褥創性性潰瘍(Decubital Ulcer)

  

褥創性潰瘍とは 
口腔粘膜の潰瘍は日常歯科臨床でよくみられる病変の1つで、外見が類似していることから診断は必ずしも容易であるとは限りません。
なんらの特徴も示さぬ場合が多いので単なる潰瘍として画一的に扱うことは危険で、なかに適切な処置をしなければ死に至るような疾患の一初発症状として現れることもあります。
それだけに確実な診断と慎重な処置を要し、生検や培養検査を行わなければならないこともあります。
原因によって潰瘍はそれぞれの特有な所見を呈することがあるので、潰瘍の発生部位、大きさ、はじまりの状態、孤立性か多発性か、形状さらに潰瘍縁、潰瘍底、周辺の状態、疼痛の状態、疼痛の性質と程度ほか、患者の年齢、性別、職業、全身状態、特に全身的疾患やそれらの治療薬、放射線照射などが潰瘍に関わっていないかなど、多くの因子について検討し鑑別を行います。

原因
褥瘡性潰瘍は圧迫や摩擦などによる機械的障害による粘膜病変で代表的なものです。
むし歯や破折歯の鋭縁、鋭利な歯や露出した乳歯根、不適合な義歯床縁やバー、鉤、金属冠などの補綴物や充填物、ときに矯正装置による繰り返しの刺激でその部分の粘膜に局所的循環栄養障害を生じた結果、壊死に陥らせて上皮層深く剥離をきたします。
したがって長時間にわたる著しい疼痛をもった潰瘍に進展します。
口唇、頬粘膜や舌を噛む習慣のある場合にも生じ、口腔常在菌の感染で治癒の長引くこともあります。

臨床症状
症状

潰瘍は孤在性で有痛性、通常は軽度です。
不正形で限局的な陥凹として認められ、辺縁周囲は発赤帯が接してみられ、潰瘍底面は平坦で赤色、または肉芽組織表面の壊死により黄白色を呈します。
腫瘍性病変のような隆起性ではなく、結核性潰瘍のように穿堀性もありません。

好発部位
褥瘡性潰瘍の好発部位としては、舌(舌縁、舌尖、舌小帯)、頬粘膜、歯肉と頬(舌)との移行部、口蓋があげられます。

診 断
顕微鏡所見では、重層扁平上皮の連絡が破壊され、潰瘍部は陥凹または噴火口上で、部分的に線維素性浸出物がみられます。
これらの下層には線維性結合織が増殖し、多核白血球、リンパ球、プラズマ細胞、組織球の炎症性浸潤がみられます。
深い潰瘍を形成している場合には、広範な線維化が起こり、瘢痕組織に富み、白桃色の軽度の陥凹としてみとめられます。

治療法
原因の除去によって7ー10日で瘢痕形成もなく治癒します。
しかし、全身状態(未治療の糖尿病、消耗性慢性疾患、老齢)によって組織抵抗力が低下していると治癒が著しく妨げられます。
治癒が長引くと潰瘍壁が徐々に線維化してくるので、生検によって悪性腫瘍との鑑別が必要です。
刺激となる原因を除去することが第一で、刺激性の少ない含嗽剤や消毒剤で洗口し、二次感染には抗生剤や消炎剤の投与を行います。

症例ノート
   
症例1

褥創性潰瘍画像       
    

   症例2
    
       

    症例3