どんどん

ジャンル:ちゃんぽん
場所:東京都品川区五反田
ウリコサン時代、数ヶ月に1度、五反田に出かけた。五反田TOCで店外バーゲンがあったからである。百貨店の礼儀正しい接客も楽しいが、戦争のようなバーゲン会場でのざっくばらんな対応というのもまた楽しいものである。
TOCバーゲンにはもう1つの楽しみがあった。昼食である。地下の食堂街に、今日はなにを食べようかな、とわくわくしながら向かうのである。その食堂街に、会場設営を含めて3日間のうち必ず最低1回は行く店があった。
真っ赤な提灯に縄のれん、居酒屋かと思わせるカウンター主体のお店が「どんどん」である。

呑もうと思えば呑める。この店のメニューの1つは「ゲソ揚げ」だった。単品もあるし、「ゲソ揚げ定食」もある。たしかあった、と思う。自信がない。なにせ他人が頼んでいるのを何度か見たことしかないのだ。
この店で頼むべきもの、わたくしを含むほとんどの人が頼むのは、ちゃんぽんである。
多くの中華料理屋には「ちゃんぽん」というメニューがあるが、どういうわけかほとんどの店で供されるそれは、いわゆる「くずかけそば」「あんかけそば」である。具沢山で、スープに片栗でとろみをつけた麺料理。それを「ちゃんぽん」と称す。
では別のちゃんぽんがあるのか。あるある。「長崎ちゃんぽん」と別記してある。「リンガーハット」でおなじみのものだ。
「どんどん」は正統長崎ちゃんぽんを出すお店である。

正統長崎ちゃんぽんとは?
白いスープでなければならない。具沢山でなければならない。イカ、アサリ、たっぷりのキャベツ、たっぷりのモヤシが入っていなければならない。麺は太めの「ちゃんぽんめん」でなければならない。麺を具のたっぷり入ったスープで煮なければならない。
そしてこれはわたくしの個人的好みだが、は大きめのできれば淡いブルー、そう青磁っぽいやつであって欲しい。
もう1つ。もう1つだけ。丼はさておき、長崎ちゃんぽんに欠かせないものがある。「赤板」。縁の赤いかまぼこ。そのあたりで売っているかまぼこ形のかまぼこではいけない。長崎特産の「赤板」でなければ、それが入っていなければ「長崎ちゃんぽん」を名乗ってはならぬ!
4回に1回は頼む、もう1つのメニュー「皿うどん」も美味。

五反田TOC地下という目立たぬ場所にありながら、昼食時にはすぐ満員になるこの店。東京で正統派長崎ちゃんぽんが食べられる店として、押さえておきたい1軒である。