★日本海新聞18年8月21日掲載「ヴェラ・ドレイク」紹介文

「いのち」の尊さと女性の苦しみを描く

  1950年のロンドン。愛する夫と成長した二人の子どもとの団欒を何よりも大切にするヴェラ。隣人には優しい心遣いを忘れずに接し、一人暮らしの母を見舞うことを日課にしている温かい心を持ったヴェラ。
  そんな彼女には誰にも言えない秘密があった。ある日、その秘密が白日のもとに明らかになり、犯罪者の烙印を押され、冷徹な法のもとに裁かれていく。その時、夫は彼女を信じ、その父の姿に家族はもう一度固い絆で結ばれていく。と、これがこの映画の筋である。この映画が家族愛、命、正義などをヴェラの行動を通して問いかける中で、ふと日本の少子化問題が胸をよぎった。
  「メンバーが足りません」というサッカー選手がつぶやくCMがあるが、「こどもがたりません」と言い換えてみる。人口問題は常に国策の一つであり、戦争中は「産めよ増やせよ」で大家族が普通だった。
戦後は人口が爆発した。団塊の世代と言われる人々は戦後に生まれた人たちである。食料が足りない、住宅がない、ないものづくしで人口抑制がはかられた。優性保護法から母体保護法に改められたけれども、「産む・産まない」という女性の気持は社会の中で管理されながら、現代まだなお解決されないでいる。
  さて、この映画は縦糸に家族愛、横糸に「いのち」の尊さと女性の苦しみを描いている。女性の苦しみを黙って見逃せなかった「無垢」な女性ヴェラは、何ものにもかえがたい「いのち」を見落としていた。「いのち」はその人のもの。いまだに自立できない女性の「性=生」は社会の動きと密接につながっていることを映画は語っている。
  この映画は、ベネチア国際映画祭、他の世界中の賞をとり、イメルダ・スタウトンは14もの主演女優賞を総ナメにした。イメルダはヴェラなのか、ヴェラがイメルダなのか、その迫真の演技には感銘を覚えた。
この映画は是非たくさんの人に見てほしい。特に老いも若きも女性に、いやいやこれは男性がしっかり見るべき映画である。そしてどんな視点でこれを見るか、私としてはとても関心がある。

(米子シネマクラブ会員 畠山和子) 



感 想 集

★ヴェラ夫人のような映画を見た事がないので、何と言ったらよいか言葉がないが、すばらしいという思いは多分にあった。あの誘導尋問の静かなすごさ、本人の愛情ある無知と言うか、ヴェラ夫人役の人の演技に心から感心した。家族の苦しみ、夫の苦しみ、つらいですね。(米子市 竹内すみ)

★涙は出なかったが、感動はあった。とても古い作品と思ったが、2004とはびっくり。でも主題は法律の非情さか?(いとうひでみ)

★全く善意に満ちた行為が、法を犯し、人命まで危うくしてしまう結果を招いたが、とても重い意味を持った映画だった。同じ罪を犯した女性が、再犯で牢獄に入っているというのは、彼女の優しさ、善意の心の強さからみて、もしかしたら又してしまうのではというあやうさを感じました。(56歳)

★このテーマは女性にとってとても重く辛いものだったことがよく分かる映画でした。

★世界大戦後間もない1950(昭和25)年当時、戦勝国とて庶民の暮らしは貧しく、その貧しさが故に犯され、苦悩する若き女性の姿は切なく胸の痛みを覚える。そんな女性を“助けんがため”医者でも婦人科医でもない一人のおかみさんが“消毒薬を注入”……とする行為も無償なるが故に、わらをもすがりたい者にとっては、まさに救いの神であった 筈……。それにしても幸福なクリスマスの日に警察の手が伸び、一転してどん底状態に陥るとは誠に皮肉であるが、知らなかったではすまされない現代社会にあって、あらためて家族の絆とは如何に在るべきかを問われている様な気がしてならない。(米子市 70歳 男)

★考えさせる作品だと思いました。

★女優さんがすごかった。生ある人間の人間らしさを知らされた。映画はいい。

★女性として家政婦をしながら、女の子の「妊娠」をおろすシーンは良かった(坂本義文)

★シビアな映画でした。優しさ故に犯罪行為を行なった理不尽さ。しかし、罪は罰せられなければならないのは間違いないのだが。加罪者側の視点に立ったストーリーは、特に妙に被害者に厳しい日本のメディアも考慮すべきではあると思う。(米子市 36歳)

★とても重い!

★イメルダの演技はとてもとても素晴らしかった。(米子市 40歳)

★1950年という時代設定。思ってもいなかたヴェラの行為、このような内容のムービーと予想外でした。よく後程じっくりかんがえてみたくなるシネマでした。(米子市50歳代)

★悪くはないけど、あまり観たいテーマではないようです。

★家族一人一人の心の動揺に感動しました。お父さんの存在が大きかったですね。弱い立場の娘さんといいなづけの男性が“最高のクリスマスをありがとう”と言った時、すばらしい人だとほっとしました。

★家族の絆の強さを感じられる話だった。もしヴェラが金を受け取っていたら許せないだろうが、受け取らないで行なっていたのだから良いのではないかと思う。

★よく考えてみたい。私の身近にも似たようなことがあったのに。戦争直後の社会背景ということも考慮に入れる必要がある。(米子市 57歳)

★重いテーマでした。ヴェラが罪を犯しても、夫が変わらず接する姿、娘の婚約者もとても心が広くて感動的でした。(境港市 おばちゃん)

★法に触れる行為であっても、誰がヴェラを有罪と断言できるんだろうか。(米子市 58歳)

★入会して初めての映画でした。米子ではなかなか見れない映画を見ることが出来てよかったです。主演のイメルダの圧倒する演技力と、事が起きたときの家族の結束をひしひしと伝わせてくれました。(米子市 36歳)

★非常に重たい内容の映画でした。知らない人ばかりでしたが、皆演技が上手い。ドキュメンタリーのよう。ところどころに出てくる「お茶」が心温まる小道具でした。クリスマスシーン、それぞれの立場をチョコレートを使って上手く表現されていた。最後の終わり方がちょっといい、もうすこし先が見たかった。(E・T)

★重い映画である。善意のかたまりのヴェラがした罪。しかし、格差のある社会、貧困からこういう“堕胎罪”が昔はあった。男社会、貧富の差、いろんなことを考えさせる映画だ。終わり方(刑務所、家族の沈黙)も問題を投げかける終わり方だったと思う。(米子市 57歳)

★明るい家庭が一転して暗くなってしまう。これからも重く扱われる問題を突きつけられた。(米子市 41歳)

★最初はおもしろくなかったけど、後半はよかったです。(坂本順一 56歳)

★イギリス映画が好きなので期待して来ましたが、社会派映画はどうも……。もっとドラマティックなものを観たい。今日はちょっと……。(女 68歳)

★やさしさとは……。白か黒かと決められない事って多いと思います。世の中の問題として法律では裁けない事と思います。






      
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