含歯性歯嚢胞 Dentigerous Cyst)

  

含歯性嚢胞とは 
従来、濾胞性歯嚢胞(Follicular Cyst)と呼ばれているもののうち、埋伏歯の存在するものを含歯性嚢胞と呼ぶ。
本疾患は埋伏歯の歯冠を腔内に含む嚢胞で、歯冠の形成が終了したのちに歯原性上皮に嚢胞化が生じたものと考えられている

臨床症状
症状
嚢胞が小さいものでは無症状であるが、大きくなるにつれて顎骨の膨隆や周囲の歯の位置異常をきたす。
骨吸収の程度が進めば、羊皮紙様感波動を触れる。
嚢胞は通常単房性のことが多いが、ときとして多房性のこともある。
埋伏歯と嚢胞との位置関係により、中心性型、側方性型、多房性型の3型に分類することがある。
好発部位
好発部位は下顎智歯部と上顎前歯部で、その他下顎臼歯部、上顎智歯にも発生する。
好発年齢
好発年齢はいわゆる歯の交換期、7〜8歳から15歳ぐらいに発見されることが多い。
一方、自覚症状に乏しく発見が遅れる場合、高齢者でもみられることがある。


診 断
X線所見は診断に重要で不可欠な検査である。
本嚢胞はX線的に境界明瞭な類円型の透過像を示し、その中に埋伏歯の歯冠を含む特徴を有する。
しかし、嚢胞性エナメル上皮腫や腺様エナメル上皮腫、その他の顎嚢胞との鑑別を要する症例もある。
少なくとも嚢胞とエナメル上皮腫との鑑別は明確にしておく必要がある。
鑑別診断に困難な症例については、試験切除による組織診断が必要である。

治療法
開窓療法による嚢胞内永久歯の保存をはかる方法が数多く試みられる。
開窓の適応でない症例に対しては、抜歯を伴う嚢胞摘出術が施行される。


補足:(eruption cyst)

歯が萌出中に当該歯槽堤粘膜に限局性の膨隆としてみられる嚢胞がまれに生ずることがある。
組織学的には含歯性嚢胞と同様の所見をもち、含歯性嚢胞に含まれるが、一般にこれを萌出嚢胞とよぶ。
治療法は開窓術であり、これにより歯の萌出が進み、嚢胞は消失する。
しかし多くの場合、歯の萌出とともに自然消退する事が多い。


症例ノート
 症例1
    左下小臼歯部の含歯性嚢胞
  症例2
    右下顎部に埋伏した智歯に発生した含歯性嚢胞   

 症例1       症例2     

 症例3
    乳前歯の萌出時に発生した萌出嚢胞