平成15年度  青年・女性建築士の集い  中四国ブロック山口大会
  
<<発表文>>


 今日は これまで私が福祉住環境の勉強や西伯町地域貢献事業などの活動を通して体験した事などから私が感じた事を発表させていただきます。
 そして そこから何かを感じ 行動に移していただけたら と思います。

 私、鳥取県建築士会 西部支部 の 河津 と申します。 よろしくお願いします。

 まずは、福祉住環境に興味を持ったきっかけから お話したいと思います。

 4年前のある日、一緒に住んでいる祖母が病気になり、しばらく寝たきりになった事で足が弱ってしまい、移動するにも四つんばい歩きになってしまいました。 そして家にいる事が多くなり 元気も少しなくなってしまいました。
 それでも自分で身の回りの事は自分でしたい! という祖母を見ていて建築に携っている私が何か出来ることはないかと考えていたとき福祉住環境コーディネーターという資格に出会いました。


 これまで、仕事でもバリアフリーについては知っているつもりでしたが福祉住環境コーディネーターの関連の勉強会や講習会に参加し、今まで思っていたバリアフリーは上辺だけだった事を思い知らされました。
私が1番衝撃を受けたのは  “住宅内での事故” の多さでした、1年間に7800人以上のお年寄りが住宅内での 転倒や 入浴中におぼれるなどの事故によって 亡くなっておられるのです。
亡くなるまではしないまでも、体が不自由になる方の数はもっともっと多いのです。
日本の昔ながらの住宅は、お年寄りにとっては危険がいっぱいなのです。

 健康なお年よりでも、体の不自由になってしまったお年寄りでも その方の身体機能に適した住宅であれば “住宅内での事故”が減少し 住み慣れたお家でイキイキ暮らせるのではないでしょうか。



 そして、先ほどお話した私の祖母ですが、大きな改修はしていないですが 手すりの取り付けや入浴いすの取り替えなどで 祖母が自分ができる事を 少しでもサポートに出来るよう考え設置しました。

そして今では 杖を付いてですけど 立って歩けるようにまで回復したのです! 
さらに 以前は断固 行かない!と言っていた デイサービスにも週1回通うほどに 元気になったのです。
そのような事から、自分で出来る自信が イキイキした生活へとつながる事を 身を持って実感しました。



 この体験や せっかく取った資格を生かして何か出来ることがないかと考えていた時、私が所属している西部支部の若手の団体  「あおぞら部会」のホームページ上で  一般の住宅を介護住宅に改修する提案をする事になりました。 知識を高める為に 講習会を開催したり 勉強会に参加する事によって 部会のみんなの住環境整備の大切さの意識を高める良い機会となりました。

 そして、ここで学んだ事を自分達の知識だけで終わるのではなく  一般の方にも伝えたい!と考えていたところ環境や福祉について重点的に取り組んでおられる 西伯町より、鳥取建築士会西部支部の方へ、町内の住宅におけるバリアフリー化の推進の 協力をしてほしいと 要請があり 私も 西伯町地域貢献事業に参加する事にしました。






 まず初めに、西伯町民の方に“バリアフリー”の意識と関心を持ってもらう為、手作りでバリアフリーのチェックリストと、講演会の案内を 全世帯に配布し 防災無線でも呼びかけて頂きました。




講習会では約30人の参加がありました、バリアフリーの実情や、改修のポイントと、補助金についての説明といった内容を中心に行いました。


 それだけでなく 個別相談会を行い その中で 依頼のあった6軒の方に対して 実際に現地を見させていただいた上で、わたし達の方でバリアフリー化の提案をさせていただく事としました。

 私が担当したのは 94才のおばあさんでした。2年前に住宅の段差で転倒し骨折され、足が不自由な為に行動がゆっくりで 特に立ち上がる時などに介助が必要な状況で 基本的には自分で身の回りの事は自分できる方でした。
 まず最初に感じた事は、おばあさんの介護を もうすでに高齢の60才代の息子さん夫婦がされている事でした。 そして 住宅内は 部屋の出入り口などに段差が目立ち、特にトイレは使いづらいものでした。このままでは、介護が必要となる方が増えかねません。
 そのような事を踏まえて、 段差の解消と手すりの設置はもちろんの事、おばあさんが特に立ち上がりが難しい玄関周りは おばあさんの動きを体で覚えた上で ケアマネージャーさんと検討を行いベンチや手すりの位置を決めました。
 さらに、夜はポータブルトイレを使われているとの事だったので、おばあさんの部屋より直接トイレに行けるように計画しました。
 そのような事から 介護をしてもらっているという意識をなくし 生活に自信を持ってもらう事によって、家族の介護の負担が少しでも少なくなればと願いを込めて提案しました。

 反省点は、直接おばあさんからお話を あまり聞けなかった事です。 少しお話をした後言葉少なに ご自分のお部屋にこもってしまわれました。   
おばあさんの耳が遠くて話がかみ合わなかったのと、自分の為にお金を使って改修する事に、引け目を感じておられるのかもしれません。
そういった心のバリアを解消するには 1回の現地調査や聞き取りでは少なすぎました

もっとじっくり 対象となるお年寄りと 向かい合う事の大切さを感じました。
この事業を終えて、テキストでは分からない “介護の現実” を肌で感じる事が出来ました。
そして、もっと知っておかなくてはいけない事が多くある事に気付かされました。
私達はこれからもこの様な地域貢献に更に磨きをかけて進んで行きたいと思います。





 最後に 今では公共の建物や、新築の住宅ではバリアフリーは 当たり前になりつつあります。しかし、本当にバリアフリーが本当に必要なお年寄りが暮らす昔ながらの住宅は、ほとんどと言っていいほど整備されておらず、整備しなくてはいけない のという事に気付かれていない方が多くおられるのが現実なのです。
 バリアフリーとは  段差を無くし 手すりなどを付ける事が目的ではなく、お年寄りが生きがいを持って生活していく事が最大の目的です。
その為には 私達の様な建築に携わる者と、福祉に携わる者とが 一緒になって直接働きかけていかなくてはいけません。
 それが、バリアフリーが特別なものではなく 当たり前の社会になる為の 第1歩なのではないでしょうか!?
 それには まず “介護の本当の現実”を知ってください!
ましてや、建築に携わる者として 必ず 出来る事があるはずです。 



 まずはできることから初めましょう!!




  以上です。ご静聴ありがとうございました。



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