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知的障害と関連する各種疾患
 障害(Disability)と原因疾患
重症心身障害の発生原因
 
 重症心身障害の発生原因は様々で、特定は出来ない。
 現在広く用いられている原因分類には、生理的要因、病理的要因、心理・社会的要因の三つに分別する考え方がある。

 また、出生前の原因(胎内感染症・脳奇形・染色体異常等)、出生時・新生児期の原因(分娩異常・低酸素・
 極小未熟児・重症仮死産等)、周生期以後の原因(脳炎などの中枢神経感染症・てんかんなどの症候性障害)に
 分類することもある。

 
 出生前の原因
   胎内感染症、脳奇形、染色体異常等

 出生時・新生児期の原因
   分娩異常、低酸素、極小未熟児、重症仮死産等

 周生期以後の原因
   脳炎などの中枢神経感染症、てんかんなどの症候性障害

 知的障害と各種疾患
知的障害(Intellectual Disability)について
  知的障害(Intellectual Disability)とは

 知的障害は、次の3点で定義される
    ・知的機能に制約があること、
    ・適応行動に制約を伴う状態であること、
    ・発達期に生じる障害であること

 一般的には金銭管理・読み書き・計算など、日常生活や学校生活の上で頭脳を使う知的行動に支障があることを指す。

 精神遅滞(mental retardation)とほぼ同義語であるが、一般的には医学用語上の用語として「精神遅滞」を用い、
 学校教育法上の用語として「知的障害」を用いる形で使い分ける。


 客観的基準を示す法令にあっては、3つを要件とするものが多い。
   ・発達期(おおむね18歳未満)において遅滞が生じること、
   ・遅滞が明らかであること、
   ・遅滞により適応行動が困難であること

 遅滞が明らかか否かの判断に際して「標準化された知能検査(田中ビネーやWISCやK-ABCなど)で
 知能指数が70ないし75未満(以下)
のもの」といった定義がなされることもある。

 通常、事故の後遺症や認知症といった発達期以後の知能の低下は知的障害としては扱われない

知的障害の分類

 @ボーダー(境界域)

    知能指数は70 - 85程度(精神年齢に換算すると11歳3か月以上12歳9か月未満)。知的障害者とは認定されない。


 A軽度 F70
    知能指数は50 - 69程度(7歳6か月以上11歳3か月未満)
    理論上は知的障害者の8割あまりがこのカテゴリーに分類されるが、本人・周囲ともに障害の自認がないまま
    社会生活を営んでいるケースも多いため、認定数はこれより少なくなる。生理的要因による障害が多く、
    大半が若年期の健康状態は良好。
    成人期に診断され、療育手帳が支給されないこともよくあるという。近年は障害者雇用促進のために、
    精神障害者保健福祉手帳(とくに3級程度)の所持者が増える傾向にある。


 B中等度F71
    知能指数は35 - 49程度(5歳3か月以上7歳6か月未満)。合併症が多数と見られる。
    精神疾患などを伴う場合は、療育手帳の1種(重度判定)を満たすこともできる。


 C重度 F72
    知能指数は20 - 34程度(3歳以上5歳3か月未満)
    大部分に合併症が見られる。
    多動や嗜好の偏りなどの問題が現れやすい。
    自閉症を伴う場合、噛み付きやパニック、飛び出しなど問題行為が絶え間ないケースが多い。
    精神障害者保健福祉手帳の対象とはならない。


 D最重度 F73
    知能指数は19以下程度(精神年齢3歳未満)。
    大部分に合併症が見られる。寝たきりの場合も多い。
    しかし運動機能に問題がない場合、多動などの問題行為が課題となってくる。
    重度と同様、精神障害者保健福祉手帳の対象とはならない。


 補足:知能指数 (Intelligence Quotient)
    数字であらわした知能検査の結果の表示方式のひとつ。
    「精神年齢 ÷ 生活年齢 × 100」の式で算出される。

 知能指数は標準得点で表され、中央値は100標準偏差は15前後で定義されている。
 100に近いほど出現率が高く、100から上下に離れるに従って出現率が減っていく。
 分布はほぼ正規分布になり85−115の間に約68%の人が収まり、70−130の間に約95%の人が収まる。

 50−70は軽度知的障害、35−50は中度知的障害、20−35は重度知的障害、20未満は最重度知的障害とされる。
 40未満を測れない検査も多い。


        


アプローチ方法による分類

 多元的アプローチによる分類としては、以下のようなものが挙げられる。
 また、AAMR第9版においてなされている定義では、
   (1)精神遅滞の概念を広げること、
   (2)IQ値によって障害のレベルを分類することはやめること、
   (3)個人のニードを、適切なサポートのレベルに結びつけること、の3点を意図している。

 一時的(intermittent)
   必要なときだけの支援

 限定的(limited)
   期間限定ではあるが、継続的な性格の支援

 長期的(extensive)
   少なくともある環境においては定期的に必要な支援

 全面的(pervasive)
   いろいろな環境で長期的に、しかも強力に行う必要がある支援

運動能力と知能指数による分類 :大島分類

 運動能力と知能指数による分類として、大島一良による大島分類が使用されている。
 下の表は大島分類の表に障害別の大まかな分布範囲を表記したものであるが、個人差があることに注意されたい。
   分類1 - 4該当するものを定義上の「重症心身障害児」
   分類5 - 9に該当するものを「周辺児」、と呼んでいる。

    

知的障害の原因 
  病理的要因

 先天性原因
    染色体異常(ダウン症候群など) 
    遺伝性疾患(フェニルケトン尿症、テイ-サックス病、神経線維腫症、甲状腺機能低下症、脆弱X症候群など)


 妊娠中の問題
    母体の重度の低栄養
    ヒト免疫不全ウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス、トキソプラズマ、風疹ウイルスによる感染
    毒性物質(アルコール、鉛、メチル水銀など)
    薬(フェニトイン、バルプロ酸、イソトレチノイン[isotretinoin]、がんの化学療法薬など)
    脳の異常発達(孔脳症性嚢胞、異所性灰白質、脳瘤など)
    妊娠高血圧腎症、多胎妊娠
    

 周産期
    出産時の酸素不足・脳の圧迫などの周産期の事故


 出生後に生じた健康障害
    生後の高熱の後遺症などの、疾患・事故など


 脳性麻痺やてんかんなどの脳の器質的な障害や、心臓病などの内部障害を合併している(重複障害)者もいる。
 身体的にも健康ではないことが多い。
 染色体異常が原因の場合は知的障害が中度・重度であったり、外見的に特徴的な容貌であることも多い。

生理的要因

 特に知能が低くなる疾患をもつわけではないが、たまたま知能指数が低くて障害とみなされる範囲
 (IQ69または75以下)
である場合。
 生理的要因から偶然にも遺伝子の組み合わせで生まれたことなどが原因である。
 多くは合併症をもたず、健康状態は良好である。
 知的障害者の大部分はこのタイプであり、知的障害は軽度・中度であることが多い。

心理的要因

 養育者の虐待や会話の不足など、発育環境が原因で発生する知的障害。
 リハビリによって知能が回復することもある。
 関連用語に「情緒障害」がある。

 例:離島・山岳地帯・船上などの刺激が少ない環境で成育した児童も、IQが低くなる傾向にある。
   IQテストそのものが文明社会に馴染んだ者にとって有利な(○や△など抽象的な図柄を見分けるといった)問題である。
   したがって、たとえば都会生活を経験したことのない先住民族には不利な評価が下されることになる。

有病率
 
 有病率は約1%前後とされ、男女比はおよそ1.5:1で、女性よりも男性に多い。
 伴性遺伝子要因や男性の脳損傷に対する脆弱性が、性差の原因かもしれないと考えられている。

 軽度精神遅滞はおよそ85%と、大部分を占める。
 中等度障害は15%。
 重度障害は全知的障害の5%。 

知的障害とその他の発達障害の関連
  知的障害と自閉症 

 知的障害は、知能面(IQ)の全体的な障害であり、自閉症の本質であるコミュニケーション障害は、対人関係面を
 主とした障害である。

 昔から知られている種類の自閉症は狭義の自閉症のことであるが、これはコミュニケーション障害と知的障害が
 合わさったものである。
 近年知られてきた種類の自閉症である高機能自閉症は、コミュニケーション障害のみであり、知能指数の全体平均は
 知的障害の域に達しない。
 しかし、知能指数を要素別に計測すると、各要素間に大きな差が見られる。

 IQが35未満では、半数以上が自閉症を併発すると報告されている。

           


学習障害と知的障害の違い

 学習障害は読み・書き・計算など学習面の障害があるが、会話能力・判断力などの知能の面では障害が認められない
 知的障害は、学習面に加えて知能面にも障害を持つ。

治療と予後 
 
 精神遅滞のほとんどで、基礎にある知的障害そのものを改善させることは困難。

 しかし恵まれた環境下においては適応機能などが向上する可能性が十分ある。
 早期に発見され適切な療育が施された場合、児の長期的予後は改善するとされている。
 本人のみならず家族への支援も欠かせないと考えられ、知能やその遅れに関する知識の啓蒙や教育を
 当事者のみならず一般社会に行うこと、家族や遺伝に関するカウンセリングがなされることも有用と思われる。

 出生前後の適切な医学的対応や。生後のさまざまな福祉的・教育的支援(特別支援教育)は、精神遅滞や
 二次的な合併症を最低限にとどめることに役立つとされている。

参考資料 
 
Wikipedia 「障害者」 「障がい者福祉」 「身体障害」 「知的障害」 「発達障害」 「知能指数」  

『歯科衛生士のための障害者歯科第3版』  医歯薬出版 2006/10/1 足立 三枝子 (著), 緒方 克也 (監修)

『スペシャルニーズ デンティストリー 障害者歯科』 医歯薬出版 2009/9/1 日本障害者歯科学会 (著, 編集)

障がい者と歯科診療:各論



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