エプーリス(Epulis)

  

エプーリスとは
エプーリス(epulis)は歯肉腫ともいわれ、歯肉(ulis)の上(ep)という意味を表します。
現在では歯肉に生じた限局性腫瘤のうち、良性の線維性組織の増殖あるいは肉芽腫を総括した臨床名として用いられています。

組織学的分類
  1.   炎症性エプーリス
     肉芽腫性、線維性、血管腫性(妊娠性を含む)、骨形成性の一部

  2.   腫瘍性エプーリス
     線維腫性、骨形成性の一部

 3.巨細胞性エプーリス

 これらのほかに先天性および裂状エプーリス(義歯性線維腫)があります。

原因と誘因
これらの限局的および内的要因によって形成されます。
     1.不適合な金属冠、充填物、補綴物など器械的刺激
    2.残根や歯石、歯肉縁炎などの慢性炎症性刺激
    3.女性ホルモンなど内分泌の異常関与

臨床的特徴
好発部位
 上顎が下顎に比して約1.5倍多く、唇側に多く、特に歯間乳頭部に発現しやすいです。
好発年齢
 本症は、比較的しばしばみられる疾患です。20歳代から40歳代に多く、女性が男性のほぼ2倍を占めます。

臨床症状
健康な歯肉からは、明瞭に区分される隆起した腫瘤としてみられます。
有茎性のものが多いですが広基性のこともあります。

一般に健常粘膜でおおわれ、表面平滑な球状ないし卵円形のものが多いですが、中には結節状や分葉状を示すものがあります。
硬さおよび色は一定せず、肉芽腫性や血管腫性では軟らかで赤みを帯び、特に後者では赤みが強く易出血性です。
線維性や線維腫性では比較的硬く、さらに骨形成性では含有骨の状態によって硬度が増強します。また淡黄色になります。

大きさは一般に大豆ないし拇指頭大で、発育は緩慢です。
大きくなるにつれて腫瘤基部の骨は圧迫吸収され、歯の動揺や傾斜も起こります。
また
X線所見でも著明や骨の吸収像が多く認められます。


診 断
他の炎症性あるいは良性の腫瘍による腫瘤形成が対象になります。
最も大切なのは癌腫や肉腫で、その経過時に類似した形態をとることがので注意が必要です。


治療法
すべて、外科的に切除します。
この際、発生基部を取り残したり、原因になる因子を存続させたままにしておくと再発しやすいです。
原則的には関連の歯および歯槽骨を含めて、腫瘤を完全に除去すべきです。
しかし、歯の骨植がよい場合には腫瘤の除去後に基底部の骨の表面を削除するだけで良好な結果を得られることもあります。
妊娠性エプーリスでは分娩後に自然消失することもあるので、観血的処置は分娩後に検討したほうがよいです。

症例ノート
   症例1