口腔結核症 (Oral Tubercrosis)

  
口腔結核とは
結核症は結核菌の感染によって発生しますが、近年化学療法の発達、予防対策の強化、衛生状態の改善などによって肺結核をはじめ諸臓器の結核症は減少し、高齢者に多いいわゆる成人病型となったといわれています。
特に口腔粘膜は結核菌に対する抵抗力が強く、この部の結核症は少なく、その頻度は全結核患者の
0.05−1.4%程度といわれています。


原因
口腔粘膜への感染は、結核菌の初感染による場合と二次感染による場合ですが、初感染はきわめてまれで二次感染によるものが大半です。
二次感染の原因となる病原巣は大部分が肺結核で、そのほかの消化器結核などから管内性に、また血行性、リンパ性に起こります。
 

臨床的特徴
好発部位
口腔内における好発部位は、初感染では歯肉・抜歯窩、歯肉頬移行部・頬・口唇などがあげられ、小児または年少者で、一方二次性結核は舌、口蓋、口唇に多いようです。 

臨床症状
症状

口腔粘膜の結核症の病型は多彩で、特に二次結核は潰瘍性結核、軟化性結核、尋常性狼瘡、結核疹に分けられますが、潰瘍性結核が最も多く、その症状は辺縁不規則な表在性穿堀性の潰瘍が単発ないし多発し、潰瘍底は小顆粒状で灰黄白色苔に覆われ強い接触痛があります。
周囲にはほとんど硬結はありません。
また定型的な潰瘍のほかに、周囲に広範囲に硬結を伴ったり(軟化性結核)、粘膜下に鮮紅色やガラス様灰白色の結節を生じたり(尋常性狼瘡)するものもあります。初感染では非特異的で大きさのさまざまな結節を生じ潰瘍へと進行します。
一般に無痛性、易出血性で所属リンパ節の腫脹を伴なうのが特徴とされています。

診 断
 診断は一般に喀痰、唾液、局所病巣からの塗抹および培養による結核菌の検出と、生検による病理組織学的検査によります。
また多くは開放性結核症を身体他部に有しているので他臓器の合併の有無を検査します。
すなわち結核罹患の有無、活動性、潜在性結核の判定、胸部
X線撮影、ツベルクリン反応、そのほか赤血球沈降速度の著明な亢進も重要な診断の要点です。特に悪性腫瘍の潰瘍、梅毒、サルコイドージスとの鑑別を要します。

治療法
最近では抗結核剤の全身投与が主体で、それにより比較的早期に局所の症状は改善されます。
INAHSMPASが一次薬とされており、それぞれ三者の併用が多いようで、難治性と予想される症例ではEBRFPなどの二次薬が用いられます。
そのほか全身的に安静(休養)、食餌療法、環境の注意、口腔粘膜に対しては保存的に処置し、口腔清掃、刺激源の除去に努めます。

症例ノート