私がオーディオを始めた頃、あこがれの雑誌は「ステレオサウンド」でした。
当時は魅力あるライターの方々が興味深い記事を書いておられ、コマーシャリズムとの連携などあまり考えていませんでしたので、製品紹介の記事なども真剣に隅々まで読みまくったものです。
高価な雑誌でしたので、学生時代は本屋での立ち読みが精一杯でしたが、社会人になった一時期は毎号買っていました。
そして、多少の知恵も付いた頃、この雑誌のあまりの商業主義が鼻につきだし、記事の内容も色あせたものに感じるようになります。
その頃すでに長谷川さんとの出会いがあり、自作オーディオの世界も知っていました。
そして「無線と実験」、「ラジオ技術」といった雑誌を見せてもらい、コマーシャリズムと距離を置いた硬派のオーディオの世界があることに気づきます。
MJ/無線と実験
「MJ/無線と実験」は87年から定期購読しています。
リスニングルームの紹介や、音響空間クリニックなどが楽しいですし、読者交換コーナーはよく利用しています。
他の一般オーディオ誌と比べたら、遥かに読者寄りの構成ですので、アンプを自作される方はもちろんのこと、買い替え主体でなく、じっくりと音作りをしたいオーディオマニアにも参考になる記事が多いと思います。
かつては斯界の重鎮、池田圭氏や伊藤喜多男氏が含蓄のある記事を連載されていました。
今でも佐久間駿氏の記事は自作アンプの枠を超えた手ごたえを感じますし、長期連載中の佐伯多門氏の「スピーカー技術の100年」など、過去の技術の記録もなかなか面白いものです。
98年頃の石井伸一郎氏のルームアコースティック(室内音響)研究の連載記事は、部屋の機器配置に大いに参考とさせてもらいました。
ラジオ技術
「ラジオ技術」は89年から定期購読しています。
「無線と実験」より更に硬派でマニアックな内容です。
オーディオ技術の宝庫です。
回転シェル、コロ支持、ストレスフリーアーム、電流増幅アンプ、速度制御スピーカー、富田氏アンプ理論などの記事は本当に楽しませていただきました。
魅力的なライター諸氏、石塚峻氏、大沢久司氏や是枝重治氏などの記事は楽しみにしています。
巻末に通販紹介があり、現用アームのRS−A1はこの通販からオーディオ仲間のSUMIさんを経て入手。
回転シェル、ターンテーブル用ベルト、交換針なども通販可能です。
石塚峻氏や大沢久司氏の記事で紹介されたストレスフリーアームは、私の周辺に2名自作された人がいますが、いずれも素晴らしいパフォーマンスを示しています。
電流増幅アンプと併せ、是非使ってみたい機器のひとつです。
これらの雑誌は「技術系オーディオ誌」というのだそうです。
私は文系で回路図などはさっぱりですしアンプの自作もしませんが、そうした記事以外でもこの2誌は十分に楽しめる内容です。
さて、オーディオを趣味とする年代層は、年々高齢化が進んでいます。
私の周辺でも、若い世代が純粋オーディオに興味を示さなくなっています。
頼りにしていた地元の家電オーディオ店も、大型家電店の攻勢に押されて閉店してしまいました。
先細り感のするこの世界ですが、こうした骨太の雑誌がいつまでも続いて欲しいと願っています。
(05年5月)