★日本海新聞2007年2月掲載 「グッドナイト&グッドラック」紹介文

「赤狩り」と戦う

  「赤狩り」という言葉をご存知だろうか?1950年代の米ソ冷戦下、自由の国アメリカでマッカーシー議員が告発したことを契機に、共産主義者とその同調者を公職や企業から追放し、全米を恐怖のどん底に陥れた。
  「グッドナイト&グッドラック」は、この巨大で不当な権力に、自らの人生を懸けて戦ったニュースキャスター、エド・マローの実話に基づく社会派ドラマだ。監督はジョージ・クルーニー。彼はこの脚本も書き出演している。この作品に懸ける意気込みがうかがえる。
  また彼はジョニー・デップと肩を並べるほどの二枚目スターだが、中東の政治映画「シリアナ」の主演を始め、社会的な作品が多い。それは彼の父がこの映画の主人公と同じニュースキャスターだったことと無関係ではあるまい。この映画の社会的評価も高く、アカデミー賞、作品賞をはじめ主要六部門ノミネート。キネマ旬報外国映画第八位、ベネチア国際映画祭主演男優賞など。
  昨今、凶悪事件が相次いでいる。犯人を知る人は必ずこう言う。「信じられない」「まじめで、いい人だったのに…」と。おそらく、事件を起こした本人でさえ、理解していないのではないか。ここで、ふと思う。「人間ってなに?」って。映画はこの実存的問いの答えを探し求めるためにつくられると言っても過言ではない。
  映画に限らず、演劇、小説、哲学などもその範疇(はんちゅう)に入ると思う。確かに人間は月へも行き、ポケットの携帯で会話ができるまでに進化した。他方、有史以来、不幸な戦争、殺人を止めることはできない。正と負の間で揺れ動いているのが人間だ。ある問題が起こった時映画の主人公のように、人間として正しい判断、そして志を高く持ち、人生を懸けて行動できるか。この映画を通して一番身近な人間、自分に問うていただきたい。

(米子シネマクラブ会員 添谷泰一) 



感 想 集

★アメリカ社会(資本主義社会)における不平等、格差、貧困は弱肉強食の構造でいかしかたなく存在し、共産主義は本来これらを是正するためのシステムであった。これを形骸化した、しているのはアメリカ主体の権力者達であり、彼らに支えられた放送界、マスコミであったか。現NHKの首脳達には映画の最後の言葉をよくかみしめてもらいたかった。(米子市 50代)

★エド・マローの発言が印象的でした。(米子市 48歳 女)

★今の時代に酷似している。空恐ろしさを感じる。従軍慰安婦のテーマでやっていたTV番組をみていたが腹がたった。報道そのものが確実にかたよってきている。

★9・11テロでのアメリカの行動については批判が多いが、その最中にこういった映画が作られたことを、素直に賞賛したい。果たして日本のメディアに、下手すればスポンサーや視聴者への反感をかってまで自由と公正を貫ける覚悟があるが、そしてそれは、国民一人一人にも求められる覚悟でもある。

★偏見が大衆をも巻き込み、国家的規模で支配すると、非常に恐ろしい。理性はすみに押しやられる。私は「非国民」のレッテルをはる日本の歴史に思いを及ぼした。同様に日本も理性を失った歴史をもつ。しかし、アメリカではこのような健全な映画も作られる。日本では、過去の過ちに真摯な反省があったのだろうか。(米子市 66歳)

★米国の良心ともいえる映画。「字」が見えにくかった(米子市 60代)

★渋い!こういう映画を撮るジョージ・クルーニーは大人ですね。久々に「大人の為の映画」という感想を持ちました。

★観る者を選ぶ映画なのか?今の日本のテレビがかかえる問題にも通じる。50年前のお話だが現代と同じものを感じた(宇田川靖)

★痛烈な形で、テレビ(日本の)の現状を批判として終わった。“テレビ”とは、マスコミとは、考える素材となっていた。同時にアメリカの良さの一部が出ていた。歴史の汚点をきちんと、大統領の言葉で提示している。

★非常にしぶかった。しぶさがとても良かった。

★テレビの報道というものがどういう性格をもつものなのか、とても考えさせられる映画でした。映像と言葉とてもクール! ひたれる感覚がその辺にもありました。(米子市 35歳 女)

★1950年代の舞台の映画といえば、ホームコメディとかギャングもの。政治的、社会的内容。TV界に対する苦言など、50年たっても変わらない。モノクロ映像の迫力、独特の美しさに紫煙も美しく、煙草は大嫌いですが、この映画の中では許せます。俳優たちも好演だった。立派な作品で、娯楽性もあり感心しました。

★訴えたい事はわかるが、せりふが早く、長いので字幕を読むのが大変だった。しかも文字が見えない場面が沢山あった。(境港 60歳)

★毎日をしっかりと自分の足で生きたいと思いました。(54歳 女性)

★主観無きジャーナリズムなど無い、とっても影響力のすごく大きいものなので、情報の取り扱いには注意してほしいと思いました。

★議員とマローのやりとりを見て、NHKの問題を考えさせられた。自由の中で最も大切なのは思想、言論の自由だと思う。権力に対して正面きって意見を貫くのは、それこそ胃の痛む思いくらいでは済まず、いつも自殺者まで出る。大衆一人ひとりの考えが大切であると改めて考えさせられた。(高松)

★アメリカの様な自由な国と言われる所でこの様な弾圧があったとは知っていたが、それに立ち向かうメディアがあったとは知らなかった。(米子市 42歳)

★今やテレビアは娯楽だけのメカと化しているが、マスコミ本来の力というのは偉大なものがあると思う。こんな毅然とした人々がいたという事実はすばらしいと思う。勇気ある人々! しかし、モノクロは字幕が読みづらい。(米子 59歳 女)

★期待していた映画です。今、憲法改正の法案を通そうとしている日本の首相、マスメディアが真実を報道しているかというとそうではない。何か、今の時代とだぶってみていました。あの時代にならないように願ってやまない。(映画大好き50代)

★観ごたえのある内容だった。特に最後に会社からも見放された時のプロデューサーのテレビの大切な役割を語った内容は現在の日本テレビ界にも充分あてはまる力強い印象を受けた。(伊沢 純)

★意外にも硬派すぎるなーと思いました。マローという人が何をしたかがわかり、彼の姿勢には共感できますが、、 もっと人間的な部分も描かれていないと納得しにくい部分も…。R・D・Jrの人間臭さが逆に印象的でした。G・クルーニーは最近社会派として評価が高いと聞きますが、ちょっと単純な気もします。(伯耆町 47歳)

★非常にクールで知的な作品。1つ1つの言葉には重みがあった。モノクロ映像、煙草の煙、ジャズと3つの要素が上手く調和されていた。特に煙草が小道具として凄く印象的だった。ただ、字幕が見えづらかったので残念でした。

★真実を伝えるための報道機関に圧力がかかり、個人の思想・信条の自由が脅かされる恐ろしさが今一伝わらなかった。赤狩りをしなければならないほどの共産主義者の脅威がわからなかった。(米子市)

★暗すぎる(米子市 60歳)

★ストーリーが良く解らないところがあった。個人的に嫌なことを思い起こさせる映画でもあった。(米子市 男性 58歳)

★しゃべることのない話し。(坂本義文)

★あまりわからなかったけど最後のコメントが印象的でした。今の日本のメディアにも、もう一度考えてもらえたらと…






      
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