★日本海新聞17年10月26日掲載「ピエロの赤い鼻」 紹介文


 レジスタンスの親友描く 1960年代のフランス。愛すべき小学校教師のジャック(ジャック・ヴィユレ)は、毎週日曜日の朝になると一家を巻き込み大騒ぎをしている。
赤い鼻をつけたピエロになってお祭り会場に集まってきた観客を楽しませ、笑わせるためだ。
 この繰り返される日常のやりとりに、妻のルイーズ(イザベル・カンドリエ)は愛情たっぷりのおおらかさで夫を見つめ、長女フランソワーズ(ニナ=パロマ・ポーリー)はパパの出し物より恋人とのあいびきが目当てになっていた。
 ただ一人、朝から浮かない顔でトイレに閉じこもっているのは、14歳になる息子のリュシアン(ダミアン・ジュイユロ)だ。
彼にとっては大好きなパパが、どうしてアマチュアのピエロに扮して笑いの的になっているのが不思議でならないのだ。
 この日もそんな父の姿に仏頂面が消えないリュシアンに声をかけたのは、ジャックの古くからの親友であるアンドレ(アンドレ・デュソリエ)だった。
アンドレは、どうしてジャックが“赤い鼻のピエロ”になるのかを、リュシアンに語り始める…。
 時はドイツ占領下のフランス、第二次世界大戦末期。当時も小学校教師のジャックと、今も昔も売れない帽子屋のアンドレは、酒場の人気者、ルイーズをめぐる恋のライバルだった。
二人はルイーズに“いい顔”を見せようと、にわかにレジスタンス熱に浮かれる。
折しも、連合軍のフランス侵攻を今か今かと待ちかねている時節柄、二人がターゲットとしたのは、ドイツ軍事輸送の鍵を握る鉄道ポイントの切り替え所を深夜に爆破することだった。計画は成功。しかし…。
 監督、ジャック・ベッケルのまなざしはどこまでも優しい。
ちょっとした虚栄心からレジスタンスに身を投じた二人の親友の物語を縦軸に、それから十数年後、人前でピエロとなって笑いと喝采を浴びる父親を恥ずかしく思う息子の葛藤を横軸に、悲劇と喜劇を絶妙に交錯させる手腕は、フランス映画ならではの芳醇な人間ドラマの味わいそのものだ。
 「クリクリのいた夏」から四年、牧歌的な風景の中で、生きることの至福を、人との出会いや友情、さりげない心の機微を丹念につづって描く監督、ジャック・ベッケルが再び私たちに届けてくれるのは、切ないまでにつらく美しいノスタルジア。
 インターネットの普及などとともに、希薄になっていく気がする人間関係。どこかに置いてきてしまったものを、取り戻してみませんか?

(米子シネマクラブ、馬田聖子)



感 想 集

★とても良かった。ピエロになったドイツ軍の兵士が一生懸命なぐさめる〔穴に落ちた4名〕ところが何ともいえない。(米子市 77歳 女性)

★やはり映画は素晴らしい。人間の強さ、優しさをみごとに表現してくれる。それにしても庶民のあの優しさの一方で戦争を仕掛けるのもまた人間だ。自分も年を重ねたが、勇気をもらった気がする。(米子市 65歳)

★隣の若い女性(独身)と始まるまでおしゃべりをしました。「今、平和を当たり前と思っていても憲法を変えて戦争をしそうな気配ネ」と。観終わってから「深く考えられる映画でよかった」と話し合いました。

★感動!感動!感動!戦争さえなければ敵、味方なく愛せた人間たち。感動を与え、戦争を告発する素晴らしい映画だった。こんな良い映画をみられるシネマクラブをずっと存在させたいですね。私も、一人、二人に声をかけてみます。(映画大好きシニア)

★考えさせられるのは、テロは相手を選ばないこと。浮ついた愛国心によるテロがどれだけの惨事を招くか認識すべき。そして本当の勇気とはテロのような安易な行動とはかけ離れた所にある。(縄 勝文)

★秀逸。こういう映画が「らしい映画」ですね。(井山宣和)

★思わず拍手したくなるような感動! 作り事でない本当の映画(米子市S.M 65歳.)

★戦争下の色の少なさ。ドイツ撤退後の色のあざやかさの対比が印象的でした。感動しました。(米子市 32歳)

★素晴らしい作品でした。戦争は悲しいことばかりですが、こんな人間の出会いがある様に、世界や人間の心は必ず通じ合えるものがある事を強く感じました。(米子市 40歳)

★もっと多くの人に観てもらいたいと強く思いました。戦争とは人をどう混乱させてしまうかと考えるよい映画でした。

★フランスとドイツのカケヒキでピエロのおじさんが演じていたが良かった。(坂本義文)

★善意とユーモアあふれるなかでの戦争の悲惨さ。たくさんの子供、大人に観てほしい。(66歳 女)

★今年度初めて来れました。“武器としての笑い”という本がありましたっけネ。姉が死んだ3日後には家族はジョーダンを云わずにはいられませんでした。私たちも大笑いせずにはいられませんでした。(50歳 主婦)

★声高に反戦を歌うこともなく、笑えて泣ける人のやさしさが心にひびくとてもよい作品でした。(40代の美女)

★フランシュ風のウイットにつつまれた、非常にシリアスな映画でした。感動というような言葉で表現できませんが、非常に良い映画でした。(塚田謙介)

★久しぶりに映画で泣きました。赤い鼻がころげ落ちてからずっと泣きました。人間の素晴らしさに心を打たれました。生きていて良かったと思える映画を観て幸せでした。戦争は絶対に嫌です。ボランティアで運営してくださる皆様ありがとうございました。(米子市 60歳)

★ドイツ兵のピエロには感動しました。旧日本兵の中にも同じような人達がいてくれたら、沢山いたら嬉しいですね。フランス映画は音楽がすばらしいですね。じっと聴き入っていました。(米子市 62歳)

★映画が終わって大きな、大きな拍手をしたくてたまらない気持ちになりました。涙が出て涙が出てとまらなくなりました。こんな映画に会えるから、わけのわからないヘンテコな映画があってもシネマクラブは退会できないと思いました。(都田悠子)

★結果の予想がついたのにとても感動しました。多分、登場人物の一人一人の気持ちがとても伝わってきたこと、それから毅然とした態度、ドイツ兵の赤い鼻のピエロさんだけでなく、その他の人たちのむなしさなどがそのまま伝わってきて、頭でなく気持ちで見ることができたように思います。(伯耆町 33歳)

★戦争の映画をみるたびに「戦争をしたい人より平和に暮らしたい人の方が多いはずなのにどうして…」と思います。そして理不尽な目にあうのも平和に暮らしたい人たち。時にはコミカルな軽いタッチの中に、深く考えるべきことが映画でした。(伯耆町 40歳)

★戦争下の異常ななかでも、人間愛を忘れないドイツの兵士。4人の男たちを救うために、犯人だと名のりを上げた男、その妻の勇気。ピエロを演じている彼の中に表れ、話を聞いた息子の笑顔がとても輝いてみえた。(小林和恵)

★「ライフ・イズ・ビューティフル」のような、主人公自身の勇気ある行いの話でなく、他者の勇気によって救われるという話であるところに深さを感じた(坪倉)

★戦争物は究極の人間性が出るので好きです。今回の映画の主人公はドイツ兵のピエロ「ゾゾ」で、全てが表れていたように思います。(眠り姫) ★人の思いというものは、しっかり伝えられていくものだと教えられる思いです。

★最後がすごく心に残った。

★絶望の間際にも希望があると笑わせてくれた兵士の表情が素敵でした。きっとピエロをしているプゼはその日の彼とそして犯人になってくれたポイント切替人を忘れないためにピエロをしているのだろうと思いました。

★戦争を通して生命は尊いものだということを思った。(米子市 40歳)

★ピエロから連想されるストーリーとは私にとっては異質な感じがしました。唯一線路詰所に勤務していたフランス人のおじさんが自らの命の短いことを悟って、人質4人を助ける為、自分が爆破の犯人だと妻に言わせる、この勇気には脱帽、感動しました。(MI)

★理不尽な事を(人や組織)はある。絶望もするだろう。今、身の回りにある不幸をなげくもよりも、笑いを持とう。心に暖かいものを得た気がします。(宇田川靖)



      
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