地図状舌(Geographic Tongue)

  

地図状舌とは 
おもに舌背部の落屑性病変としてみられ、地図状の斑紋を生ずる疾患です。
日によって病変の位置、形態が変わることが多いところから遊走輪、遊走疹などの別名もあります。
幼児にはしばしば見られ(
15%にみられるとする報告もある)、成人では1ー2%の発生率と言われています。
若い女性に多いです。

原因
原因は不明で、体質異常、精神身体的障害、内分泌障害、遺伝などいろいろ疑われていますが定かではありません。
気管支炎、鼻炎、喘息などとの関連性もいわれています。
しかし、これらの疾患と関連して粘膜面の被刺激性が高まり再発性急性炎を起こしやすい状態となることを重視する考え方もあります。

臨床症状
症状

舌の表面に爪甲状の大きさ、形態の淡紅色斑が散在し、この部分では毛状乳頭が消失あるいは扁平化していて、なかには発赤した茸状乳頭が点在しています。
このような斑の周囲には、1〜3o幅くらいのふやけた感じの白色ないし黄白色の帯状のふちどりを伴うことが多いです。
舌縁などにこのような斑の小さなものが1個だけ見られることもありますが、多くは舌背、舌縁、舌尖の広域に散在し、さらに癒合したものでは文字通り地図状模様を呈します。

このような変化は日によって、位置、形態、広がりを変えるのが特徴です。
それぞれの病巣はたえず変化しますが、全体的にはきわめて慢性の経過を示し短期間での治療や、あるいは自然治癒は望めません。
疼痛などの自覚症状はないことが多いですがときにピリピリする、しみるといった症状があります。
特に溝状舌と合併しているものでは訴えが多いです。

このような変化は通常舌のみにみられますが、まれに頬粘膜や口唇粘膜にも同様の変化がみられることがあります。

治療法
有効なものはないので経過をみるより仕方がありません。
痛みが強いときにはキシロカインビスカスなどの塗布もありますが、きわめて慢性の傾向を示すので一時的な対症的処置はあまり意味がありません。
特に炎症所見の強いときには、塩化リゾチーム剤などの消炎剤を投与します。

    

症例ノート