第二章 「剣の材料」

夕暮れに近い時間帯。そんな中のんびりと街道を歩いていくと 、ぽつんと見える立て看板。その看板にはこのような事が書か れていた。

『田んぼで有名なスイデーン城下町まであとちょっと』

(何ともわかりやすい名前なんだ…) と、リオは思う。
地理学が得意なノヴィスがこの国について話 してくれた。
「田んぼの国スイデーンは、その名のとおり田んぼで有名な国 なんだ。大陸のおよそ70%もの米を作っているんだよ。そん なわけで、この国は『大陸の米俵』と言われているんだ。」
「ほへ〜」
地理学が苦手なリオもすぐに納得した。それもそのはずである 。
前に少しばかりか城下町らしき物が見えるだけで、他一面は 全て田んぼだけなのだ。
「すげ〜!!それじゃ、ここで作られている米を俺達は食べて るんだな!!」
「まぁ、そう言う事になるな。」
「それじゃこの国に感謝しなきゃな!感謝感謝!!」
そんな事を言いつつ、二人はスイデーン城下町に向かっていっ た…。
スイデーンの町に着いた頃には、もうあたりは真っ暗だった。
『遅く入った方が宿代を払う』という約束をしていたので、二 人は宿を見つけると素晴らしい速さで入っていった。
そりゃあ もう『俺に触ると怪我するぜ』ってくらい早く。
「なぁ〜…なんでお前はお金がかかってると、そんなに足が速 くなるんだぁ〜?」
宿の一室で、疲れきったリオは言う。
「まっ、才能ってヤツじゃないか?」
ノヴィスはそう言うと、ソファーに座る。
全速力で走ったはず なのだが、ノヴィスは全く疲れていないようだ。
「それより、これからどうする?」
これからの行動について考える為、リオはノヴィスに相談した 。
「まず、この町の鍛冶屋を探そう。鍛冶屋にお前の折れた剣を 見せて、その剣の材料となったものを教えてもらって、探して くるんだ。それを探してきたら、もう一回鍛冶屋に行って、剣 を直してもらう。まあ、こんなものだろう。って、おい…聞い てるか、リオ」
「Zzz〜……」
「まったく……人がちゃんと答えてるのに、聞いた本人は寝ち ゃったよ…」
ノヴィスが話している間に、リオは眠ってしまった様だった。
「まあいいか……お休み…」
ノヴィスはそう言うと、ランプの光を消し、自分の寝床につく のだった…
翌朝、二人は鍛冶屋を探しに町の中を出歩いた。
散々歩いて小 一時間、やっと見つけた鍛冶屋の中に入って行った。
「いらっしゃい。お、新顔だな、お二人さん」
「こんにちは」
二人はお辞儀をし、早速本題に入った。
「あのさぁおっちゃん。早速で悪いんだけど、これ、直してく れないかなぁ?」
リオはそう言って、折れた剣『ベイグナート』を鍛冶屋の主人 に手渡した。
「ふむ……これまた凄い折れ方じゃのう。どういう使い方をし たらこうなるんじゃ」
この言葉に、二人はズキっと来た。
「……無理ですか?」
おそるおそるノヴィスが言う。
「無理ではないが、この剣の材料は特殊でのう…結構遠いとこ ろにしか、材料は無いんじゃ。それでもいいかのう?」
「大丈夫です。それで、この剣の材料とは一体?」
メモを片手に、ノヴィスが聞く。
「うむ…まずは、布と……」
「布ぉ!?」
二人はビックリした。まさか布で出来ていたなんて、ウソだろ う?って思った。
「冗談じゃ」
二人は素晴らしい音をたててコケた。
「おっちゃん!まじめにやってよ!!」
「いやいや、スマンスマン」
主人はそう言うと、急に真面目な顔になった。
「まず一つ目はクラソナ洞窟にある『ノアストーン』。二つ目 は、ボワワ火山にある『アルテナ合金』。三つ目は、シモヤー ケ雪原にある『氷河のかけら』。そして、最後の一つ。マルデ 廃墟にある『レムリア鉱石』じゃ」
メモをとっていたノヴィスが、ある言葉にびくっとした。
「あの……マルデ廃墟って、あの……」
「そうじゃ。オバケが出ると噂されている、あれじゃ」
ノヴィスは硬直した。それを見てリオは、硬直しているノヴィ スを茶化した。
「あ〜!もしかして、ノヴィスって『オバケ』が怖いんだろ〜 !!」
「バッ…バカな事言うな!!誰がオバケなんぞ…」
「まぁ、別にいいけどね。それじゃおっちゃん、俺達、材料を 探してくるよ。それじゃあね〜!!」
「こ、こら!!勝手に行くな!……おじさん、どうもありがと うございました。」
「まあ、良いって事よ。それよりも気をつけてな。このごろモ ンスターも強暴になってきているし…」
「わかりました。気をつけます。それじゃぁ!!」
ノヴィスは軽く一礼すると、リオのほうへ走って行った。
主人は、その後ろ姿を、いつまでも見守っていた……そして、 主人はこう思った。

(本当に大丈夫かのう……?)