ストレスフリーアーム


パート1
 
 ストレスフリーアームは、かつてラジオ技術誌の89年5月号に石塚峻氏の紹介記事が掲載されました。
 同誌の92年5月号では、大沢久司氏の製作による同アームの試聴記事が掲載されています。
 
 水平方向の応力を回転シェル部分で逃がし、垂直方向の応力をアーム本体の構造で逃がします。
 実際の製作はラジオ技術誌に目を通すだけで簡単に組めるというものではありません。
 製作にはそれなりの工作機械が必要ですし、理にかなったスムーズな動きをさせるためにはかなりの精度が必要です。
 また、調整にはかなりの労力を要します。
 
 私の周辺では、オーディオ仲間のSUMIさんや長谷川さんが自力で製作され、それぞれ素晴らしいパフォーマンスを示しています。
 とりわけSUMIさんは、石塚氏によって紹介された15度の傾斜アングルまで再現しておられますが、その工作に要した労力はさぞかし大変であったろうと推測します。

 SUMIさん宅のストレスフリーアーム
 CADを使って設計されたそうです 
 アルミを使って加工されました
 軽量化のための円形のくり抜きが多数あります
 15度の傾斜アングルは石塚式
 リード線はかなり細い
 ストレスフリーアームの1号機 


アームの製作依頼

 長谷川さんから私用のストレスフリーアームの製作が可能とのうれしい話があり、早速製作をお願いしました。

 アーム全景  アームベースとアームレストは仮り組みです

 写真は私が使用する予定のストレスフリーアームです。
 「石塚・大沢式」を忠実に再現したものです。
 CECのターンテーブルに装着するためには、ベース部分の高さ調整とカウンター・ウエイトのクリアランスの問題(ターンテーブルに接触してしまう)があるため、現在、長谷川さん宅で調整中です。
 
 カートリッジはオルトフォンMC10mk2が装着されていますが、まだリード線は繋がっていません。
 いずれはDL103に変わるかもしれません。

 このカートリッジは、いつも北方向を向こうとします。
 アームの向きを変えても、カートリッジは常に北を向こうとしますので、地球の地磁気の影響を受けているようです。
 ということは、一般的にMCカートリッジを使う場合には「アームの方向も考える」必要があるということですね。


(05年8月)


 長谷川さんとの打ち合わせの結果、アーム全体の軽量化を施すこととなりました。
 待ち遠しいのですが、完成はもうしばらくかかりそう。

(05年11月)


パート2

 ということで、それから待つこと数ヶ月。
 ようやく長谷川さんから完成したアームを受け取りました。

 結局、軽量化のため、「パート1」で紹介したアームを全部作り直したんだそうです。
 見た目では、かなりスリムになっています。
 搭載カートリッジはDL−103です。

 

 外見上の変更点は、
(1) アーム本体材料を角型アルミパイプから、コの字型アルミ・チャネルに変更
(2) 軽量化に伴い、2つのバランス・ウエイトも小型に変更
(3) 錆に対するメンテナンス上の問題のため、ピボット軸及び軸受の材質をオリジナルで推奨されてる「ステンレスとクローム・モリブデン鋼」から「ステンレスとステンレス」に変更。
(4) アームレストをアームベースと一体構造に変更
などが確認できますが、長谷川さんの細かい調整ノウハウの積み重ねもあって、完成度は更に高まっているとのことです。


アームの動き


 ところで、「ストレスフリー・アームはどういう動きをするのか」という事ですが、これは下の写真を見て頂きましょう。 


 2つの平行四辺形が組み合わさっています。
 メイン・ウエイト(左端のウエイト)が取り付けられている平行棒が固定されていると仮定します。
 そうすると、2つの平行四辺形がいくら動いても、メイン・ウエイトの延長線上にある針先位置は固定されるという理屈です。

 そして、この2つの平行四辺形の構造で、垂直方向の共振を逃がします。
 水平方向の共振は回転シェルで逃がしますので、垂直方向と水平方向の共振が分離されることになります。


アーム構造

 回転シェルはRS−A1と比べると大型になっていますが、基本的な構造は変わりません。
 全部で10対のピボット部分があり、それぞれに微妙な調整が必要です。

 回転シェル部分  水平回転のピボット部分
 中央に見える黒い小さな出っ張りがアーム・レスト
 多くのピボットが連動する構造
 調整はかなり面倒
 中央に見えるサブ・ウエイトの位置調整は微妙
 うまくバランスを取ると、平行四辺形が静止します



悩ましいリード線
 
 カートリッジ出力を取り出すリード線は、本体構造の動きをなるべく邪魔しないように配線しなければなりません。
 このリード線の取り扱いが悩ましいらしいです。
 長谷川さんはこれをあるアイデアで解決しました。


 ご覧のように、リード線を支える可動式の吊り具が取り付けられています。
 この吊り具のおかげで、レコードの外周から内周にアームが移動しても、リード線が邪魔な動きをしないように工夫されています。


出力端子

 出力端子はベース部に固定されています。



以前のアームは・・・・

 以前のアームも良い感じだったんですが、分解されてしまいました。
 ピボットの「あたり」をつけるため、かなり時間を費やしたと聞いていたのですが・・・。
 これ、どうなるのかな。



試聴中

 さて、DL103とストレスフリーアーム、電流出力型ヘッドアンプを組み合わせた音をざっと聴いた限りでは、周波数バランス、エネルギーバランスなどが、現用のピカリングとRS−A1の組み合わせと比べても違和感がありません。
 上から下まで共通した音の質感です。
 共振を分離する構造のアームに共通する音の佇まいなのでしょうか。

 特徴的なメリットは歪感が少なく、細かな音を拾いつくすような再生をすることです。
 一方、デメリットとしては、現用と比べて明快な音の立ち上がり感が後退します。
 また、これは使いこなしの問題ですが、何故かSNが悪いので接続コードなどの工夫が必要です。



 只今、電流出力型ヘッドアンプと切り離して、昇圧トランスを使いながらアーム本来の音を確認しているところです。
 

(06年4月)


 その後、接続コードの工夫で光明が見えてきました。
 まず、ターンテーブルの位置を入れ替えて、アーム設置場所を移動しました。
 これによって手持ちケーブルの選択肢が広がり、アーム〜トランス間はH氏製作の細いシールド・ケーブル、トランス〜イコライザー・アンプ間は新たに自作したシールド・ケーブルを使ったところ、SNの問題はクリアしました。音の立ち上がりもかなり改善されています。


ターンテーブルが恥ずかしいお尻を見せています

 現在、SUMIさんから借りたタンゴのユニバーサル型の昇圧トランスを使っています。
 どうやら40Ωより3Ω入力の方が感じが良さそう。

 
 (06年5月)
 


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