書の7

霊柩車の誕生  井上章一著  朝日新聞社(朝日選書)

b008.gif (16817 バイト)ビブリオマニアにとって、本の帯というのは非常に重要だそうだ。古書の世界でも帯のあるなしで値段が違ってくるらしい。普通に読むときには邪魔で仕方がないものだが・・・。
ところでこの本の帯にはこう記されている。

あの霊柩車の発祥を日本の葬送の変遷の中で解明しつつ近代都市民俗を浮き彫りにする文化人類学の新たな一ページ

まぁ、なにも文化人類学にまで話を広げなくともよさそうなものであるが、朝日新聞だからなぁ、などと妙に納得してしまっている。

わたくしは小学校のとき、友人と「霊柩車友の会」というのを結成していた。会員は、募ったのだが賛同は得られずわずか2名。友人とわたくしのみである。活動は一切行わなかった記憶があるが、そのときの名残か、今でも霊柩車を見るとどうも観察したくなる性癖がある。なかなか車によって細部の仕上げが異なっており味わい深いものだ。全体金色とか、鳳凰がどーん龍がどーんというのや、たしかにこんな車を見れば外国人は最高級リムジンだと思うだろう。ダイアナ元妃の葬儀だったかはっきり記憶していないが、海外の霊柩車は実に味気ない。それに比べて日本の霊柩車(宮型霊柩車、と業界では呼ぶらしい)のゴーカケンランたること!
こんなわたくしだから、書店でこの本を見つけたとき、即座にレジに持っていったことは十分ご理解いただけよう。

ためになる本である。宮型霊柩車は東京、京阪、中京、北陸南部の4つに大別できるそうである。これは大手メーカー4社がこの地区にそれぞれあるからで、業界最大手は中野の「米津工房」だそうである。70%のシェアを占めるというのだからビール会社よりすごい。ここでは日光東照宮陽明門を模した宮型霊柩車まで作っているというから恐れ入る。ちょっと古いデータではあるが霊柩車の総台数とタイプ別の台数なんてのもある。こういったことは「全国霊柩自動車協会」が調べているそうだ。ちなみにこの会の略称は全霊協・・・

図版もたっぷり(モノクロだが)。マニアならすぐ買うべし!!
最後にもう1つ、情報を。
名古屋ではかつて「霊柩電車」なるものが走っていたそうである。

ちなみにこの本の帯の同社の本の宣伝に書いてある「狸とその世界」という本にも非常に興味をそそられるのだが・・・