罵詈雑言辞典  奥山益朗 編  東京堂出版

bari.jpg (48697 バイト)「世の中に敬語があふれすぎている」「話し言葉が丁寧になり過ぎた」
それがこの辞典を作るきっかけだ、と編者は語っている。編者は「現代敬語辞典」「敬語用法辞典」なども出版している。その正反対の罵倒語の辞典を作ってこそ「言葉は完結する」と。そういうことなのか。そういうことなのだろう。

編者は語る。
日本語は罵倒語に乏しい、と。特に関東圏において。関西はやや豊富だが、それでも他国語と較べれば貧困である。たしかに。関東で聞いた罵倒語といえば「バカ」と「でこすけ」ぐらいだ。寂しいものである。もっと寂しかったのは、この辞典に「でこすけ」が載っていなかったことだ。

この辞典、ちゃんと罵倒語の語源、用法まで書かれている。しかし「用法」といっても・・・・。
敬語辞典であれば、ちゃんと書かれていることを読み、記憶し、実際に使おう、と思うのだが、罵詈雑言では。そのうえ、罵倒する際にはたいていカッときて冷静さを欠いているから、辞典で学んだことがひょいと出てくることなどない。冷静にケンカできる人には極めて実用的な辞書かもしれないが。

よく使われる罵倒語から耳慣れない、あるいは初めて聞く罵倒語まで。約1200項目が収録されている。そしてこの辞典の意義の1つとして「差別語」とされる言葉がちゃんと収録されていることがある。「言葉狩り」によって次々と抹消されようとしている言葉たち。それをきちんと収録してあるのだ。
編者はその前書きで語っている。
「たしかに人を差別するのはよろしくないが、問題は罵語そのものを差別語だとして排除するのは見当違いです。特定の人を罵るような態度や精神構造がよろしくないのであって、罵語にあらぬ罪を被せることは、何の解決にもならないでしょう。」
まったくそのとおりである。