★日本海新聞18年10月31日掲載「ブロークン・フラワーズ」紹介文

昔の恋人探しの旅

  今回の作品は、ジム・ジャームッシュ監督の最新作『ブロークン・フラワーズ』である。
  物語はIT成り金で金持ちになったものの、女ったらしで無気力人生を送っている中年男、ドン・ジョンストン(ビル・マーレイ)のもとへ、二十年前のかつての恋人であり、あなたの子どももいる、という内容のピンク色の手紙が届いたことから始まる。差出人不明で消印は判読不能。おせっかい者の後押しで、かつての恋人たちを訪ねる旅に出ることになる。
  ジャームッシュは1953年、米国オハイオ州生まれ。ニューヨーク大学でニコラス・レイ監督の助手を務めていたころ、映画製作の現場とかかわるようになった。その中でヴィム・ヴェンダースとも親交を結び、彼の製作を手伝った折に余ったモノクロフィルムをもらって『ストレンジャー・ザン・パラダイス』を製作し始めたという。
  彼はその後、『ダウン・バイ・ロー』『ミステリー・トレイン』『ナイト・オン・ザ・プラネット』『ゴースト・ドッグ』などを作る。仕事、旅行、脱走と目的は違うが、移動することが物語の重要な要素として描かれている作品が多い。
  ヴィム・ヴェンダースはかつてロードムービーの代表作とも言われる『パリ・テキサス』を作った。家族を描いたこの作品の約二十年後に新作『アメリカ、家族のいる風景』を発表。自己中心的な映画俳優が、過去に関係を持った女性に子どもがいるということを知らされ、訪ねていくという物語である。この作品と『ブロークン・フラワーズ』は、昔関係のあった女性と存在も不確かな子どもを訪ねていくという共通点があり興味深い。
出演者の一人、ジェシカ・ラングは『アメリカ、家族のいる風景』で重要な役を演じている。『ブロークン・フラワーズ』では主人公とどういう関係か気になるところである。
  本作品の注目点として、移動のほかに、送られて来た手紙の色であるピンク色の品々が登場する。皆さまも昔の恋人探しに出るドンの旅にお付き合いいただくとともに、ピンク色探しも楽しんでいただきたい。

(米子シネマクラブ会員 熊谷修一) 



感 想 集

★ジム・ジャームッシュの映画は好きです。退屈と思われるかもしれないが、何か軽妙さがあるところで、ドンは隣の人にだまされたのか、あの無表情さが面白い。音楽もぴったりだなあと思った。(米子市 竹内すみ)

★前半、ジョンストンがナゾを解くって言うからいっしょにナゾ解きをするつもりだったが、ナゾ解きは無意味で、二十年前にきちんと恋愛をしていなかった男のあわれを知る。「いつか読書する日」とは反対の物語。過去はいらない現在が全てなのだ(宇田川靖)

★音楽も日本的でとても良かった。

★面白かったが、同じパターンを繰り返すので途中から疲れてきた。

★人生の折り返し点を過ぎても前ばかり見て生きています。たまには振り返って自分の歩んできた道や知り合った人達のことも想い出してみたくなりました。

★なぞはなぞのまま……? ビル・マーレーの味のある雰囲気が好きです。音楽の雰囲気がロードムービーという気がしました。主人公のラストのことば、それがすべてのような気がします。(米子市 34歳)

★もっとだるい転開を想像していたのですが、なかなか楽しめました。ラストもありかなと思います。(米子市 40代)

★普通の平凡な男性だったが、飛行機であちこちに行き、昔の女性とあったはなしはよかった。(坂本義文 65歳)

★自分の状況(年齢、仕事等)と近いものがあり、多くの感情移入が出来た。(米子市 50代)

★墓にまいるシーン→青年に「息子だろう」とせまるシーンのあたりがよく分かりませんでした。

★手紙の主は誰にも言わず息子を育ててきたけれど、その息子は自分の父を探していた。「大切なのは現在なのだ」というジョンストンの言葉は、現実を受け入れてこれからを生きていけという事なのか。ドンファンにとっては一時の遊びだったかもしれないが、女性の方はそれぞれの思いを引きずっていると思った。(56歳)

★導入部が長いなと思ったけど、ラストでその意味がわかった。コンピューターのような無表情のドンに段々と血が流れ、感情が表れ、人間らしくなっていくのがよくわかった。仲々面白かった。(米子市 58歳 女)

★音楽が良かった。セリフの間で微妙な雰囲気がよくでていて、見ている方も困った気持ちになった。嫌じゃないです。こういう映画。(米子市 33歳)

★推理調で、結局ピンクのナゾの手紙がなんだったのか、わからなかったところがよかった。(米子市 28歳)

★「舞踏会の手帳」の現代の男性版というところですネ。いずれも苦い結末。

★「仏教徒?」というせりふがあった。そんな感じ、無常観漂っていた。(境港市 60歳)

★主人公と一緒に謎解きをする気分でした。最後はタネ明かしをしてほしかったなー。スクリーンが大きくてよかった。(伯耆町 47歳)

★主人公と一緒にまるで自分が旅しているかのようでした。主題歌が良かった(歌詞もヴォーカルも)。結局息子はいたの?っていう最後で、ちょっと終わり方に?てかんじでした。(48歳 女)

★経済的に恵まれていても孤独はさみしいものかなと思った。(米子市 41歳)

★もう少し面白い映画が観たいですね。

★ジム・ジャームッシュ監督作品なので期待していたのですが‥‥ ビル・マーレーの味は出ていたのかもしれませんが、今一感情移入できませんでした。ロード・ムービーってこんな感じなのかな。(M・I)

★結局あの手紙は何んだったのか。それが知りたかった。隣人のいたずら?でも会話は面白かった。

★何となくコメディだと思っていました。予想とハズした内容だったので最後まで妙な気分でした。バックに流れる曲がまたそんな感じ。ドン・ジョンストンの気持ちは分かりますが、余りに単純でヒョウシヌケの気分のまま終わってしまい?です。

★あまり分かりませんでした? (54歳)

★今回の映画はあまり意味が分からなかった。(C.E.)

★ミステリーやサスペンスではないので、答えを出す必要はないかもしれないですけど‥‥。ラストの解釈が見る人によってずいぶん変わりそう。音楽は良かったです。

★ラストシーンをいくら思い出してみても、さっぱりわからない映画だった。只、米国の緑の豊かな風景だけが目に映えた。(米子市)

★やっぱりジム・ジャームッシュって変な監督だ。「なぞ」をなげかけられるばかりで、答は自分で考えてねって言われているようだった。しかし、ドンは若い男の子を見ると、もしかして自分の息子では‥‥と思ってしまうのではないだろうか? これってやっぱり女性の復讐なのか‥‥。(大変意見のわれる映画) 30代 女性)






      
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