★日本海新聞2007年6月掲載 「歓びを歌にのせて」紹介文

人は皆“希望”という光なしには生きられない

  物語は北の国、スウェーデン。ロシア側のフィンランドと海側のノルウェーにはさまれた北極圏に近い国である。
  世界を舞台に活躍する著名なオーケストラ指揮者ダニエルは、過酷な公演スケジュールとプレッシャーの中、病に倒れ一線を退く。
ボロボロになった心臓と深い孤独を抱え故郷に帰ってきた彼が住居としたのは、昔自分が通っていた小学校の校舎だった。
この古ぼけた校舎がなぜ第二の人生のスタートなのか、映画は幼いころの思い出をひもときながら展開する。
  私たちは、今とても複雑な社会の中で生きている。豊かにはなったけれど、おのおのの悩みは昔も今も変わらない。
一生の間に子ども時代はほんの数年にしかすぎないが、かくも幼年期の出来事が人に与える影響は大きいのか。
人はその成育を抜きには語れない、と言われることもダニエルを通して伝わってくる。
私はダニエルが一生かかって伝えたかったことがラストシーンで分かった時、感動の涙があふれ、音楽の源泉がここにあったと思った。

  私の人生は、今こそ私のもの  この世に生きるのはつかの間だけど
  希望にすがってここまで歩んできた 私に欠けていたもの、そして得たもの
  それが私の選んだ生きる道  言葉を超えたものを信じつづけて 
  天国は見つからなかったけど  ほんの少しだけそれを垣間見た
  生きている歓びを心から感じたい(以下略)

  これは登場人物の一人、ガブリエルが夫からの暴力に敢然と立ち向かい、自立した女性として生きる決心をする時の歌である。
この歌のように、人は皆“希望”という光なしには生きていけない。映画が伝えたかったことは最後のシーンに凝縮されていると強く感じた。
ぜひたくさんの人に見てもらいたい。

(米子シネマクラブ会員 畠山和子) 



感 想 集

★素敵な映画をありがとうございます。初めてでしたが、来てよかった!と思います。(谷繁)

★とても美しい映画でした。このような映画に出会えると、また、明日も生きて行けそうな気がします(54歳)

★感動!!本音でぶつかり合い少しずつ何かが変わっていくのが、よく映し出されていてよかった。(米子市)

★とても良かったなと思いました。(米子市 79歳)

★久しぶりに気持ちのよい映画をみた。歌を愛する人々の心が一つになって、みている人を感動させてくれた(西伯郡 58歳)

★音楽って本当にいいですね。映画って本当にいいですね(自分が本当に愛せるようになったおばちゃん)

★人生のいろんなことがある。ガブリエルが夫の暴力に屈せずに歌い上げる歌声が素晴しかった。人生の歓びの歌を感じた。(米子市 50代)

★年に関係なく人それぞれに人生があり、生きるという意味を感じた。勇気づけられた。(櫛田真一)

★人生についてしみじみと考えさせられた。

★“自分の人生を自分らしくいきる”ことは確かに難しい。人を愛さなければ人から愛されない。解ってはいるけれど‥‥。(M.I.)

★歌を通して一つになれるというのが、とてもすばらしいと思いました。皆の声の力から幸せを感じました。それぞれの人生、それぞれの声、どれも違うけれど、どれが欠けても成り立たない。ほんとに感動しました。(米子市 35歳)

★スウェーデン映画は米子の商業映画館では全く見られません。家庭内暴力、イジメ、宗教等、問題が取り入れてあった。私は、私の生き方をすると歌う姿が印象的だった。(米子市 60歳)

★大変感動しました。この作品を選んでいただいて感謝です。

★音楽映画でつまらなかった映画はなかったが、やはり期待していたとおり感動しました。色々と複雑な問題が山積みしているが、最後は単純な希望とか、素直とか、誠実とかに終着するということだ。原点を見詰め直すことのできる映画だった。(米子市 67歳 男)

★クラブに入って見たのでは一番良かった。これからもよろしくお願いします(米子市 64歳)

★説明的でなく、象徴的な描き方―ヨーロッパの映画だからでしょうか。ぎこちなくそれぞれの人が心を開いていく様子がとても印象的でした。(伯耆町 48歳)

★音楽は誰にでも平等。人間誰しも弱さを抱えている中で音楽が勇気を出す切片になっていた。アクシデント(指揮者死亡)をも乗り越えて人間としてその弱さを克服し、誰かに依存するのではなくてひとり立ちして力強く生きていく象徴(未来)だったのではないか。ラストは賛否分かれるかもしれないが、私はむしろこちらの方が良かったと思う。下手な歌よりも、根源的なハーモニーの方が分かり易い。

★久々に何も考えずスクリーンに没頭できた。とてもよかったです。これぞ映画!という映画らしい映画でした。(米子市 59歳 女)

★音楽の持つ不思議な力に感動しました。

★とにかく歌・音楽が素晴しかった。また、さまざまな悩みを抱えているメンバーが歌の指導とともに心を開いていくストーリーは音楽の素晴しさ、人生の素晴しさを改めて感じさせられました。CGは全く使われてなく、特に派手な映画ではありませんが、心に残るいい作品だと思いました。(田中英治)

★初めてシネマクラブの映画を見せていただきました。私も教会に行ってますので、賛美かとか、教会とかは、でも、いつも「人は愛なしでは生きられない」ということや世界中どこでも人は同じ悩みや苦しみがあり、その中であの歌が心に響きました。美しい環境にも感動しました。(山根勝江)

★私は自分の人生を生きた!と言いたい。同感です。(米子市 49歳 女)

★今日が始めてですが、良かったです。一言でいえば「シブイ」。今後とも参加していきたいと思います。特に「音楽」が一つのポイントでよかったです。(米子市 52歳)

★音が作られていく楽しさと喜びを丁寧に描かれていたが、何か少しおとぎ話めいていたのは、いたしかたないかと‥‥。すごく上手い役者たちが実に見事にそれぞれをやっていたのだが、特に主人公の目のなんとも素敵だったし、レナも好きなタイプだったが、しかし、何かね、ちょっと‥‥。

★雪のシーンが素晴らしかった。脚本には不自然な所がたくさんあって何か変。「これはないよ」という感じで終始しました。たとえば主人公は今にも死ぬような重病なのにまきわりなんかしてました。でも、暖かい気持ちになりました。

★よい映画であった。結婚する、しないにかかわらず“みんな”の“カンキ”で歌うことがよかった。(坂本義文)

★歌声が美しく、幸せな気持ちの時間でした。ストーリーとしては少々まとまりがなかったように感じました。(米子市 60歳)

★良い意味で裏切られた作品。 正直、途中まではかなり危うい作品だと思っていた。
  頑なな信仰や、夫の暴力、陰湿ないじめに、ただ耐え従うだけの村の人々。
閉鎖的で保守的な人間関係の中、村人たちが音楽を学び感じることで、素直に本音が口に出来るようになり、その結果、抑圧や依存、トラウマから脱却する。
  しかし、それはあくまで指導者ダレウスのカリスマありきの話であり、果たして彼がいなかったらそういう選択を取りえたのか。
ハッキリ言ってしまえば、依存の対象がそれまでの信仰や暴力から、「ダレウス個人の崇拝」へとスライドしただけではないのか。
  実際、教会で大騒ぎする姿など、敬虔(教条的)なキリスト教徒にとっては「サバト」にしか見えないし(笑)。
村人がダレウスを教祖的に慕う姿(ガレージで彼の)、教会を見捨てる村人、ダレウスの音楽指導における多分に感覚的な物言いなども、一歩間違えば新興宗教やラエリアン(注)みたく見えなくもない。敢えてそう見えるような演出したのかもしれないが。

  しかし、あのラストの大アクシデントでひっくり返る。コンクールでの指導者の不在。
だれかに頼ることなしに、自らどういう行動を取るのか迫られる村人たち(聖歌隊)。
そして自ら声を出し、それは周囲をも巻き込み、ホール中に響き渡るハーモニー。
  つまり、ここで終に指導者への依存からも脱却したのではないか。
  この作品が、誰かに依存した(ある意味、楽な)人生や状況から脱却し、自らの選択で行動を取ることの意味とその素晴らしさ(そして、その辛さ)を訴えるものとして完結したのではないか。
ただコンクールで見事な歌声を披露してハッピーエンドで終わるような、そこらにありそうな音楽映画とは一線を画す作品になったのではないか。と、個人的には、そう思っている。

  蛇足だが、閉塞された状況を最初に打破したのが、障害を持つ若者だったというのも印象深い。
音楽は誰もに平等であり、もし平等であれば、誰がその集団に貢献するか分からない。
実際、彼が最初に音を発しなければ、そのまま棄権していた可能性も高かっただろうと思われる。

(注)ラエリアン・ムーヴメント。フリーセックス団体であるが、UFOカルト。人間のクローンに成功したというニュースが記憶に新しいが、それが本当かどうかは胡散臭い。もちろん、日本にも支部が存在する。






      
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