中野に本店を持つ、必ず駅のそばにある百貨店クラスのあのお店が舞台。
最近、このお店ではある言葉が物議を醸していると聞く。それが正社員の口から出たものか、派遣社員によるものなのかまでは聞き及んでいないのだが。
たとえばお客様にお届け伝票を書いていただく。あるいはクレジットカードにご署名をいただく。用紙とボールペンを差し出してニッコリ微笑みながら、ウリコサンはあなたにこう言うだろう。
「恐れ入りますが、こちらにお宅様のお名前をお書きいただけますでしょうか?」
カードの場合はもっとあっさり「ご署名をお願いします。」かもしれない。
ところがこのお店の店員さんは、あなたにこう言うのだ。
「お名前様をお書きください。」
なんだそりゃ?なぜ「お名前」に様がつく?
この手のすっとこ言葉は、誰かがひょいと使い始めると、それを聞いた更なるすっとこが「そういう言い方が正しいのだ。」と思い込む。あるいは「かっこいい言い方だ。」と。こうして伝播していく。ちゃんとした人が「それは違う」とどこかで歯止めをかけてくれればよいのだが、そのころにはすっとこがすっとこを呼び、増殖したすっとこはすっとこどっこいとなってユーキャントストップだ。
考えようによってはわたくしたちは新たなニホン語誕生の瞬間に立ち会おうとしているのかもしれぬ。
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