ちょっと アドバイス
従業員の交通事故対応
今回は、従業員の交通事故の処理を、休んでいる間の休業補償を含めて相談されることがありますのでレポートします。
従業員の交通事故が通勤途上に発生した場合、事業主責任は生じませんが、勤務時間中の事故の場合は、
業務上災害として事業主責任(民法715条に基づ「使用者責任」)、および自賠責法第3条基づく「運行供用者責任」を
負うことがあります。
交通事故による業務上の被災に対し、被災した労働者は労災保険給付(厚生労働省管轄)による保険金の支払いを
自由に選択できることになっていますが、二重には給付されません。
では実際に交通事故で被災した場合、ケガの治療をどちらで使ったほうが本人にメリットがあるのかというとになります。
交通事故による損害に対して、行政上の市道で「交通事故の場合は労災より自賠責を優先」とされ、通常は以下の理由で、
自賠責保険で処理します。
@仮渡金制度や内払い金制度を利用することによって、損害賠償額の市は払いが速やかに行われること
A自賠責保険には、労災保険では給付されない慰謝料が含まれていること
B休業損害補償については、労災保険では60%しかてん補されないのに、自賠責では日額1万9000円を上限として3ヶ月平均賃金の
全額が支給される。
ただし次の場合は自賠責を使わずに、、指定病院などに対し「労災保険での処理」で申請する必要があります。
1.その交通事故に対して自分の過失割合が大きい場合(自分が加害者の場合を含む)。
自賠責保険では、事故の過失割合が7割を超えるものに対して、損害補償が5割〜2割の範囲に落とされますが、
労災保険にはこのような過失割合による減額はなく、労災認定を受けることができれば自己負担なく給付されます。
2.交通事故の過失割合が相手ともめている場合。
3.相手車の所有者が運行供用者責任を認めない場合。
自賠責保険はその車の運行にその損害を賠償する制度で、会社の車を運転して事故を起こした場合、「運行供用者」は、
その運行(自動車)によって他人の生命または身体を害した時(ケガ、死亡)はこれによって生じた損害を賠償する責任が生じます。
4.相手が無保険または自賠責保険しか加入していない場合。
相手が無保険、対人無制限の任意保険に加入していない場合は、労災保険(保険診療)に対し、自賠責保険を使った診療は
自由診療(医療機関が自由に診療報酬単価を設定できる)となり、医療機関によっては診療費が高額となります。
(自賠責にはケガによる治療に支給限度額があり、120万円までが限度)
事業主責任(使用者責任)とは、民法715条「仕事のために被用者を使用するもの(使用者)は、その被用者が事業の
執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」と規定しています。
使用者責任の成立要件は、
@使用者と被用者との間に使用関係(指揮命令が必要)があること
Aその被用者に不法行為を行ったこと
Bその損害が事業の執行に付き加えられた損害であること
C使用者が被用者の専任およびその事業の監督について相当の注意をしなかったこととされ、
Cは使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたときは、使用者に賠償責任がないとされており、
立証責任が転換されていますが、判例上この免責を認めることはなく、無過失責任だと考えられています。

