継子落しの滝

所在地:鳥取市覚寺

↑継子落しの滝

帝釈天のおまつりしてある摩尼寺の参道にそって小さな谷川があります。
摩尼川といって、摩尼寺のある喜見山や、あたりの山から覚寺の村をぬけ、
浜坂を通って袋川にそそぐ川です。
この谷川が、もう少しで覚寺の村へそそぐあたりに滝となって落ちているところがあります。
これを「継子落しの滝」とよんでおり、次のような伝説が残っています。

昔々の事。鳥取の近くに継子のある夫婦がありました。
いつの世でも、継子は随分いじめられましたが、この夫婦も例外ではありませんでした。

「ねえおまえさん、あの子を早く何とか始末しなければねえ・・・」
「そうだなあ、いい方法はないだろうか」

そんなある日の事でした。夫婦は子供を呼んで言いました。

「今日は摩尼寺へ連れて行ってやろう」
「とても有り難いお寺だよ。少し遠いけどしっかり歩くんだよ。わかったねえ」

夫婦は無理やりに子供を促して出かけました。
覚寺村を抜けると坂道になり、透き通るような流れにそってタニウツギの花が綺麗に
咲いていました。滝のある所まで来た時でした。

「お前の手を出してごらん」

おかみさんは急に子供の手を広げて見ました。手はそんなに汚れてはいませんでしたが、

「なんて汚い手だこと。こんな手で拝んだら罰があたるよ。
さあ、そこの谷川の水で綺麗に洗いなさい」

と、子供を引きずるように滝の上の流れに立たせました。
子供は言われるままに小さな両手を丁寧にこすり、無心に洗っていました。
その時です。おかみさんは子供の背中を滝壷めがけて、勢いよく突き落としてしまいました。

「アッ!おかあちゃんッ!」

子供が泣き叫ぶと同時に小さな体はしぶきをあげ、渦を巻いている滝壷の中に、まっさかさまに落ちてしまいました。
夫婦は互いに顔を見合わせて、苦笑いしました。人通りもなく、誰もそれを見た者はありませんでした。
夫婦はそれっきり摩尼寺へは参らず、くるりと向きを変え急いで家へ帰っていきました。
とうとう厄介払いができたと家の戸を開けたとたん、子供の履いていた小さな草履が、
きちんと揃っているではありませんか。まさかと思って部屋へ駆け上がってみると、
案の定滝壷にはまって死んだはずの子供が一足先に帰っていたのです。

それにしても、一体子供の命を救ったのは誰だったのでしょう。
きっと摩尼寺の帝釈天が身代わりになってやられたにちがいありません。

子供は、そのあくる日から夫婦の前から姿を消し、どこかへ行ってしまいました。
そんな事があってから、人々はその滝の事を
「継子落しの滝」と呼ぶようになったといいます。

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