湖山の猫薬師
(鳥取市湖山町)


↑猫島

昔、湖山長者の祈願所が賀露(かろ)町にあったが、長者の没落したあと祈願所の
薬師如来が湖山町の「そら山」に飛来し、湖山町に薬師堂ができた。
この時はまだ「湖山の薬師さん」と呼ばれていたが、「湖山の猫薬師」
呼ばれるようになったのは、次のような伝説があるからである。

「湖山薬師」の坊主が淨西坊だった頃の話。
お勤め中、仏壇の下に何やら光る物があるのに気付く。
調べてみると、赤毛の猫のミイラであった。

その夜淨西坊が眠っていると、この猫が夢の中に現れ、「自分は湖山長者に飼われていた
猫で、長者の田んぼが一夜のうちに池になってしまった時に流されて溺死した猫である」と言う。
また猫は、「湖山池の小さな島に「猫島」と呼ばれる島があるが、それは自分の
死体が打ち上げられ、そこで干からびたからそのような名前がついたのだ」とも言った。
そして猫の「自分は長者さまに信心を教えられ、それを心がけたので、動物の身を離れ
仏になる事を許された。自分は今後もここのお薬師さまにお仕えし、世の人々に
ご利益を授けたいと思っているので、住職にも力を貸して欲しい」という言葉まで聞いた所で、
淨西坊は目が覚めた。

ふと、淨西坊は、5〜6年前にふらりとやって来て棲みついた赤毛の猫が人間のように
薬師を拝んでいたかと思うといつの間にやら姿を消した、という事を思い出し、
あの時の猫は湖山長者に飼われていた猫が化けて出たもので、今度はミイラになって
現れたのに違いない、と淨西坊は考え、猫のミイラを厨子(ずし)に納め、
ご本尊であるお薬師さまの右側のところに祀った。
この時から
「湖山の猫薬師」と呼ばれるようになったと言う。

鼠のいる家では、この猫薬師の護符を授かると効果があり、お礼に鼠の玩具を
差し上げるという慣わしがあるそうだ。

また、失せ物がある時、このお堂で祈祷してもらうと、すぐに場所がわかるとも伝えられてる。

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