賀露神社の祭りレポート

麒麟獅子舞

賀露は鳥取県の中でも大きな港町の1ツである。
そんな賀露にある神社なのだから、当然祭神は海や漁に関する神に違いないと思うのが当然だろう。
しかし、賀露神社の謂われ書きには「山林田畑の守護神として、大山祇命を伊豆国三島神社より」
迎え、創建されたとある。港町の神社の御祭神が山の神とは面白いではないか。
ところが、海から寄り来る漂着神の信仰があったらしく、御祭神五柱の中の吉備真吉備が
その信仰と結びついている。
しかし、そういった 信仰は、いわゆる正史には見えず、民間伝承レベルの域を脱してはいない。
即ち、そのへんのナゾはハッキリとは解らないのである。

それはともかく、現在では賀露町は漁業の町であり、
賀露神社の祭りは完全に海の祭りになってしまっている。

ところで、賀露神社の祭りは、通称・明神さんの祭りといわれ、例年四月の最終日曜日に
行なわれる。また2年に一度は大祭であり、豪華な神幸行列を繰り出す。

武内が見たのも丁度コレで、コレは公式祭典のあと、社殿内で『御立ちの神事』を行ない、
麒麟獅子、奴の大名行列、御幟(おのぼり)の武者行列、御輿、神職と続く行列が、
日本海上の御旅所に神幸し、そのあと賀露沖にまで船神幸するものである。

御幟の武者行列

『御船下りの神事』

この神幸行列は、千代川べりの御旅所まで続く。ここで、『御船移りの神事』を行ない、
御輿はもとより、行列に参加した者全員が、大きな箱船に乗って、ゆっくりと第二御旅所に向かう。
賀露沖の鳥ヶ島近くまで賀露神社の御神霊に神幸してもらい、航海の安全や海の幸の多きことを
祈る神事である。これを『御船下りの神事』といい、賀露地区漁業民の祭りの中心をなす
ものである。箱船の上では、麒麟獅子舞の奉納があり、賀露神社の正面に来た時には祝詞が
奉上される(とあるが、陸からは遠くて確認できない)。
第二御旅所へ着くと、今度は『御船上がりの神事』を行なう。これは、前述した漂着神の勧請、
吉備真吉備の上陸をなぞるものであるとされる。

また、見ていないので最後に付け加える形となったが、祭りの4〜5日前の吉日を
選んで行なわれる神事に『もみ火の神事』がある。これはウツギの枝の火鑚杵(ひきりぎね)を、
檜の板の火鑚臼にもみ込んで、聖なる火を鑚り出す神事であるが、これに奉任するのは氏子の中から
選ばれた満20歳になる青年であるそうだ。
賀露神社では、前年の祭りの際に幟武者に参加した若者が、翌年この『もみ火の神事』に奉任し、続いて
麒麟獅子を舞うことになっている。
こうして、これら3ツの役を務め終えて、はじめて賀露地区の青年として認められるというから、
ここには成年式における一種、成年戒的な意味があったといってよかろう。
しかし、現実問題として、年頃の若者が少ないというのがあげられる。
鳥取といえば全国で1〜2位を争う過疎地であり、だいたい高卒で県外に出てしまう若者が非常に多いのだ。
それ故、祭りに参加する若者は、現地の者だけでなく県外者の大学生などもいると聞いた。

こうして、また、だんだんと祭りの本質が失われていくのかと思うと、少し悲しくなってしまう武内であった。

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