KYOCERA SAMURAI x3.0

現時点での「最後のハーフサイズカメラ」。

話題豊富なカメラである。
まずその構え方が独特。たいていカメラを構えるときは、右手親指付け根と中指薬指小指でカメラ右上部から中部をはさむように持ち、右手人差し指をシャッターボタンに乗せる。左手は一眼レフならレンズ基部を下から支えるように持ち、コンパクトカメラならカメラ左下をしっかり持ってホールドする。ところがサムライ、右手は手のひらで下から支えるように持つ。その状態で指を伸ばすと人差し指が、カメラ本体右側面部にあるシャッターボタンにかかる。さてこのシャッターボタンの上にテレとワイド2つのズームボタンがあり、右手人差し指をシャッターボタンにかけると物理的にズームボタンにはどの指も届かなくなる。ではどうするか。左手をカメラ上部を覆うようにかぶせ持ち、左手人差し指と中指でズームボタンを操作する。この構え方、ほとんどハンディビデオカメラの持ち方である。
発売時のテレビCMに、坂本龍一が出演していたことも話題だった。教授がこの形でサムライを構える姿にはかなりのインパクトがあった。
今、そのCMも、いやこのカメラ自体を知らない人が増えた。そんな中、サムライを取り出し構えると、周囲から注目されること!

デザインで話題をさらったが、その性能もなかなかである。
ハーフサイズカメラ初のオートフォーカス。ズーム、連射、ストロボ内蔵、自動巻き上げ巻き戻し、デート機能にスローシンクロと、現在のオートカメラに備わっている機能がほぼ備わっている。1987年製のカメラゆえ、当たり前と言われればそれまでだが。縦方向前方向に長いカメラゆえ、フィルム装填も底部から前方向に行う。おかげでファインダーはハーフサイズながら横位置である。
後に4倍ズームモデルのx4.0、小型モデルのZ、Zから多重露出機能などを省いたZ2も発売された。特筆すべきはZ、Z2には左利き用モデルもあったことである。たしかに普通のカメラ以上に、このスタイルは左利きの人には使いにくかろう。そのほか極彩色カラーリングの通称「ベネトンモデル」もある。

意外なことにシリーズ中、最も明るいレンズを装備しているのがこの初代x3.0である。京セラズームレンズ25〜75f3.5〜4.3。十分明るいレンズだ。
わたくしの友人にしてカメラの師匠からは、ISO100のフィルムを使うよう薦められたが、どっこいそのときには既にISO400のフィルムを装填してしまっていた。しかしフィルム性能の向上の手伝ってか、思った以上にシャープな写真が夜間室内にもかかわらず撮れたことは驚きであった。

唯一の欠点といえば、AF初期のカメラ共通の、ちょっぴりおバカなAFである。
被写体をフレームにとらえ、軽くシャッターボタンを押すとAF合焦が始まるのだが、ウィ〜ンヴィ、ウイ〜ンと悩んでくれる。ここでいいかな、あ、ここだ、いいややっぱりここかな?と。思わず笑ってしまうときもあるほどだ。

このデザインは京セラのデジカメにその姿を残している。なんちゃってビデオカメラ気分、坂本龍一気分は今でも味わうことができる。