竜王滝
(日野郡日野町)


↑竜王滝

日野郡日野町に「滝山公園」という渓谷を利用した自然公園がある。
この公園の中ほどを左の山手へ、老杉の茂る木の根道の奥に「滝山神社」があり、
社殿の右奥にそそり立つ垂直の崖からは糸を引いて滝が流れ落ちている。
落差20mの絶景を誇る竜王滝である。「滝山神社」建立には次のような伝説がある。

正平年間のこと、須賀郷の内井ヶ城の城主菅高左衛門は、名君として誉れ高い人物であった。
毎日のように領民の田畑を訪れては、村人を励ましていた。
ある年のこと。長い風雨が続き、田畑が荒れて手のつけられない状態になった。
早速、城内に祭壇を造った菅高左衛門は、七日七夜の断食を行い、「領民たちが一日も早く
楽な暮らしが出来るように」と祈願した。
満願の夜、城主が座禅して一心に祈願していると、どこからともなく美しい音色が流れ、
その音色の方に顔を上げると、白い雲の上に美しい顔立ちの天女が乗っていた。
城主はしばらく呆然とその天女を見つめていた。
「あなたのお百姓を思う心は何物にも変え難いものです。この里の南八町の林の奥に、
美しい一条の滝があります。そこに祠を建てて
三穂津姫命を祀り、この地方の守護神として
崇敬してください。そうすれば、きっとあなたの願は叶えられるでしょう」と言うや、その天女は
いずこともなく静に去っていった。
早速、城主は家来を連れて、その滝を探しまわった。ようやくのことでその滝を探し出し、
天女が語ってくれた場所に立派なお宮
(滝山神社)を建立して三穂津姫命を祀り、
領民達の安穂を祈願した。その後、この里に暮らす村人たちは、幸せな毎日を
過すことができたという。

「滝山神社」竜王権現ともいうが、
この滝には天狗が棲んでいて、誕生日を迎えない赤ん坊を連れて行くと首をかき取られるという
古い伝説がある。小泉八雲は、この天狗幽霊と解釈し、「幽霊滝」という作品を書いたという。

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