさせることが本当に多いと思います。
 辿ってみれば、こうした弓浜絣の基になります伯州綿も含めて、岡山の方から綿を持ってきたのが17世紀、江戸時代のことでありました。それ以来、産地化が進んでまいりまして、特産品に育ち、明治時期になりますと、多くの地元の方が、弓浜絣を作りまして、生業としてこられたわけであります。ただ、その前には文明開化と言いますかですね、圧倒的な機械織りの織物が立ちはだかったわけでありまして、段々と、この弓浜絣の伝統は失われていったという歴史があります。しかし戦後、それを復活させて今日に至ったわけであります。
 今、全国的にも綿の生産をやっている所は、無いわけでは無いですけども、しかし、それは展示的な物が中心でありまして、本気で今もう一度復興していこうという事を、糸から始めて、綿の花から始めてやっていく取り組みというのは、全国的にも他に類の無い貴重なものではないかと思います。
 この弓浜絣産地維持緊急対策事業を平成19年9月に開始をしたわけですが、ここから稲賀さん、佛坂さん、中村さんという3人の研修生が巣立つ事になります。まだこれから半年くらい研修は続くわけでありますが、夏に終了しまして、次の2期生を是非募集したいという意味で、今議会にも関係の予算を提案させていただいているわけであります。
 私も、この3人の研修生の方、ご指導なさっている無形文化財の方であります嶋田悦子さん、そういう方々とお会いをする機会がありました。境港での見本市のときに、実際に糸を綿の玉から紡ぎ出していく、そういう作業から拝見をさせていただきました。本当に素晴らしいものだと思います。やっていただきますと、圧倒的な説得力を以ってですね、見ている人は引き込まれる様なところがあります。
 私たちは、やはり本物の織物を身に纏い、或いは、色々な日用品を作っていきたい、そういう衝動に駆られるわけであります。今あまりにも化学繊維ですとか、そうした人工的なものが跳梁跋扈しているわけでありますけども、命を頂きながら暮らしていく事、これが綿の花の世界だと思いますけども、そうした絣を現代に再興して、新しい付加価値を与えていく。これを、挑戦的ではありますけども、是非ともやっていかなければならないと思います。
 3人の研修生の方々にご意見をお伺いをいたしますと、これから是非独り立ちして、自立してやっていきたいとか、もう少し勉強かたがた教えながらやっていきたいとか、そういう様なご意見が聞かれます。当面、染料を入れる瓶が無いとか、そういった道具の問題ですとか、展示販売をする機会が欲しいですとか、作業する場所が必要だとか、色々なご意見が率直に出てきております。
3人の小さな芽だとは思いますけども、これを大きく育てていく意味で、そうしたご意見を聞きながら、私としては、これから応援の事業を組んでいきたいと思います。これは新年度に入りまして、補正予算を含めてという事になると思いますけども、また是非ともご相談をさせていただきたいと思っています。
 総括をさせていただければ、非常に効果があったと思います。それは、たった3人の研修生が卒業する状況になったという事にとどまりません。
 実は、こうした事業化がメディアの方で様々に取り上げられました。さらに、こうして弓浜絣という成果が表れているということ。これに自信をもって、「じゃあ、綿の生産もやってみようかい」という事になってきたわけであります。
 こうして考えますと、事業の波及効果は、単なる研修事業という粋にとどまらず、大きなものがあったのではないかと総括できようかと思います。
 そして、販路開拓などはどうかという事でありますが、例えば、色々な大都市圏のデパートとかで、そうした展示会の応援をさせていただいておりますけども、是非こういうことを永続して発展させていきたいと思います。
 さらに、付加価値を付ける必要があると思うんですね。これは綿の花の生産ということもございますけど、付加価値を付けた製品を作る為に、そうした伯州綿を活かした製品作りなども、弓浜絣も含めまして、応援していこうと。そうした支援事業を議会にも提案させていただいております。是非とも、こうした新しい施策も加えまして、弓浜絣が発展していくことを切に祈っているわけであります。

 次に、綿の生産につきまして更なるお尋ねをいただきました。
境港市の農業公社が、新しい事業として遊休農地での綿の栽培を始めている。これは非常に素晴らしい事だというご紹介がございました。ただ、これを守り育てていく為には、大きな問題もあるわけであって、産地化を図る為にどの様にブランド化、量産化に繋げていったら良いのだろうかという事でお尋ねをいただいたわけであります。
 議員の方からご紹介ございました様に、花回廊でも綿の生産といいますか、栽培をやっております。それはゼネラルマネージャーの矢澤さんの思いもあったわけでありますけども、地域に相応しい取り組みだったと思います。
 こうした事は色々なところに出て来ておりまして、境港市の農業公社で組織的にやり始めていただいた事、これは量産化の端緒を開くものとして大変重要な事だと思います。660キロでしたか、実際に生産もあがって来ているわけであります。目標には届かなかったわけですが、それは、これから生産技術、栽培技術の課題を克服していく必要があるわけであります。
 それ以外にも、例えば、NPOで海の方で揚がる藻と絡めてやろうとか、障害者の施設でタイアップをしてやるとか、県を卒業したOBの方々などもそういう綿の生産に有機農地で取り組んでおられたり、こうやって色々な人が輪の中に入ってこようとしています。これは非常に重要な現象ではないかと思います。
 
議員のご指摘にもございましたように、世界的にはオーガニックコットンという物がもてはやされる様になりました。身体に良いと言いますか、自然に親しめる綿という素材、それを極限まで追求しようという事だと思います。このオーガニックコットンの伯州綿を目指すというのは、私は推進していくべきチャレンジだろうと思います。課題は多いですけども、それを乗り越えていけるように、今境港の農業公社さんも動き出しましたので、タイアップしてやっていけないだろうかと思っています。
 この認証は、普通のJASとは違っておりまして、世界的な国際認証でございます。国際認証機関の応援を受けると言いますか、それに対して検定料と言いますか、審査を受けながらやっていくことになるわけでありまして、そのあたりを探究してみたいと思います。
 そういう事などを含めて、伯州綿の生産のプロジェクトチームを作らさせていただきました。今年度から動かさせていただいております。こうしたプロジェクトチームを更に発展をさせていったり、地元で農業公社などの動きが出てきた事とタイアップをして、大きな運動へと展開をしていけば良いのではないかと思います。価格の面ですとか、色々と課題があるのは事実ですけど、是非とも量産化、ブランド化という事を視野に、これから事業展開の後押しをしていきたいと思います。


○安田議員(追求質問)





 大変前向きなご答弁をいただきまして、個々につきましても、ひとつずつ宜しくお願いをしたいと思っております。有難うございました。オーガニックコットンの事も大変大きな課題であろうかと思いますが、県の方も大変支援をしてくれるという事で喜んでおります。
 実は、今日は是非皆さんに浜綿というものを手で触ってみていただきたかったのですが、議長のお許しがいただけませんでしたので、この場で、大変申し訳ございません。
 浜綿は、大変気持ちの良い暖かさです。ちょっと他では味わえない様な手触りで、これで僅かに320グラムです。大変な苦労をして作る割りに量は少ないのですが、着物一反に1キログラム要りますので、これが3つくらいで着物が出来るという事でございます。
 私は、今日は稲賀さんの着物をお借りしたのですが、これは佛坂さんという研修生が織って作ったお着物です。柄行きがわかりますでしょうか。鳥取県の産物である蟹と二十世紀梨を絵絣に織り込まれたと。彼女はデザインの勉強もしておられまして大変デッサン力がありますので、とても私たちでは思いつかないような面白い、斬新な発想をされるなと思って感心をしております。
 それから、今お話に出ました農業公社の綿は、難しいと言われていたのですが、紡績工場で糸にすることに成功したのです。こういうコットンタオル、これが大流行りのオーガニックコットン100%です。出回っているオーガニックコットンタオルは、大抵が洋綿であったり、中国産であったりして、そこから認証の必要性が生まれてきて、先程、知事のご説明の通りでございます。それから、これがソックスで、こちらがマフラー的なものであります。これは、100%浜綿ではないのですが、他のものも交えたストールです。色は試作品で4色出来ておりますが、これの白いものを先だって、ゲゲゲの女房のヒロイン役の松下奈緒さんに進呈したという事でございます。是非、皆さんにも触っていただきたいと思います。
 綿は、絣にする以外にも広い、有効的な使い道が、研究されて頑張って開発されており、100%天然なので赤ちゃん用品などに良いのではないかと思います。
 私も実は昨日、ある産院の先生に、取り上げて使っていただけませんかと言いましたら、「実は、うちは長野のものを使っている」と。長野から取り寄せたものに自分の医院のネームを入れ込んで、赤ちゃんが生まれたら、それを使ってタオルや肌着にもしているのだそうです。他所の産院では、それを退院のときにプレゼントをされるところもあるそうです。だから、是非、郷土のものを使っていただきたいのでお願いしますと言ったら承知していただいた様に、大変需要があります。
 それから、オーガニックですので、赤ちゃんもそうですが、大人になってからもアトピーで大変悩んでおられる人が結構いらっしゃいます。そういう方々にもこれは、是非、おすすめの品ではないかと思います。
 そういう意味で、ニーズはあります。一番、私が良いと思うのは、ベビー布団を作ってお祝いに送ったら大変喜ばれるのではないかと思います。そうすると、製品にするにしても、糸にする必要はございませんし、綿をそのまま使えるので大量に捌ける。そういう形で、私は是非ともこれを量産化をする必要があると思っているところであります。
 もう一点ですが、矢澤マネージャーにお尋ねをしたところ、彼は南部町の花回廊で綿を栽培しておられて、伯耆町や南部町の子供たちにも勧めておられるのですが、同じ伯州綿(浜綿)の種でも、撒いた所、育てる場所で出来栄えが全然違うそうです。嶋田さんも同じ事を言われて、これは弓浜半島のものであると仰っておられます。
 私は弓浜半島というのは日野川の砂州で出来た、砂地の何もものが出来ない貧しいところなのですが、そういう砂地で、水捌けが良くて、水位が高くて、しかも、最近はアマモというそうですが、中海のもんばを肥料として、塩分を少し与えることによって、良い綿が出来る。そして、綿の花が終わり、中海を渡って枕木山の方向から北西の冷たい秋風が吹くと、良い綿を吹くそうです。まさしく、これは弓浜半島で一番良いものが出来る、中海があるが故に良いものが出来る、地域循環型の地域のブランドとして、私は是非とも、発展させていきたいと思うところでありますが、知事はこのあたり如何様にお考えでしょうか。お尋ねをさせていただきたいと思います。

○平井知事(答弁)

安田議員から、親しく綿の実物をお見せいただいたり、佛坂さんの織物を見せていただきまして、さらに、弓浜半島における綿の栽培の適性についてお話をいただきました。私も、ひとつのドラマを見させていただいた様な気が致しまして、大変に心を打たれるような気が致しました。
 やはり我々の生活は、昔々から自然の中で自然と共に生きてきたわけであります。その基本に立ち返ってみないといけないと思わせるのは、最近のアトピーの急増であります。人間が驕り高ぶって、人間の業で何でもできるんだという事で、自分たちのライフスタイルを自分たちの世界で作り上げてしまったわけですけど、やはり、生き物として我々人間も、自分たちの体に耐えられない様な事が出てきていると。それが、例えばアトピーという形で表れているのかも知れないなと思うわけであります。
 今、議員の方からお話がありました様に、綿も布団として高級なものとして取り引きされております。一つ30万円とかですね、高級布団にもなっていくわけでありまして、それだけ和綿というものは貴重なものとして珍重されているところがあります。軽いという事もありますし、柔らかい手触りがありまして、洋綿とは素材が大きく異なるものであります。これを是非とも、付加価値を付けて市場に出して行くように結び付けていかなければならないと思います。
 その意味で、万人が大切にする赤ちゃんという時代における、一番大切なもの布団だとか、あるいは身に付けるものだとか、そうしたところでコットンを使えないだろうか、というのは素晴らしい提案ではないかと思います。
 これから、伯州綿の活用方法について、今回議会に提案しているものをお認めいただければ、そういう活用策も、そうした事業を使って考えていけるのではないかと期待を致しております。
 また、伯州綿の生産もそうであります。これも今次の議会の中に、オーガニックコットンを目指した取り組みの提案をさせていただいております。これは、ここでなければ育たないんだ、というのはなるほどと思いました。確かに産地として、江戸の頃から息衝いてきた事にはそれなりの理由があったのだろうと思います。
 この伯州綿でありますけども、その綿の栽培には幾つかの問題点と言いますか、乗り越えなければならない課題もございます。それは、改良、普及などの観点からもアプローチがありましょうし、その他の事も含めて、例えば、市場開拓の事も含めて、これからはやっていかなければならないと思います。
 今の取り組み等は農林水産部長からご報告を申し上げたいと思いますけども、今回ご提案申し上げたことも含めまして、是非とも伯州綿の産地化を進めて参りたいと思います。議員のほうから表現がございましたけども、もんばからあがった天然の肥料、これで大切に育て上げる、そこに枕木山の方から吹き込む風が包み込む様にして良い綿が採れるというのは、昔から語り継がれ実践されてきた事ではないかと思います。
 かつて、国引きの神話の中で、その綱に例えられた弓浜半島でありますけども、おそらくそうした綿がここだから出来るという事は、神々がなせる業であるかも知れませんし、ひょっとすると妖怪のなせる業かも知れませんが、そういうわけで伯州であるからこそ綿を栽培するんだという事で、遊休の地の活性化だとか、雇用の受け皿作りだとか、色々な面で花が開いていくことを期待をしているわけであります。是非とも応援して参りたいと思います。

鹿田農林水産部長(補足答弁)

 現状の伯州綿の取り組みでございますけど、境港市の農業開発公社が遊休農地対策として、平成20年の秋に国の補正を受けまして、最初はモデル事業として取り組みました。その際にはあくまで、耕作放棄地を耕起して雑草を取るという様な話でございました。平成21年度に入りまして5月の頃から作付けと、今、伯州綿に取り組んでおられます。
 その際、技術的な課題もございましたので、西部総合事務所の中では、栽培指導の関係のプロジェクトチームと、ブランドの方の関係のプロジェクトチームの2班を作りまして、統括のプロジェクト長と致しまして普及所の次長があたるということで、総合事務所が横断的に取り組んでいるところでございます。
 課題は、先程知事からありました様に、外国産との価格差が結構あるものですから、どうしても、加工して売っていくブランド化という取り組みが至上命題かなと思っているところです。そういう面での取り組みが更に必要になってくると考えておりまして、市の方の農業開発公社、並びに境港市役所、そういうところと連携しながら今後も取り組んでいく、という形で考えているところでございます。以上でございす。


安田議員(追求質問)

 先程、知事からも後継者育成の事業がマスコミに取り上げられたことで、大きな波及力を得たというお話がございましたが、私もこの間、度々マスコミで絣や綿のお話が展開されることで、地元でも大変大きな変化が出てる様に思っております。
 それは伝承館では、3人の研修生の他に、20年前ですが、市の方が講習会を開いて育てられた20人ほどの「あいの会」と仰るグループが、変わらず活動に励んでおられますし、それに加えて、昨年の秋の市内の公民館の祭りで、絣の展示が大変多く取り上げられました。それから、境港はそれとは別に、各町ごとに文化祭を開いているのですが、そこでも、それぞれの家のタンスに眠っている絣の着物を出していただいて展示されて、知事が仰った様に着物の一枚一枚がドラマを持っている、ストーリーを持っているわけです。そして、それを見ながら皆が、思い出話や懐かしい人の話を語り合って、井戸端会議ならぬ絣談義が盛り上がりました。
 閉塞状況の漂う現代であり、経済も大変厳しいと言われてる状況ですけども、では、バブルの時代を追い求めていくのかというと、決して鳥取県民はそう思っているわけではございません。こういう時代の中にあっても、本当に一番大事な、親が一所懸命夜なべをして絣を紡いでくれたり、布団を作ってくれたり、そうした、愛であり想いというものを今私たちはしっかりと、子供たちに伝えていかなければならない。その為にも、私はこの絣や綿というものに、しっかりと取り組んでいく必要があるのではないかと思うところなのです。鳥取の女、浜の女の心意気として、私は今日着物を着させていただいたと、こういう次第でございます。
 そしてもう一点、先程お話ししましたが、境港は大変長い間、不耕作地で悩んできましたし、揶揄されてきたことも確かであります。私は、平井知事ではない知事から、この議場で市の花は背高泡立草かと言われました。歴史を紐解いてみますと、配流された後鳥羽上皇は「木無しの里」、木も一本生えない、そういうところである、という風にお詠みになった歌も残っております。そういう土地柄でありますので、この不耕作地を解消するのであれば、やはり県にもそれなりの応援をしていただければと言われる度に忸怩たる思いと、何とかして欲しいという思いで今日に至っております。
 先程の尾崎議員の質問の中で、「鳥取力」というお話がありましたけど、是非、現在栽培されている方や、絣を織っておられる方に止まらず、絣や綿についての思いを語り合ったり、披瀝したりして皆でこれを応援する、そういう応援部隊、ボランティア部隊を必要とし、そういう方々のお力がなければ、今の量産化体制の問題も、私は乗り越えられないだろうと思っております。
 平井知事、是非お力をお貸しくださいませ。宜しくご答弁をお願い致します。



○平井知事(答弁)


 安田議員から重ねてのお尋ねを賜りました。境港は、弓浜絣で新しい運動が生まれつつあるというお話を聞かせていただきました。例えば、公民館活動で使われるとか、地域の文化祭で語り合うとかですね、また「あいの会」という取り組みも熱心に行われているということであります。
 先般も、境港の街中を着物を着て歩くというイベントがありましたけども、そのときも弓浜絣が幅を利かせたわけであります。そういう様々な取り組みが地域で盛り上がってきていることは、非常に良いと思います。特に、「鳥取力」ということで申し上げたわけですけど、色々な人達が協力の輪の中に入ってきている。
 農福連携を是非、新年度から推進したいと思っていおりますけども、ノームの糸車とか、境港の農業公社の方からも委託を出して、米子の大平園とか、F&Y境港ですとか、もみの木園とか、そうした色々な施設の方にお手伝いをお願いをしているという様に、幅はどんどん広がってきていると思います。
 
議員が仰る様に、非常に難しい課題があって、特に量産化に向けては、最初弾みをつけていく意味でも、価格競争の事をどうやって乗り越えていくかという課題があります。
 今境港の農業公社の方では、基金を活用しましてやっているわけであありますけど、今後どうなるかという事は、これから解決をしなくてはならない。それも、急いで解決をしなくてはならない事だと思います。
 ですから、今地元が盛り上がっているので、ボランティアなど役に立ちたい、是非これを残したい、次の世代へと伝えていきたい、という事で集まってくるエネルギーをこの中に活用していくことが大事だと思います。弓浜絣のシンポジウムをするなどして、そうしたボランティア運動を大いに起こしていこうと、県もこれは是非応援していくべきだと思っております。
 縺れて解けない糸があるのであれば、それを解くためのお手伝いを、それは財政的な面も含めてやるべきだと、私は思います。少々難しい事はあるわけですけど、モデルケースだとか、テストケース、パイロットケースとして応援していく余地は十分にあるだろうと思っております。
 行く行くは独り立ちして、持続可能な姿に持っていくように、地元も頑張っていただきまして、弓浜絣が、子供たち孫たちへと伝えられていくことを切に願っております。

○安田議員(追求質問)

 知事には、大変力強く温かいご答弁を賜りました。私は今日、ちょっと恥ずかしかったのですが、弓浜絣の力かなと思って、感謝を申し上げたいと思います。今後とも、皆様どうぞ宜しくお願い致します。

 

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