顎関節症 |
A:顎関節症とは? |
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顎関節症とは、「顎関節痛、雑音および異常顎運動を単独または併発して経過する非感染性、顕著な炎症病態を欠く症候群」
につけられた名称です。
次のような症状がみられる場合は、顎関節症の疑いがあります。
顎関節症の三大症状
@顎関節の痛み (口を開けるとき、ものを咬むとき)
A開口不全(口が開きにくい:正常開口量38mm以上、約3横指)
B顎関節雑音(顎の関節がカクカク、ジャリジャリと音がする)
顎関節症のその他の症状
開口運動障害
耳痛、耳鳴り、めまい(顎関節や筋肉の異常によっておこることがある)
頭痛

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B:顎関節症の原因
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顎関節症の原因については多くの説があげられています。
咬合異常、下顎頭偏位、筋性、神経性、外傷性、心因性など、これまであげられている説はすべて正しいと思われます。
しかし、個々の例においてはそれぞれ固有の原因と経過があるのでしょうが、少なからず咬合が関与しているものと
考えられます。
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C:顎関節症の症状(病態)からみた分類 |
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顎関節症にはさまざまな病因と症状があります。
しかし症状については、筋症状をもつもの、関節周囲の軟部に症状をもつもの、関節骨部に症状をもつもの、
の3つに大別され、それが単独あるいは合併して発症し経過するとみられます。
T型(咀嚼筋障害)
Laskinの筋筋膜疼痛機能症候群に類似するタイプです。
顎運動時に咀嚼筋群の疼痛をきたすのが特徴です。
最近では咬合異常により筋障害をきたすことが実験的に明らかになって来ました。
U型(関節包、靱帯障害)
顎関節包の内外にある軟部の慢性外傷性病変を一括しているものです。
膝関節、肩関節では靭帯、滑膜など細かい障害部まで診断されているようですが、、顎関節ではそれを
特定できるほどの診断法はまだ十分に確立されていません。
したがって原因の明確な例以外は、診断に多くの問題を残しているといわねばなりません。
V型(関節円板障害)
顎関節症のうち最も特異な症状を示すタイプで、関節円板の障害が主体のものです。
雑音、lockによる開口障害などを認めます。
円板の形態、位置の異常と顎運動時の動態、協調性などの異常のほか、円板の組織的異常、周囲組織との
関連などが基盤になるものと考慮されています。
診断はX線造影、MRで確認されます。
復位を伴う転位と復位を伴わない転位とに分けられ、雑音と開口制限が複雑に関連しており、疼痛よりも
治療が難しいという印象を得ています。
V型ーA (関節円板の復位を伴う転位:関節雑音が主体)
V型ーB (関節円板の復位を伴わない転位:開口障害が主体)

W型(変形性関節症)
顎関節の骨性構成体に変形像を認める症例を指します。
主病変は下顎頭で一部に関節窩に生ずる場合もあります。
X線写真でみる下顎頭の形態はすでに分類が試みられているように、個人差があり、また異常かどうか
はっきりしない場合も少なくありません。
したがってX線像に、その他の臨床症状を加えて診断する必要があります。
また、高齢者の加齢による下顎頭、関節窩、関節結節の形態変化、関節リウマチ患者の著明な下顎頭崩壊、
腫瘍による下顎頭の変形などは、当然のことながら全身状態との関連において処理されるものであると言えます。
このタイプと前述のV型とは何らかの関係が有ると考えられています。
すなわち、円板障害では多くの場合、顎運動の円滑性を欠くことになるので、下顎頭軟骨層に器械的刺激を
与える環境をつくると思われます。
このことからV型とW型は経過が進むにつれて合併または相互に移行することがあります。
X型(TーW型に該当しないもの)
本症の一部症状に精神心理的要素がたぶんに関与している場合のものです。
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治療 |
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前述した各症型に応じて、以下の治療を単独または併用して実施します。
A:薬物療法
@非ステロイド性消炎鎮痛剤
顎関節部の疼痛が強い場合に、短期間のみ使用します。
A中枢性筋弛緩剤
関節周囲の筋組織の緊張緩和を行う目的で投与します。
B:理学療法
@徒手整復
転位した関節円板の整復を目的に行います。

Aその他
経皮的電気神経刺激療法、低周波通電療法、レーザー光線療法、温熱療法、などで主に対症療法として行います。
C:補綴的治療
@スプリント療法
顎関節治療の主体をなすものです。
樹脂(レジン)で作製したもので、咬合挙上副詞ともいいます。
症状に応じて、単純挙上型、前方整位型、ピボット型などが有ります。
A咬合調整
スプリント治療を行った後に行います。
スプリントで咬合の異常部を確認した後に歯牙のごく一部を削合します。
B咬合再構成
やはり、スプリント治療を行った後に行うのが原則です。
金属冠などによる歯冠修復を行い、顎関節に調和した咬合を作り上げる治療です。
D:外科的治療
@顎関節腔内注射
A各種の手術的治療
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