とっても優しいおかあさんがいる。評判の餃子（焼きと水餃子がある。どちらもいいが、わたくしは水餃子が好み）を「おいしいおいしい」と食べていたら、なんと作り方を教えてくれた。もちろんそれだけではうちの餃子は作れないよ、という自信もあるのだろうが。ちなみにこの店のジューシーな餃子のヒミツは、餡にキャベツではなく、塩をして一晩寝かせた白菜を使うことと、隠し味に白乾（パイカル。中国酒）を使うことだそうである。

おいしいのは餃子だけではない。タンメンもうまい。木耳肉（たしかこういう字だったはず。「ムースーロー」と読む。キクラゲと豚肉とたまごの炒めもの）はお薦め。そしてなにより「羊肉館」の名があらわすとおり、羊肉（ヤンロー）炒めが絶品である。
ちなみにこの店の羊肉炒めには２種類ある。肉や具やタレはまったく一緒なのだが。
１Ｆはカウンターのみ。２Ｆには丸テーブルと座敷。１Ｆと２Ｆ座敷で頼むと、厨房で炒めた羊肉が出てくる。甘辛いタレが羊肉にマッチして実にうまい。しかし、できるなら２Ｆの丸テーブルで食べよう。この丸テーブル、まん中にコンロがあり、ドーム状の鉄鍋が置いてある。そう、ジンギスカンである。みんなでわいわい焼きながら食べるジンギスカンは格別だ。

店のおばちゃんたちもいい人ばかりだ。
昔、数人で行ったときのこと。座敷で数品頼み、みんなで食べていたところ、隣りの座敷の客が帰って行った。おばちゃんが片付けに来たのだが、ちょっとしてわたくしたちの席にやって来た。
「あんたたち、よかったら、これ食べない？」
肉団子の皿を手にしている。
「？」
「さっきのお客さんが手つけずで帰ったのよ。野菜炒めとかだったらそういうわけにもならないけど、肉団子だし。間違いなく箸つけてないよ、これは。もったいなくて。」
もちろんわたくしたちが断るはずもない。喜んで食べていると、そのおばちゃん、
「なんか、あまりもの片付けてもらったみたいで悪いね。これサービスだから。」
とビール（これは残り物ではない）を持ってきてくれた。
焼き餃子を食べていたら、オーダーミスの水餃子を「食べるでしょ？」とおかあさんからもらったこともある。別に「卑しい自慢」をしているわけではない（笑）。そういう気楽な家庭的なお店なのである。
わたくしは肩肘張った店より、こういう気楽で温かい店の方が好きだ。それで安くて、なによりおいしければ、なんの文句もないではないか。